伊勢神宮の神様・天照大御神(あまてらすおおみかみ)のお神札、「神宮大麻(じんぐうたいま)」を学ぶために始まったanan総研の「総研神社部」。なんと今年で5年目を迎え、2025年も活動を再開! 2025年は社会的に“米不足”が大きな話題となりました。そこで「お米と神社」について全3回にわたって深掘りします。第1回となる今回は、総研神社部の新メンバー2名が伊勢を訪問し、伊勢神宮で神様に捧げられるお米「御料米(ごりょうまい)」の初穂を刈り取るお祭り「抜穂祭」を奉拝。その体験を持ち帰り、他の部員に語りながら振り返ります。

Index

    2025年度「anan総研神社部」メンバーを紹介

    部員4人の神社との関わりは?

    profile

    左から、anan総研No.401・黒川美南さん(31歳・会社員)。「子どもの頃から日常的に参拝していたから、神社は身近な存在。昨年『初穂曳(はつほびき)』に参加してからはより一層、神社やお米に対する思いが深まりました」

    anan総研No.304・岩根沙恵子さん(35歳・管理栄養士、モデル、ライター)。「五穀豊穣の感謝祭『神嘗祭(かんなめさい)』に参加してから、食べ物をいただくことへの感謝の気持ちが大きくなりました。実家には『神宮大麻』を祀った神棚があり、帰省するたびに手を合わせています」

    anan総研No.103・山下貴美さん(37歳・メーカー事務)。「実家が伊勢神宮がある三重県の隣の愛知県です。伊勢神宮への参拝の回数は数えきれないほど。でも知らないことがたくさんあるので、学ぶのが楽しみです!」

    anan総研No.317・角佑宇子さん(39歳・MC、webライター、ファッションスタイリスト)。「祖母が三重県に住んでいたので、子どもの頃から伊勢神宮へ参拝する機会が多かったです。また母が熱心だったため、神宮の歴史についてよく教わっていました」

    what's anan総研?

    anan総研は、ananの誌面やデジタルで活躍する読者代表組織。女性たちのライフスタイルやいまの考えをデータと座談会で表現するリサーチ連載など、ananの各所で活躍しています。

    お米にまつわる伊勢神宮のお祭りに、メンバーそれぞれが参加

    2025年はお米の高騰が社会問題となり、稲作に注目が集まった年でした。総研神社部ではこれまで、お米にまつわる伊勢神宮のお祭りである

    を奉拝したり、に参加してきましたが、改めて、神社とお米の関係について学びます。

    「神嘗祭(かんなめさい)」とは、毎年10月17日に三重県の伊勢神宮で行われる五穀豊穣の感謝祭のこと。神宮で年間1500回ほど行われるお祭りの中で、もっとも重要なお祭りとされています。お祭りでは、その年の最初に収穫した稲穂である「初穂(はつほ)」を天照大御神にお供えし、「由貴大御饌の儀(ゆきのおおみけのぎ)」と「奉幣の儀(ほうへいのぎ)」を中心に執り行います。

    「初穂曳」とは、お米の稔(みの)りに感謝を込めて、伊勢神宮に新穀を奉曳(ほうえい)・奉納する行事のことです。

    座談会に参加したのは、anan総研神社部として活動している岩根沙恵子さんと黒川美南さん、そして今年から参加した山下貴美さんと角佑宇子さんの4名です。

    山下さん

    総研神社部は「神宮大麻」を学ぶために発足されたんだよね。「神宮大麻」やそのまつり方についてを学んだり、伊勢神宮に「神嘗祭」、「初穂曳」を実際に見に行ったり。今年でもう5年目になるんだね。

    岩根さん

    そうそう。私は、お初穂を天照大御神にお供えする「神嘗祭」のひとつである「奉幣の儀」を奉拝したんだ。天皇陛下が国家の安泰、国民の安寧を祈るために行われるお祭りを奉拝してから、年間を通して行われている神宮のお祭りのことをもっと知りたいと思っていたの!

    黒川さん

    私は昨年、伊勢の街中から外宮まで、お初穂を積んだ奉曳車を曳いて運ぶお祭り「初穂曳」に参加したよ。お米の稔りに感謝して、全国で収穫されたお初穂を奉納したんだ。

    角さん

    今回、私と山下さんは、「神嘗祭」で奉納される御料米のお初穂を刈り取るお祭り「抜穂祭」を、9月に奉拝してきたばかり。神社部の今年の活動を報告するね!

    御料米の初穂を刈り取るお祭り「抜穂祭」って?

    神宮の神田を訪れた総研神社部の二人。

    「抜穂祭(ぬいぼさい)」とは、10月の「神嘗祭」をはじめ、神前に供える新米の初穂を神田(しんでん)で刈り取り、収穫の恵みに感謝する、1200年以上前の古文書「皇大神宮儀式帳」にも記載されている神事です。

    9月初旬、総研神社部新入部員の二人が、三重県伊勢市の伊勢神宮近くの神田を奉拝へ。「抜穂祭」について、神宮司庁広報室次長である、神宮参事・音羽悟さんに教えてもらいました。

    9月初旬、神宮の神田にて。忌鎌(いみかま)で稲を刈り、その穂を一本ずつ抜いて束ねている様子(写真提供:神宮司庁)。

    神様にお供えする食べ物「神饌(しんせん)」は、檜の素木で作られた辛櫃(からひつ)に納めて運びます。

    「抜穂祭」には、久邇朝尊(くにあさたか)大宮司をはじめ神宮の関係者や地元住民ら約80人が参列しました

    1/1

    山下さん

    天照大御神へおまつりする食事の材料は、すべて神宮の管轄する専用の施設で育てられていると聞きました。それはどうしてですか?

