意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「米国が国際機関脱退を表明」です。
世界の秩序を保つために連携は欠かせない
トランプ大統領は1月に60以上の国際機関からの脱退や資金拠出の停止を指示しました。そのうち約半数は国連機関で、第2次トランプ政権が始まって以来、アメリカが脱退した国際機関には、世界保健機関(WHO)、国連気候変動枠組条約、国連貿易開発会議、国連人権理事会、ユネスコ、国連女性機関なども含まれます。理由は、アメリカの利益にならず、非効率的だからだとしています。
この背景には、国際機関における中国の影響力が大きくなっている事情もあります。中国では「制度性話語権」といい、国際機関でのルール作りを主導し、自分たちに有利になるよう動き、世界への影響力を強めようとしています。アメリカは、そうした力に抵抗するためにも国際機関にプレッシャーをかけていこうとしているんですね。
国連機関は、毛細血管のように目的ごとに分けられた機関の集合体でできています。そもそも国連は、第二次世界大戦の強い反省のもとに作られたもの。それぞれの国家だけに任せてしまうと人権が守られない。戦争を防ぐだけでなく、人々の命や尊厳、暮らしを国境を超えて守る仕組み作りをしようと、「世界人権宣言」を掲げて、それを世界共通の価値に置いていました。その仕組みを、パワーを持った大国が自分たちの利益誘導のために使い始めたことは大きな後退だと思います。
例えばWHOは、どこかの国で流行った疫病の端緒をつかみ、封じ込めるために専門家や実行部隊を派遣します。エボラウイルス病や鳥インフルエンザ、新型コロナウイルスもそれによって対処してきました。アメリカが抜けて、巨額の資金不足に陥ると、技術の共有も薬の開発も回らなくなり、そのツケは人類全体が負うことになるでしょう。
日本は国連改革を長年提唱してきました。現在の国連常任理事国は第二次世界大戦の戦勝国です。日本やドイツ、中東やアフリカ諸国も含めて、常任理事国を増やし、決定権を持てるよう働きかけていますが、諦めずに継続してほしいと思います。中堅国家が、アメリカ・中国という2つの大国と新興国の間に入り、連携してミドルパワーを発揮することが求められています。
五月女ケイ子解読員から一言

60以上も! なんてことでしょう。中立が保たれるべき機関で大国がわがまま言っちゃうのって、めちゃくちゃ側から見ていますが正直大人気ないですよね。ミドルパワーはやる気も知恵も身軽さも、一番脂が乗ってる感じがしていい響き。ファイトです。
解説員
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堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜20:00~21:00)が放送中。著書『災害とデマ』(集英社)が発売中。
解読員
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五月女ケイ子
そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。細川徹との共著、ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エステへ行く』(東京ニュース通信社)が発売中。
anan 2486号(2026年3月4日発売)より










