人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。8月のお客様は、トータルビューティクリエイターの川邉サチコさん。第1回目は美容の道に入ることになった経緯を聞きました。
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憧れたのは専業主婦。しかし運命の歯車は…?!

私の実家は日本橋にあったハンカチ問屋で、父も母も働いていたので、あまり“家庭”の記憶がありません。自分も職業を持つだろうと思ってはいましたが、ないものねだりなのか、一度でいいから“家庭の主婦”になってみたいとも思っていました。とはいえ花嫁修業をするような学校への進学はしたくない。矛盾した思いを持ちながら女子美術大学に進学し、就職かぁ…と思っていたところ、ボーイフレンドから「どうせ僕と結婚するなら就職する意味ある?」的なことを言われ、しかも「専業主婦になっていいよ」と言われたんです。美容事業を営む夫の実家は義父がユニークな人で、これならきっと楽しい家庭が持てるに違いない、と思い、結婚することを決めました。しかも「家の商売は手伝わなくていい」とお墨付きまでもらって。しかし、なんと結婚後しばらくして義父が急死! あれよあれよと私も家業に駆り出され、え、仕事しないはずだったのに? 状態に…!!

流されて始めた美容の仕事。でもだからこそ続いているのかも。

義父が亡くなる前から、義母に連れられてパリに行き、美容の現場をいろいろ見学させてもらったことなどもあり、「美容ってちょっとおもしろいのかも…」と思い始めたところではありましたが、本音は、こんなはずじゃなかった…(苦笑)。仕事を始めた’60年代、日本で開かれたディオールのショーにヘアメイクの仕事で入ったんですが、ベテランモデルに私が駆け出しだと見抜かれて、いじめられたんです。でも「何クソッ!」と思い頑張った。そういう経験が修業になり、いつの間にか仕事が身につきました。

こんなことを言っては怒られるかもしれませんが、私はもともと美容に興味があったわけではないですし、今でも特別に大好きではないんです。でもだからこそ、常に自分の仕事に対して批判的な目を持っていられるし、飽きずにここまでやってこれたのかな、と思います。自分の仕事に惚れ込みすぎると、物事が見えなくなってしまうものです。

かわべ・さちこ トータルビューティクリエイター。1938年生まれ、東京都出身。’60年代よりヨーロッパのオートクチュール、国内外トップデザイナーのヘアメイクを担当。現在は自身の名を冠したサロンを運営しながら、様々な雑誌に登場。

※『anan』2022年8月3日号より。写真・中島慶子

(by anan編集部)

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