5年目を迎えたanan総研の「総研神社部」が、2025年も活動! 新メンバーが加わり、伊勢神宮で神様に捧げられるお米「御料米(ごりょうまい)」の初穂を刈り取るお祭り「抜穂祭(ぬいぼさい)」について、全3回にわたって深掘りします。第2回となる今回は、「抜穂祭」を奉拝した総研神社部の2名が「神宮農業館」を訪れ、神宮が農業と深くつながっていることを体感。その体験を持ち帰り、他の部員に語りながら振り返ります。

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    「抜穂祭」を奉拝した2人が、「神宮農業館」を訪れます

    三重県伊勢市にある「神宮農業館」へ行きました!

    profile

    左から、anan総研No.317・角佑宇子さん(39歳・MC、webライター、ファッションスタイリスト)。「子どもの頃から神宮に関連する博物館へ行くことが多かったけど、『神宮農業館』へ行くのは初めてだから楽しみです」

    anan総研No.103・山下貴美さん(37歳・メーカー事務)。「神宮の神田の広さと神々しさに感動したので、農業とのつながりについてもっと知りたいです」

    what's anan総研?

    anan総研は、ananの誌面やデジタルで活躍する読者代表組織。女性たちのライフスタイルやいまの考えをデータと座談会で表現するリサーチ連載など、ananの各所で活躍しています。

    前回記事:【総研神社部】「抜穂祭(ぬいぼさい)」ってどんなお祭り?

    神宮と農業について学べる「神宮農業館」って?

    「農業館」では、「抜穂祭」が行われた神宮の神田(しんでん)を描いた「神宮神田の図」などを見学できます。

    今回は神宮司庁文化部の学芸員・長谷川明輝さんに、神宮と農業についてお話を伺いました。

    神宮司庁 文化部の学芸員・長谷川明輝さん。

    角さん

    「神宮農業館」は神宮と農業について詳しく知ることができると聞きました。どのような展示が見られるのでしょうか?

    長谷川さん

    「神宮農業館」は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)と豊受大御神(とようけのおおみかみ)の御神徳を広め、「自然の産物をいかに役立たせるか」をテーマとした、日本で最初の産業博物館です。
    皇室から賜った品や、神宮のお祭りでお供えする御饌をはじめ、明治時代の内国勧業博覧会に出品された産業資料、サメの剥製や蝋細工の植物模型など、自然科学系資料も多く収蔵・展示しています。

    あわびをりんごの皮をむくように薄く切り乾燥させた「のしあわび」。「神宮農業館」では、神様にお供えする御饌(みけ)の一例を展示しています。

    山下さん

    「抜穂祭」を奉拝し、お米は朝御饌(あさみけ)・夕御饌(ゆうみけ)と1日2食、天照大御神に祀られると知りました。

    神宮では、神様への奉納のために農業に携わる文化がどのように根付いているんですか?

    長谷川さん

    皇室の御祖先にあたる瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が高天原から地上に降りる際、天照大御神から稲穂(種籾)を授かり、地上での米作りが始まったという神話、「斎庭(ゆにわ)の稲穂の神勅(しんちょく)」に由来します。これは日本における稲作・食文化・神道が深く結びついていること、そして国と人々の繁栄を祈る祭祀の根本を示すものとされています。

    角さん

    「斎庭の稲穂の神勅」は、『日本書紀』に記された天照大御神が瓊瓊杵尊に授けた三大神勅のひとつですよね。

    神宮と稲作は、神話や祭事だけでなく、実際の農業とも密接につながっているんですね。

    長谷川さん

    そうですね。お米は日本人の主食であるとともに、神様のお食事である御饌の中でも最も基本的な品目です。また、お米としてだけでなく、酒や餅にも加工され、お供えされています。

    「伊勢一色村製塩場模型」。かつて行われていた塩作りの具体的な工程や、当時の製塩場(塩田)の景観を再現した模型です。

    山下さん

    館内にある、天皇陛下から奉納された稲穂の展示に見入ってしまいました。塩作りや養蚕の展示も詳しかったです。昔の人はどうやって上手に農作物を育てていたのでしょう?

