みんなで輪になって、レクリエーションのお手伝いをする山崎さん。漢字はお手のもので、「赤い色をした栄養価の高い果物!」とヒントも的確。利用者さんもどんどん本気に。

社会問題に関心が高い山崎怜奈さんが、介護の世界に初めて触れるために訪れたのは、東京の下町にある“深川えんみち”。ここは、高齢者から子どもまで多世代がひとつ屋根の下でゆるやかな繋がりを感じながら過ごせる全国的に珍しい施設。介護のしごとを体験してみて、山崎さんが感じた思いとは?

Index

    自分らしさが強みになる! ユニークで多様な介護の現場で働く

    series

    身近にありながら、具体的なしごとのイメージが湧きづらい介護の世界。でも実は、クリエイティビティを発揮しながら働ける場所なのです。個性溢れる施設で、モチベーションを持って働く人たちを通じて“介護のしごと”の魅力に迫ります。[本プロジェクトは厚生労働省補助事業 令和7年度介護のしごと魅力発信等事業(情報発信事業)として実施しています。(実施主体・マガジンハウス)]

    Profile

    山崎怜奈さん

    やまざき・れな 1997年5月21日生まれ、東京都出身。タレント。2013年から乃木坂46の2期生として活動し、'22年に卒業。現在はTOKYO FMの『山崎怜奈の誰かに話したかったこと。』のパーソナリティをはじめ、幅広く活躍中。

    デイサービス、学童などが同居。地域を繋ぐ新しい施設のカタチ

    利用者さんと学童の子どもたちと一緒にゲームを満喫中。

    体操は利用者さんの運動不足の解消や身体機能の維持のために必要不可欠。

    「え! 父の故郷と一緒です」と、共通の話題で打ち解けるふたり。

    昼食の準備をする利用者さんを見守る山崎さん。

    すっかり仲良くなり、ピースサインで記念写真。

    100名以上の本棚オーナーが選書した本が置かれるエンミチ文庫。貸出カード(¥500)を購入すれば、本の貸し出しは無料。

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    下町風情溢れる門前仲町駅からすぐ。観光客や地元住民が行き交う富岡八幡宮と深川不動堂を結ぶ通り沿いに「深川えんみち」はある。下町に溶け込むように設計されたスタイリッシュな建物に、風に揺れる白い暖簾、大きな窓から見えるキッチンスペースや本棚…、テラスにはピザ窯職人と作った本格的なかまども! カフェと間違って入ってくる観光客がいるほど施設らしさを払拭するオープンな造りだ。

    そこにガラス張りの引き戸を勢いよく開けて「ただいま!」と入っていく子どもたちに、「おかえり~」と声をかける高齢者の姿が。初めて訪れた山崎怜奈さんも「ここは一体?」と興味津々。

    「深川えんみち」は“世代の垣根を越えた、多世代が共生できる地域に開かれた福祉施設”をコンセプトに、2024年5月にオープンした複合型福祉施設。1階に高齢者デイサービス、2階に未就園児と保護者らが交流できる子育てひろば、約135名の地域の小学生が通う学童保育クラブが同居。1つの建物にデイサービスと学童保育が入る東京で唯一の施設で、全国的にも稀だそう。

    1階の「深川愛の園デイサービス」は、東京・深川で20年以上の介護実績がある社会福祉法人聖救主福祉会が運営する施設で、地域住民からの信頼も厚い。食事や入浴などの日常生活上の支援や、自宅で自立した日常生活を送れるよう機能訓練を受けるために地域在住の約80名の利用者さんが通所している。この施設で介護のしごとを山崎さんが初体験。

    「私は江東区の隣・江戸川区で生まれ育ったので、門前仲町は馴染みのあるエリア。でも駅近にこんな素敵な施設があるとは知りませんでした。介護施設を訪れるのは初めてで、もっと閉ざされた空間を想像していましたが、開放的な雰囲気でとても居心地が良いですね。子どもの声も聞こえてくるので賑やかだし、利用者さんたちも自分の自宅のようにゆったり過ごされていたのが印象的でした」

    世代を超えた交流が楽しめ、まるで一緒に生活しているよう

    学童に通う子どもたちは1階の中央にある通路を通り、デイサービスに通う利用者さんに挨拶をしてから、外階段を利用して2階に上がっていくのが日常の光景。子どもと高齢者がゆるく繋がり、時には一緒にゲームをしたり、宿題を教えてもらったり。なかには年の離れた友人関係を築き、文通をしている人もいるとか。多世代の人々が交流することで、心が豊かになり、生活に彩りが生まれている。

    ここで山崎さんも利用者さんと触れ合ったり、現場のアシスタントマネージャーで介護福祉士の吉田知子さんと一緒に、機能訓練を兼ねて行われるレクリエーションのお手伝いにもチャレンジ。

    「私のような新参者にも、利用者さんたちが笑顔で接してくれて嬉しかったです。みなさんとお話ししていて、とある利用者さんと私の父が同郷だということが分かった時はすごく盛り上がって、親近感が湧きました。ここではスタッフと利用者さんが一緒にごはんの準備をしたり、無邪気に遊ぶ子どもと交流したり、一緒に生活しているような距離感の近さを感じましたね。

    レクリエーションでは、難読漢字クイズの出題や、体操で体を動かして一緒に楽しみました。みなさん真剣に取り組んでいて、私もついつい熱が入りました! 世代を超えて人と人が気軽に触れ合える場所があるってとても素敵なこと。ここにはどんな方でも本が借りられる『エンミチ文庫』という私設図書館も併設されているので、私も通ってしまいそう。介護を身近に感じることもできるし、こういう複合型の施設がもっとたくさん増えてほしいですね」

    山崎怜奈さんが介護スタッフに聞く、介護の現場のやりがいとは?

