観たら、激オシの連鎖。「1億総“行城”化」進行中!
「僕は6回観ていますけど、観れば観るほど面白いんですよね。6回目が一番泣きましたもん!」
政池さんは初めて試写を観て、すでにヒットを確信していたそう。
「仲間と切磋琢磨してアニメを作る過程と、王子と瞳が作る2本のアニメが同時に走っていくので、難しい構成であることは承知していました。クライマックスで3つ同時に感動が来たら、とんでもないことが起こると思う一方、そんなことが本当にできるのかなっていう不安も正直あったのですが、試写を観て、今まで誰も到達したことのない、すごい映画になったと思いましたね」
公開直後こそ動員が伸び悩んだものの、観た人には確実に届いていた。
「そういう人たちがSNSで積極的に発信してくれたんですよね。特に印象的だったのが、映画監督・山崎貴さんの異常なほどの熱量! 同業者の作品を褒めるのは、勇気のいることだと思うのですが、絶賛どころか宣伝までしてくれて(笑)。観てくれたみなさんが、宣伝マンになってくれる作品なんですよね」
この稀有な現象を政池さんは、物語に登場する敏腕プロデューサーの行城(ゆきしろ)にちなみ、「1億総行城化」と命名。SNS上のさまざまな声を拾って拡散するだけでなく、上映中の映画館の予約状況を座席表の画像とともにアップ。「四捨五入したら、もう満席!」「日曜夜なのに、ありがたや!」など、自称「観客数報告マシーン」と化し、実況している。
「僕ももともとは瞳と一緒で、面白いものを作れば視聴者に届くと思っていたんです。だけど今はむしろ行城の『100の方法で届けて1届けばいい』というセリフに無茶苦茶共感していて。何が届くかわからないので、監督や俳優のアプローチとは違う、僕にしかできない宣伝方法を探っているんです。脚本の裏話をしたり、キャッチーな言葉を作るのも得意なので、広がるきっかけができたらいいなと思っています」
最後に、まだ観ていない人のために、政池さんの思う本作の魅力を改めて語ってもらった。
「『観るユンケル』っていう口コミもありましたけど、観てこんなに元気が出る映画はそうそうないと思います。あと『なぜか泣ける』っていう感想も多いんです。泣ける映画の定番といえる、人の死や今生の別れとかは描かれていないのに、なんでこんなにグッと来るんだろうと僕も思ったんですけど、体育祭や文化祭みたいな映画なんですよね。ひとつのことを作り上げていく人たちを見て感動するだけでなく、自分もそのメンバーのような気持ちになれる。つまんなかったら、俺がお金出すから! って言いたいくらい(笑)。実際、僕の周りの人にはそう言ってるし、配信やDVDを待たず、まずは劇場で絶対に観てほしいです!」
渋谷TOEIには、アニメーター試写会に参加した方やイベントに登壇した方々の熱い想いが書き込まれたポスターが。
6月23日に行われた吉野耕平監督、根岸役・前野朋哉さん、河村役・矢柴俊博さんのトークイベントには、観客として来ていた白井役・新谷真弓さんや、原作の辻村深月さんも急遽参加。
6月30日には、吉野監督とアニメ映画『映画大好きポンポさん』の平尾隆之監督、新谷真弓さんが登壇するイベントが。
そして制作進行役の久遠明日美さんも現場に駆け付けた!
誰かの熱意が誰かを動かしていく。想いがたぎるツイート。
監督、脚本家、役者など参加した人々はもちろん、観賞した人たちも次々にツイートをアップ。パンサー向井さんがラジオで絶賛し、辻村さんが番組ゲストに、ということも! ものづくりに関わる人や、物語に救われた経験がある人たちが、言葉を尽くして熱を伝播していき#残れハケンアニメや#届けハケンアニメなどのハッシュタグも生まれた。その結果、新たに公開を決めた映画館や、上映回数を増やした館もあり、次々に作品の魅力が観客に刺さっていっている。
『ハケンアニメ!』 新人アニメ監督・斎藤瞳を吉岡里帆、彼女を振り回すプロデューサー・行城理を柄本佑、天才監督・王子千晴を中村倫也、王子に振り回されるプロデューサー・有科香屋子を尾野真千子が演じる。熱いお仕事物語。監督/吉野耕平 脚本/政池洋祐 現在公開中。©2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会
まさいけ・ようすけ 就職後、脱サラして脚本家・構成作家に。2012年、TBS連ドラシナリオ大賞入選。’20年、オリジナル作品『スナイパー時村正義の働き方改革』が日本民間放送連盟賞テレビドラマ番組最優秀賞、文化庁芸術祭テレビ・ドラマ部門優秀賞を受賞。
※『anan』2022年7月27日号より。インタビュー、文・兵藤育子
(by anan編集部)