    長谷川さん

    きっと試行錯誤しながら、上手くいかないこともたくさんあったと思います。その中で、昔の人たちが頼りにしていたひとつとして「伊勢暦(いせごよみ)」と呼ばれていた、現在の「神宮暦(じんぐうれき)」があります。

    古くより自然から豊かな恵みをいただくためには、日時や季節の移り変わりを正確に知り、農業や漁業の好機を捉えることが必要とされ、暦は大切にされてきました。

    「伊勢暦」は、日の出や満潮時刻など天体と気象に関する身近な情報や農事情報をまとめた暦で、当時は紙切れのようなものだったため荷物にならず、神宮を参拝する「おかげ参り(伊勢参り)」のお土産として人気だったようです。

    角さん

    神様から授かった稲を、みんなで大切に育ててきた歴史が見えてきます。

    「神宮農業館」で見学できるニホンオオカミの頭骨の前で、長谷川さんの話を熱心に聞く二人。

    長谷川さん

    昔も今も、イノシシやネズミなどの害獣被害は大きな課題でした。これらを捕食するオオカミやキツネは畑を守る「益獣」として尊ばれました。オオカミの語源には「大神(おおかみ)」という説もあり、古くから神格化された存在と考えられています。キツネを祀る稲荷社が各地に多いのも、豊かさを祈る人々の心のあらわれかもしれません。

    山下さん

    神社で祀られている動物にはきちんと意味があったんですね! 今まではあまり意識していなかったけど、これからは参拝のたびに調べてみます。

    東京の総研神社部メンバーの感想は?

    左から、anan総研No.401・黒川美南さん(31歳・会社員)、anan総研No.304・岩根沙恵子さん(35歳・管理栄養士、モデル、ライター)。そして伊勢に行ってきた山下さんと、角さん。

    「神宮農業館」でのたくさんの学びと発見を得た二人。ここからは、東京で待つ総研神社部メンバーへの報告会の様子をお届けします。

    岩根さん

    当たり前のように近くにあったお米が、「斎庭(ゆにわ)の稲穂の神勅」に由来していることを初めて知った!

    子どもの頃、母に「お米には7人の神様が宿っているから大切に食べなさい」って言われていたけど、これからもっと感謝の気持ちを込めて、お米を食べたいね。

    黒川さん

    「初穂曳」に参加したとき、伊勢市民や全国の崇敬者、約1200人の熱量に圧倒されたのを思い出したよ。稔(みの)りに感謝する行事が重層的にある。信仰の厚みを改めて感じるね。

    山下さん

    「神宮農業館」では、神社への信仰と農業との関係や、農業の知恵が昔から今へとつながっていく様子が伺えて、お米や農作物への感謝が強まった。

    角さん

    いろんな品種のお米が育てられている中に、神宮の神田で発見された、コシヒカリの突然変異種「イセヒカリ」というお米もあるんだよね。伊勢神宮の外宮(げくう)の近くに、実際に食べられるお店があったから、旅の合間に訪れたんだよ。

    神宮と農業のつながりを学んだ2人は、伊勢で育ったお米「イセヒカリ」に興味津々。次回は「イセヒカリ」を使ったおかゆを堪能し、同じお米のおせんべいと「神宮暦」をお土産に東京へ——次回は伊勢旅の美味しいレポートをお届けします。

    ※「神宮農業館」の館内は撮影禁止です。特別な許可を得て撮影しています。

    伊勢旅ダイアリー📸 by総研神社部

    「おかげ横丁にある赤福本店で、夏季限定メニューのかき氷を食べました。かき氷の中に白玉と赤福の餡が入っていて感激です♪」(山下さん)

    「三重県郷土料理、かつおの手こね寿司を初めて食べました。醤油だれに漬け込んだかつおの旨味と酢飯が美味しかった!」(角さん)

    「神宮大麻」は、どこで受けられるの?

    column

    「神宮大麻(じんぐうたいま)」とは、全国の神さまの中心であり日本人の総氏神として仰がれる、伊勢神宮の神様・天照大御神(あまてらすおおみかみ)のお神札。「自宅でもまつることができるように」と奉製されています。

    「神宮大麻」は、神職がいる日本全国の神社で受けることができます(一部例外もあります)。

    毎年、新しい「神宮大麻」を受けるとともに、地域をお守りくださる氏神様や、崇敬する神社のお神札を一緒に神棚におまつりして、ご家庭の一年の無事と幸せを祈るのが、日本の習わしとなっているので、「神宮大麻」は、氏神神社や崇敬神社で受けるといいでしょう。

    氏神神社は、居住地の神社庁(東京都なら東京都神社庁)に電話をして住所を伝えると、知ることができます。昔の区割りで分かれているため自分では判断しにくいので、ぜひ一度問い合わせてみてください。

    神宮徴古館・神宮農業館

    Information

    三重県伊勢市神田久志本町1754-1

    公式サイト

    写真・大内カオリ 文・三谷真美

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    人生や世の中を達観している人に象徴される日です。いわゆる人生の大先輩や、様々な事柄に通じている人、または特定の分野を極めている人などですが、何が起きてもうろたえることなく自然体で過ごしている姿を見ると、いろいろと学ぶところがあるでしょう。自分の中の固定観念を打破するきっかけになるかもしれません。

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