    おしごと体験を終えて、山崎さんがさらに介護の世界を深掘り。山崎さんにしごとをレクチャーした介護の先輩・吉田知子さんにしごとを通して興味を持ったことや疑問を投げかける!

    自分も人も幸せにできる介護のしごと。もっとこの魅力を伝えていきたい。

    お話を伺った方

    Profile

    吉田知子

    よしだ・ともこ 介護福祉士、認知症ケア専門士。介護の専門学校を経て、聖救主福祉会に入職。出産や育児を経験しながら、20年以上現場で活躍。現在は「深川愛の園デイサービス」のアシスタントマネージャーを務める。

    山崎 今日は貴重な体験をさせていただきありがとうございました。私自身、介護を必要としている人や介護職に就いている人が身近におらず、この世界に触れることがなかったので、とても新鮮で有意義な時間を過ごせました。

    吉田 そうですよね。介護という言葉はよく聞くと思いますが、実際にどんな雰囲気で、どんなことをしているのか知らない人が多いかもしれません。

    山崎 ここは子どもから高齢者までがひとつ屋根の下で過ごせる施設ということで、子ども目線で考えても、いろんな世代の人と触れ合って刺激がもらえるので、社会との関わりが深まりそうですよね。高齢の利用者さんも純粋無垢な子どもと触れ合うことで、童心に戻ったように笑い合っていて、双方に良い影響があると感じました。

    吉田 みなさん相手を思いやる気持ちに溢れているから、不安や孤独を感じやすい側面を持つ認知症のある方も安心して過ごせているように感じます。

    山崎 認知症のある方と接するのも今日が初めてだったかもしれません。

    吉田 利用者さんに積極的に話しかけて、コミュニケーションをとられていたのでそうは見えませんでしたが、実際に触れ合ってみていかがでしたか?

    山崎 話をしているうちに些細なきっかけから分かり合えることがあって、心を開いてもらえると素直に嬉しいですね。みなさん、長く生きてきた人生の大先輩でもあるので、その人が歩んできた経験を聞かせてもらったりして、勉強になることがたくさんありました。

    吉田 利用者さんに尊敬の念を持って接している姿を見て、山崎さんは介護のしごとに向いていると思いました。

    山崎 本当ですか、嬉しいです!! 吉田さんは長くこのしごとを続けていますが、介護のしごとをしようと思ったきっかけは何だったんですか?

    吉田 大きなきっかけはないのですが、昔から人と関わることが好きだったから。一人ひとりに寄り添い、支えるのが介護のしごと。距離が近い分、相手が求めていることを理解し、一人ひとりと信頼関係を築いていかなければならず、そこは大変な部分でもありますが…。でもそれ以上の楽しさがある。たとえば私との何気ない会話で相手が笑ってくれたり、ケアがうまくいって「ありがとう」と感謝されたり、やりがいを感じられる瞬間が多いしごとです。みなさんの笑顔や楽しんでいる姿を間近で見られるのが魅力です。

    山崎 私も人とコミュニケーションをとるのが好きで、相手が楽しそうにしてくれると幸せな気持ちになります。そういう瞬間を働きながらたくさん味わえるのは、すごく素敵なしごとです。ですが、日本では介護人材不足が社会問題になっていますよね。それはやはり資格が必要だからでしょうか?

    吉田 携われる業務は限定されますが、無資格でも働くことはできますし、働きながら資格を取得することもできます。手に職をつけられますし、自分の強みを発揮しながら長く働けます。ハードルが高いように感じるかもしれませんが、楽しいことの方が多いので、興味があればぜひ山崎さんのように体験してみてほしいです。

    山崎 職場体験ってできるんですか?

    吉田 そういう施設もありますし、最近はアルバイトやボランティアなどで介護の現場を気軽に知れるので、そういうのを活用するのも手です。

    山崎 私も今日の経験を通して、介護のしごとの解像度が上がりました。この楽しさを伝えていきたいし、もっと多くの人に介護のしごとの魅力が伝わるといいなと、心から思います。

    複合型福祉施設

    information

    深川えんみち

    写真・村上未知 スタイリスト・浦田聡美 ヘア&メイク・田中康世 取材、文・鈴木恵美

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    長く続いた慣例や決まり事を改めようという声が高まりそうです。時代遅れになっているルールや無理・無駄を見直し、議論するのに適した日です。若い人や新しく入ってきた人の意見もよく聞いて、より良い形になるように話し合ってみましょう。今すぐに変えるというわけにはいかなくても、ここでの議論はいずれ実になります。

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