昨今ますますファン層を広げ、人気が高まっているVTuber=バーチャルYouTuberのみなさん。2026年は、VTuber文化の発祥からちょうど10周年の節目の年。いったいどんな人たちが話題になり、どんな潮流が生まれていくのか? 識者2人の視点で分析!
お話を伺った方々
Profile

たまごまご
VTuberをはじめとするオタク・サブカル系の分野を中心に、各種媒体で執筆しているライター。『仕事のマナー「気がきかない」なんて言われるのは大問題ですっ!』(総合科学出版)などの著作も。

おむらいす食堂
“食”をテーマに活動しているVTuber。バーチャルな世界の楽しさを伝えるべく、執筆・デザイン制作など動画の外でも活動の幅を広げている。X・YouTubeチャンネルは@omurice_shokudo
積み重ねた実績と技術で、さらなる才能たちが花開く一年に
昨今ますますファン層を広げ、より身近な存在となっているVTuberたち。2026年にはどんな潮流が生まれ、どんな顔ぶれに注目が集まりそうなのか…。ライターのたまごまごさん、VTuberのおむらいす食堂さんのおふたりに聞いてみました。
── おふたり人の目から見て、2026年のVTuber界にはどんな潮流が生まれそうでしょうか?
おむらいす食堂(以下、おむ) 正直、全然予想がつかない部分もあるのですが、それだけ文化として裾野が広がり、多様化が進んでいるということで、私たち視点でのお話ができればと思います!
たまごまご(以下、たまご) 僕は「(個々の表現のための)土壌の強化」「さらなる助走」「視野を広げるための投資」という面が今以上に強まっていくように考えています。もう1段階の成長のために、畑に肥料がどんどん投入されていく時期、というイメージ。
おむ そうですね、個々の活動の蓄積で豊かになった土壌に、さらに新しい風が吹く、育っていくという予想は私も同じです。
たまご 個人的には、技術面の進化に注目しています。エニーカラー(にじさんじ)やカバー(ホロライブ)のような大きな企業が、配信、リアルライブ、企画番組等でVTuber個々の表現をXR(VR・ARなど現実世界とバーチャルな世界を融合させる技術全般)面で大きくサポートし常に実験を繰り返しつつ、新しいことを模索しています。
おむ まるで現実のステージに立っているかのようなライブ演出はもちろん、XR技術を活用したオンラインミーティングイベントなど、企業所属か個人で活動しているかを問わず「バーチャルとリアルがつながる」瞬間がたびたび見られるようになりましたね。
たまご 例えばピーナッツくんや名取さなさんが、トップクリエイターを巻き込みつつ蓄積してきた技術を大解放し、個人VTuberが開催したとは思えないクオリティのライブやイベントを開催しているのは特に注目したいポイントです。とはいえ、お金はめっちゃかかるので(笑)、すべての個人Vがそのクオリティを実現できる未来はまだまだ先ですが、クラウドファンディングなどを利用する動きもありますね。
おむ 視聴者側も、家庭用VR機器の浸透や軽量なVRヘッドセットの開発によって、バーチャルな世界が少しずつ身近なものになっていきそうな気がしています。
たまご リアルとバーチャルが接近するとともに、ゲームやアニメのキャラクターとVTuberの境界も溶けていくと予想します。人気ゲームシリーズ『アイドルマスター』関連など、さらに接近する動きがあるのでは。
おむ 別軸の話でいうと、2025年に引き続き、特定の分野に詳しい「特化型VTuber」や「学術系VTuber」と呼ばれる方々の活躍には、大きな期待が集まるのではと見ています。
たまご 新旧和洋を問わず美術を愛する儒烏風亭(じゅうふうてい)らでんさん、ロケット工学の分野で専門家をも唸らせる知識を持つ宇推(うすい)くりあさんといった面々に続く新しい才能が続々登場し、学術系Vが集まったコラボ動画は、アベンジャーズみたいな顔ぶれになっていましたね。
おむ ある分野に特化した、いい意味での“狭さ”があるからこそ、企業や個人を問わず対等な立場での情報交換や交流が見られるのが魅力ですね。扱う題材が学術的だったり、エンタメとしてはやや硬派な内容でも、人々の心を掴む表現方法のひとつとしてVTuberが選ばれるようになっているのは嬉しいです。
── ありがとうございます。では、2026年に特に大きな話題を集めそうなVTuberさんを、具体的な個人名を出しつつお話ししていただいてもよろしいでしょうか。