    音羽さん

    天照大御神は、天皇陛下の御祖先にあたる最も尊い神様なので、日々のお食事にも気を配っています。神宮では、お米をはじめ、酒、干鯛(ひだい)、熨斗鰒(のしあわび)、野菜、果物、塩などのお供え物が、自前で生産されているんですよ。

    角さん

    伊勢市内に約4ヘクタールに及ぶ広さの神田があり、昔ながらの栽培方法で稲を育てているんですよね。神田はいつからこの場所にあるんですか?

    音羽さん

    紀元前からこの場所で育てられています。お米はキレイで冷たいお水が流れる川の近くでないと美味しく育たないので、昔の人が一番美味しく育つ場所を選んだのだと思います。

    総研神社部の二人も「抜穂祭」の様子を奉拝しました。

    角さん

    「抜穂祭」は、お米の収穫の恵みに感謝するお祭りなんですよね。天候や自然災害で稲が育たないこともあると思うのですが、どのように対策しているんですか?

    音羽さん

    神田では、台風や大雨の被害で一網打尽にならないように同品種の作付け時期をずらして育てています。また虫害で御稲(みしね)が全滅しないよう別品種も作付けして、どこかに被害や事故が生じても祭儀の御饌(みけ)となる御稲を確保できるようにしているんです。

    最悪の事態として神田全体で収穫できない状況でも昨年の御稲を保管しており、それを供出して祭儀ができるように備えています。

    「抜穂祭」で刈り取られた初穂は、天照大御神にまつられます。

    山下さん

    昨年の御稲ってことは、令和の米騒動と呼ばれて話題になっていた、古米や古古米のことですか?

    音羽さん

    そうです。神宮でもお米を2年間保管しています。古米を規定量保存できたら、古古米になったお米は無駄にしないよう職員食堂で提供されるんです。

    初穂が納められる、伊勢神宮の内宮・御稲御倉を奉拝。

    角さん

    神田で収穫された初穂は、どのようにして天照大御神へおまつりされるんですか?

    音羽さん

    初穂は、内宮(ないくう)は御稲御倉(みしねのみくら)に、外宮(げくう)は忌火屋殿(いみびやでん)内に納められ、祭儀の御饌として必要分を下ろし、神職の手によって、御飯(おんいい)・御餅(おもち)・神酒(みき)に調理されます。

    天照大御神へ朝御饌(あさみけ)・夕御饌(ゆうみけ)と1日2食おまつりされる日別朝夕大御饌祭(ひごとあさゆうおおみけさい)ほか、年間1500回以上にも及ぶ祭典に用いられます。

    伊勢神宮と農業の関係とは? 次回は「神宮農業館」レポ!

    黒川さん

    「抜穂祭」を実際に奉拝して、どうだった?

    山下さん

    祭りの最中は言葉を交わすことなく、お辞儀などの所作ですべてを伝え合っているんだって。それぞれに役割があり、滞りなく遂行されていく様子が圧巻だったよ。

    忌鎌(いみかま)で稲を刈り、その穂を一本ずつ抜いて束ねて奉納するんだよね。

    岩根さん

    そうやって刈り取られた稲がおまつりされているんだね。そして自然災害に負けないようにいろんな品種のお米を育てていることにも尊敬。

    角さん

    そうなの。日本人の主食であるお米だからこそ、昔の人たちから受け継がれた知恵や工夫なんだって。だから、植える品種もだんだん変わっているんだよ。

    想像していたよりもたくさんの人が参加していて、全ての国民の感謝の想いを伝える神事なんだということを実感した。

    黒川さん

    「初穂曳」にも多くの人が携わっていたけど、神宮で行われる神事にはたくさんの人の感謝や願いが込められているんだね。ひとつひとつのお祭りがつながっていることに感動する。

    角さん

    子どもの頃、お米への信仰や成り立ちについて学んだことがあったから、実際に神田へ行くことができて嬉しかったよね。

    山下さん

    伊勢神宮と農業のつながりについてもっと詳しく知りたいからと、その後、「神宮農業館」を訪れたんだよね。

    岩根さん

    「神宮農業館」の報告も楽しみ!

    「抜穂祭」に参加したことで、お米と神宮のつながりについて関心が高まった2人。次回は、神宮と農業との関わりを学べる「神宮農業館」へ行き、改めてお米について考えたレポートをお届けします(0月0日公開予定!)。

    伊勢旅ダイアリー📸 by総研神社部

    「抜穂祭の祭場となる神宮新田は本当に広くて圧巻。神田の入り口には鳥居があって、一歩中へ入ったら神聖な気持ちになりました」(角さん)

    「愛知県名古屋駅と三重県伊勢市駅を結ぶ電車「しまかぜ」に乗りました! 田園風景を眺めながらの旅はローカル感があって楽しかったです」(山下さん)

    「神宮大麻」って?

    column

    「神宮大麻(じんぐうたいま)」とは、全国の神さまの中心であり日本人の総氏神として仰がれる伊勢神宮の神様・天照大御神を「自宅でもまつることができるように」と奉製されたお神札のこと。

    神社にはそれぞれの神様がまつられています。お神札には、その神社でまつられている神様のお神札と、伊勢神宮の神様・天照大御神のお神札「神宮大麻」とがあります。「神宮大麻」は全国の神社で頒布されており、基本的に、神職がいる神社では受けることができます(一部例外もあります)。

    「神宮大麻」は、お正月を迎える前に、伊勢神宮から日本全国の神社を通じて頒布されるので、毎年、新しい「神宮大麻」を受けると共に、地域をお守りくださる氏神様や、崇敬する神社のお神札を一緒に神棚におまつりして、ご家庭の一年の無事と幸せを祈るのが、日本の習わしとなっています。

    写真・大内カオリ 文・三谷真美

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