戸塚純貴「上手なお芝居ができる人はいっぱいいるんで、替えのきかない役者になりたい」

エンタメ
2022.07.30
現代の恋愛のリアルを描いたドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』(以下、恋マジ)で、SNSを中心に熱い支持を集めたのが戸塚純貴さん演じる“安心安全・大津”。福田雄一監督作品の常連俳優であり、さまざまなドラマや映画の中で、気づけば作品にいいスパイスを加えてくれている存在だ。
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――まずは目前に控える舞台『VAMP SHOW』について伺わせてください。本作は、三谷幸喜さんが’92年に書き下ろし、’01年に再演されたホラーコメディです。

以前から、どんな形であれ三谷さんの作品に携わってみたかったんです。楽しみではあるけれど、僕が演じる丹下は、初演で古田新太さん、再演で橋本じゅんさんが演じられた役で、それを僕ができるのかって怖さもありました。先日、じゅんさんと共演する機会があり、この役をやらせていただきますって話をしたら、「純貴がやるの、なんかわかる気するわ」って言ってくださったんですよね。

――それは心強い。

…余計緊張しました(笑)。もちろん安心もしましたけど、先輩方が築いたものを受け継ぐわけです。同じことをなぞることがないよう、自分ができる最大の表現で応えなければという思いになりましたね。

――橋本さんが「なんかわかる」とおっしゃったのも、戸塚さんってコメディリリーフ的な役割を担うことが多いからかもしれませんね。お笑い的立ち位置は、ご自身ではどう受け止めていますか?

お母さんが“変わった人”だったからか、昔からコメディが好きだったんですよね。とくにジム・キャリーが好きで、小さい頃からアンパンマンよりジム・キャリー。そういう意味では、昔から喜劇というものに関心があったんだと思います。現場でも、いただいた台本をあえて面白くやってみようと、思ってるところはありますね。

――求められた以上のものを?

そうですね。「そういうの、求めてないから」とか「そういう感じで来る?」って言われたいというか。監督や現場にいる人を、まず笑わせたいっていうのがあるんです。一番身近にいる人たちに笑ってもらえなきゃ、お茶の間の人に笑ってもらえないと思いますし。

――気になったのは、お母様がちょっと変わった方…なんですか?

スナックのママをやっていたんです。普段からそのノリだから、なんかハッピーさがあるし、めちゃくちゃよくしゃべる。お酒が一滴も飲めないんですけど、しゃべりすぎて声がガラガラっていう(笑)。今はもう、息子たちが自立したから引退しているんですが、「今やりたいことって何?」って聞いたら、東京でおでんの屋台を引きながら、占い師をやりたいって言ってたんですよ。

――え?? おでん…ですか?

なんか誰にも止められないエネルギーがあるんですよね。この仕事も、背中を押してくれたのが母で、それがなければ多分この道に進んでなかったと思います。

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――お母様がジュノン・スーパーボーイ・コンテストに応募されたのが、デビューのきっかけだとか。

そうなんです。多分、松田聖子さん世代というかアイドルブーム全盛期の人なんで、自分がなりたかった夢を息子に、みたいなことだったんじゃないかと思います。赤ちゃんの頃には赤ちゃんモデル、小学生のときにはジャニーズ事務所に履歴書を送ったりしてたけど、僕がやる気がなかったんです。諦めたかなと思った矢先にジュノンボーイに応募してて、そんなにやらせたいのか、と。ちょっと折れて行くだけ行ってみますか…みたいな感じで受けたんです。

――全然やる気がなかったのが、最終選考に残ったときに、自分を応援してくれる人がいることを知って、やってみようと思ったそうですが、俳優を続けてきてよかったと思うのはどんなときですか?

なんだろう…多分、私生活では経験できないことができるのが楽しいんじゃないかな。役者を続けてきてよかったというより、続けられてよかったなっていう感じなんです。僕、飽き性で、好きじゃないことって全然続かなかったんです。気づけば仕事を始めて10年以上ですが、この仕事が好きだなぁと思って続けているというより、気づけば続いている感じで。

――辞めたいと思ったことは?

それもあまりなく、「続けたい」もあんまりなくて。辞めるタイミングがわかんなかったから続いている、みたいな感じです。

――辞めるタイミングがなかった、というのは、ここまでのお仕事がきちんと評価されて順調に次のお仕事に繋がってきている、ということでもあると思います。

評価してくださる方が増えれば増えるほど、その方々に恩返しじゃないですけれど、新しいものをどんどん見せていかなきゃいけないっていう気持ちになるので、もしかしたらそこも続ける原動力になっているのかもしれません。

――まさに、福田雄一監督作品の戸塚さんを拝見していると、そんな印象を受けます。

福田組は怖いっすね。わかりやすく、今の芝居がOKかOKじゃないかがわかるっていう怖さがあるんです。最初に僕を引き上げてくれたのが福田さんなんですよね。まだ僕が全然世に出てなくて、ただただ役を面白おかしくやるっていう見当違いなことをしていたのを唯一笑ってくださって。自分でも好きなことをやれる場所があるんだって、教えてもらった場所。上手なお芝居ができる人はいっぱいいるんで、それよりも替えのきかない役者になりたいと思ったのもそのとき。だから、声をかけていただけるのは毎回嬉しいんですけど…他の現場に行くときの仕事モードとは違って、特殊です。今回はどう福田さんを笑わせようかってことだけを考えて現場に向かう。戦いに近い感覚です。

とづか・じゅんき 1992年7月22日生まれ、岩手県出身。2011年に俳優デビューし、翌年の『仮面ライダーウィザード』に出演。近作に、ドラマ『親バカ青春白書』『ユーチューバーに娘はやらん!』『恋なんて、本気でやってどうするの?』など。9月2日公開のMIRRORLIAR FILMS Season4『女優iの憂鬱/COMPLY+-ANCE』に出演。

ジャケット¥77,000(LUFON TEL:03・6662・5524) パンツ¥30,000(SEVESKIG TEL:03・6447・0443) その他はスタイリスト私物

戸塚さん出演の舞台『パルコ・プロデュース2022 VAMP SHOW ヴァンプショウ』は8月8日(月)~28日(日)、渋谷・PARCO劇場で上演。その後、愛知、大阪、福岡公演もあり。全国を旅して暮らす5人組。じつは彼らはひょんなことから吸血鬼になってしまい、人の代わりに献血車を襲い生き延びてきたが…。2001年の再演にキャストで参加していた河原雅彦さんが演出を務める。

※『anan』2022年8月3日号より。写真・瀬津貴裕(biswa.) スタイリスト・鬼塚美代子(アンジュ) ヘア&メイク・中島康平 インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)

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