「マンガを描いているときに、趣味的に映画を流していたのですが、あまり面白いと仕事が進まなくなるので、多少見逃しても惜しくないような映画ばかりかけるようになって。邦画は掘れば掘るだけいろんなものが出てくるので、忘れられているような作品や、やばいシーンを紹介するマンガにしようと思ったんです」
女子高生の“邦キチ”こと邦吉映子が、たった2人しかいない「映画について語る若人の部」で、洋画好きの部長・洋一を相手に好きな邦画の魅力を紹介する。ストーリー自体はいたってシンプルなのだが、邦キチの作品のチョイスに加えて、プレゼンの視点がかなり独創的。
「プレゼンは最初から意識していたわけではなく、説明好きな自分の作風だったという感じです。周りの人に普段話していることを、そのままマンガにした回もありますね」
邦キチの作品選びの傾向として目立つのが、たとえば『ルパン三世』のような人気コミックやアニメの実写版。原作ファンが多いだけに賛否両論が起こりやすく、下手すると大惨事になりかねない、バクチ的なジャンルともいえる。しかしながら邦キチは、世間の評価などまったく気にせず、いわゆるツッコミどころにこそ面白さを見出していく。
「いかにもな失敗作でも、邦画だと予算やら条件の悪さやらいろんな事情を想像できて、映画とマンガの違いはあるものの僕自身も作り手として愛情を持たざるを得ないんです」
暴走しまくる邦キチのプレゼンはマニアックになりすぎるものの、見ようによってはとても清々しい。“大きな声”に振り回されがちな世の中で、好きなものは好き、いいものはいい、とためらいなく発言する姿には、眩しささえ感じてしまう。
「自分はそこまで詳しくないから、なんて気後れはしなくていいし、難しいことを考えず、もっとみんな好き勝手に発言していいのに、という思いはあります。映画の感想なんかは特に、厳しめに語るのが基本になってますけど、邦キチみたいな観方をしたら面白いと思いますよ」
『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』Season2 絶妙な作品チョイスはそのままに、プレゼンのパターンや視点がさらに多彩なシーズン2。邦キチの好みも浮き彫りに!? 仲間も増え、カオス感が増してます。ホーム社 750円©服部昇大/ホーム社
はっとり・しょうた マンガ家。著書に『魔法の料理 かおすキッチン』『ダークアクト』『今日のテラフォーマーズはお休みです。』など。「日ペンの美子ちゃん」の6代目作画担当。
※『anan』2019年7月10日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子
(by anan編集部)
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