【轟はじめ】高いスキルで視聴者を魅了するダンス番長! 2023年に「hololive DEV_IS」からデビューした音楽アーティストVTuberユニット「ReGLOSS」所属、愛称は番長。オリジナル楽曲「Countach」は自ら振り付けを担当、ライブやショート動画でも高レベルなダンスを披露している。2025年には「人に振り付けを提供する」という夢も叶え、活動の幅を広げる。ⒸCOVER

【栞葉るり】エンタメと学びを楽しく両立させる犬のお巡りさん 2023年に「にじさんじ」からデビュー。正義の名の下に、街の平和を守る犬のお巡りさん。趣味は読書。愛する古典の魅力を発信し続け、2025年7月に初の著書『ゆるゆる古典教室 オタクは実質、平安貴族』(監修・加藤昌嘉/KADOKAWA)を刊行。エンタメと楽しい学びを両立させている。ⒸANYCOLOR, Inc.
おむ にじさんじ所属の栞葉るりさんを挙げさせてください。2025年には愛する古典をテーマにした著書を出版するなど、学問領域にも明るいライバーとして人気を集めています。日々の発信からも真面目な性格と幅広い分野への好奇心が感じられ、今後「学術系」や「特化型」のVTuber界を牽引する存在として活動されると思います。別事務所や個人で活動するライバーとのコラボも行うなど、様々な専門領域の懸け橋となってくれることを期待していますね。
たまご 専門分野に特化したエンタメをやりながら、他の内容の配信もバランスよく行っているオールマイティなところが本当にすごい。このバランスって、すごく難しいと思うんです。「特化V」という枠じゃなくても、トップスターの器です。僕が挙げたいのは、ホロライブプロダクション傘下のグループ・hololive DEV_IS(ホロライブデバイス)の轟はじめさん。ダンスの実力者で、2Dの姿に加えて3Dの体でも活動するようになってからはさらに目覚ましい活躍を見せてくれています。ダンサーや振付師として多方面から高い評価を得ていることに加え、本人のキャラ性もキャッチーで、ますます多くのファンを獲得しそう。
── 先ほどお話しいただいたXR技術の進化とダンスという特技は、とても相性が良さそうですね。では次に、業界を盛り上げるキーパーソンになりそうな方を教えていただけないでしょうか。
たまご まず思い浮かんだのはPeaky Hikersさん。
おむ やっぱり、あのふたりですよね! たまごさんも挙げてくれるだろうと信じていました。
たまご 読まれていましたか(笑)。“農業”“群馬県”“演劇”をメインテーマに活動している夫婦VTuberです。2025年10月、自分たちで育てた新米6.3tを販売開始し、わずか1週間で完売となり話題になりました。これを実績としてご当地系・農業系のジャンルに今後さらに深く食い込み、大々的に活動してくれそう。コツコツと動画を作り続ける一方、フットワークが軽い企画もなんでも行える期待のユニットです。
おむ ヘアピンまみれについても語りたいです。私がラジオなどで活動を共にしているため名前を出していいか迷うのですが、決して身内びいきではなく…!
たまご ヘアピンまみれさんは、VTuberファンの間ではすでにスターじゃないですか!
おむ あえて専門領域に絞らないスタイルでの活動が、予想がつかない、底知れない面白さに繋がっている活動者だと思います。ものづくりを得意としながら、映画や恐竜などの幅広い知識とユーモアを交えて伝える能力が高いです。チャンネル登録者24万人を超えて活動の幅を広げる一方、まだまだ世間に知られていないのでは、と。ちなみに、誰もが知る人気アーティスト・こっちのけんとさんも推してくれているそうです!!
たまご 唯一無二すぎて真似られる人がいないというのもあるんですが、VTuberを知らない人も自分の世界に巻き込めるパワーのある人ですよね。
たまご 僕からはもうひとり、敷嶋てとらさんの名前を挙げさせてください。今のVTuber界で注目される方のポイントとして、個性的で面白いVlogを定期的に出せる、という要素もあると思っていて。その中でも、落ち着きのある語り口の魅力、取材する建物や土地選びのセンスの良さなど、視聴者の興味を惹く見せ方がうまいんです。音楽面での活動も積極的で、好きなことをのびのびやっていることが高い評価に繋がっている人物として、盤石な人気があります。
── おふたりが個人的に注目している方も教えてください。
おむ 惑星科学者VTuberとして活動している星見まどかさんは、今後の活躍が期待されるひとりです。難解になりがちな宇宙分野の情報を楽しくわかりやすく発信されていて、星空観望会を自主開催するなど、個人勢でありながらバーチャル・リアル問わず意欲的に活動されている様子も素敵。リスナーを含めた幅広い関係値が今後どのように発展していくかが気になっています。
たまご 僕の注目は、科学誌『Nature』に自身の研究論文が掲載されたことで2025年話題になった恐竜研究者VTuber・古知累すすむさんです。チャンネル内では、あらゆる恐竜関連の論文をわかりやすく動画化しています。しかもかなりの更新頻度で、今後活動が蓄積すればするほど、図書館のようにチャンネル自体の価値が高まるのをよくわかって作っているんだろうな、と感じています。学術・特化型VTuberの台風の目となっていくひとりと言って差し支えないかと。
おむ 冒頭の話とも繋がってきますが、三珠さくまるさんやドクター・デリートさんのように、個人勢でありながら高い技術を持った方々の動向も気になります。VTuberにとってネックな点でもある「自身の姿を現実に融合・投影する」ことを可能にするには、高い技術力だけでなく地道な努力が必要。そんな課題に向き合う彼らなら、すべてのVTuberがバーチャルな姿のままラーメンをおいしそうに食べられるなんて未来に近づけてくれそうです。

