第二次世界大戦中に軍を脱走し、41年間、豚小屋に隠れていた人物がいた。そんな実話に着想を得た今作は、自宅の隣の家畜小屋に身を潜めて暮らす男・パーヴェルと、その妻・プラスコーヴィアの夫婦を描いた二人芝居。かつてドラマで結婚目前のカップルを演じた北村有起哉さんと田畑智子さんという舞台巧者のふたりが久々に共演する。
田畑:共演は久しぶりだけど、飲みの席で会うことは多かったから…。
北村:あと、出来が不安な舞台を、頼んで観に来てもらったりね。二人芝居なんて、相手がそういう田畑さんじゃなかったら、なかなか引き受けられなかったと思う。
田畑:私も、有起哉さんとだったら、安心してやれるかなと思って。
北村:作品自体が想像を絶するシーンの連続だから、乗り越えられるタフさと創造性を持った相手じゃないと太刀打ちできないでしょ。そうなると、やっぱり海千山千の…。
田畑:私に乗り越えられるかなぁ。
北村:口では心配だとか言いながら、始まってみたら、テスト勉強ばっちりしているタイプでしょ(笑)。
田畑:エヘヘ(笑)。でも物語自体は壮絶だけど、旦那がウジウジ言ってる隣で、奥さんは案外カラッとしていたりして、二人のやり取りの対比が面白い作品ですよね。
北村:うん。パーヴェルは一生懸命妻に訴えかけたりしてるんだけど、たぶんほとんど聞いてない(笑)。
田畑:絶対、聞き流してるね(笑)。
北村:豚小屋で暮らし始めて10年経っているところから始まってるから、心のケアや看病をしている時期はとっくに過ぎてるんだろうね。
田畑:女性は切り替えが早いから。
北村:海外戯曲って、ついかしこまって観ちゃいそうだけど、じつはこの夫婦、しょーもないことを大真面目にグズグズやってるんだよね。高尚で難しいことをやってるわけじゃないから、笑っていい作品なんだって思って観に来てくれたらいいな。
田畑:ただ、喜怒哀楽が激しい情緒不安定なところもあるから、観ててヒリヒリする場面もあって…。
北村:うん。激情というか劇的というか、きっと大きなうねりのある作品になるのかなって思っています。