映画を観て、光を感じていただけたら嬉しいです。
いま映画界で引く手あまたの福士蒼汰さん。本作では、ブラック企業で働く隆を癒す、謎めいた青年・ヤマモトを好演。大阪弁での演技にも初挑戦し、新境地を開拓している。
「成島監督に、やすしきよしさんのDVDを薦められました。関西弁や笑いのテンポだけでなく、横山やすしさんの孤独感やはかなさを感じ取ってほしいと言われたんです。役作りにはいろんな方法があると思いますが、今回は撮影に入る前に5か月の準備期間があったので、監督からお薦めしていただいた作品を観ることから、始めました」
バヌアツ共和国で撮影したシーンでは、現地の公用語であるビスラマ語を流ちょうな発音で披露。卓越した語学センスの一端が窺える。
「ビスラマ語は、英語とフランス語が交じり合って生まれた言語なんです。例えば、NAMBAWANはナンバワンと発音するんですが、素晴らしいという意味で。明らかに、英語のナンバーワンから派生しているんです(笑)。発音や綴りが英語と微妙に違うところが面白かったです」
運命的な出会いをきっかけに、ヤマモトが希望を与えるのは、工藤阿須加さん演じる隆。本作はふたりのやり取りが中心となっているが、撮影が終わった後も一緒に過ごして親睦を深める機会があったそう。
「工藤さんは、この映画の役作りのためにひとり暮らしを始めたんです。それで、たこ焼きパーティを計画して、スタッフの方たちと一緒に工藤さんの家へ遊びに行ったんです。僕は料理を全くしないので、工藤さんにたこ焼きを焼いていただきました。かなりおいしかったです(笑)」
ヤマモトは、過酷な労働で心をすり減らす隆の唯一の癒し。爽やかな笑顔で日々、女子の心を癒してくれる福士さんはまさにハマり役。そんな福士さんが癒される瞬間を聞くと、意外な答えが返ってきた。
「お芝居をしている瞬間ですね。この映画で成島監督とご一緒して、これまで以上にお芝居が楽しくなりました。今までは、リハーサルでうまくいったときほど、本番でできなかったらどうしようと不安になることがあったんです。でも成島監督の現場では、“理想の演技ができているんだからもう大丈夫”と、自信を持って臨む大切さを学びました。今は、いろんな役に挑戦することが面白くてたまらないんです」
役者としてさらに進化した福士さんが本作を通じて伝えたいことは?
「“隆、仕事やめるか変えたらどうや”というセリフが、僕は一番好きで。この映画の核心を突いていると思うんです。目の前が闇に覆われたようになることって、きっと誰もが経験することじゃないですか。そういうときにこの映画を観て、一筋の光を感じていただけたら嬉しいです。ヤマモトと隆はお互いにとって光だったわけですが、家族だったり、目標だったり、それぞれの人に、きっとそれぞれの光があると思います」