【ドクターデリート】悪の科学者VTuber、ドクター・デリートさんはVFX技術を利用した手元映像を実現、料理動画のクオリティにも驚き。

【三珠(みたま)さくまる】ジャグリングを得意とするVパフォーマーでもある三珠さくまるさんは、バーチャルな体でリアルの大道芸人とボールを投げ合うなど魔法のような映像を作成。
たまご 特に三珠さくまるさんのような「VTuberが普通の世界で普通のことをやっているのが面白い」という見せ方や思想は案外、他になかったというか。その部分の難しさに挑む姿はもっと見せてほしいですよね。
おむ ふと気づいたんですが、今回の対談では、こだわりを持って凝った動画作りをされている方が多く挙がった印象があります。
たまご そうですね。配信メインの方が動画の大切さにも注目し始めた、というのもあるのかな? と思っています。特にVlogはじわじわ盛り上がっていて。先述の敷嶋てとらさんが顕著な例ではありますが、VTuberが外に出て何かを撮る動画に需要がある、視聴者がそれを見たいと望んでいる時代なんだな、と感じています。最初期にはあまりなかった潮流かも。リアルとバーチャルが、YouTuberとVTuberが、VTuberとキャラクターが混ざり合う、そんな世界を、僕自身も見てみたいと思いますし。
おむ その未来予想は、実際VTuberとして活動している身として、すごくグッときます。2026年はVTuberの祖であるキズナアイさんのデビューからちょうど10周年になる節目の年です。時代とともに認知度を上げ、技術面でも着実に成長を遂げてきたVTuber界が、ますます繫栄する一年になりそうです!
anan 2477号(2025年12月26日発売)より
































