意識を混乱させて、無意識を働かせる!
心理療法のひとつである催眠療法を用いて、日常生活のあらゆる悩みを改善している心理カウンセラーの大嶋信頼さん。大嶋さんのカウンセリングルームには、「悩みや不安なことが次々と頭に浮かんで眠れない…」と、睡眠不足を理由に相談に来る方が多いそう。
「人間関係の悩みしかり、最近はスマホの見すぎで脳が過覚醒を起こし、睡眠サイクルが乱れて睡眠不足に陥っている人が増えています。そんな方に科学的に研究・実践されている現代催眠を用いて、睡眠習慣を改善しています」
催眠とは、意識を混乱させることで、無意識を働かせるというもの。催眠の作用が働くことで、不安や恐怖が消え、リラックスできるのでメンタルヘルス対策に有効。
「人間には意識と無意識があり、睡眠は本来無意識にできるはずですが、寝る前に考えすぎたりスマホを見すぎることでうまく眠りにつけなくなっている。だから就寝前にこの意識の働きすぎを止め、自然と無意識に委ねられるようになればぐっすり眠れるのです」
そこで誰でも簡単にできる、現代催眠を用いた2つのリラックスハックを紹介。1つめがフレーズを唱えて無意識を働かせる方法、2つめがあえて意識を使うことで無意識に誘導する方法。順番に実践して、効果を実感してみて。
無意識の力を使って眠る。
わかるようでわからないけれど、わからないようでわかるかもと、意識を混乱されて弱まらせることで、無意識の世界に誘う!
【魔法の暗示フレーズ】意識を混乱させることができる「暗喩」を含んだフレーズを、いま抱えている不安や悩みなどシチュエーション別に7つ紹介。
人から言われたことが頭から離れない時→「喜びは嫉妬の雨具」
周りからの嫉妬は電気ショックのようなもの。雨のように嫉妬を浴びせらせた経験があると喜べなくなってしまうけれど、嫉妬されるほどあなたは素晴らしいものを持っているんだから素直に喜んでいいんだよ。
新しい環境になじめない時→「春風のごとし」
「周囲に早くなじまないと!」と焦ることはない。あなたはあなたらしく、ただそこにいるだけで優しく撫でる春風のように、みんなを心地よくさせられる存在だから。いつか周りもそれに気づいてくれるはず。
過去の嫌な記憶を引っ張り出してしまう時→「花びら一枚一枚の価値」
過去の嫌な出来事を思い出して、ブルーな気持ちになるかもしれないけれど心配しないで。落ちた花びらが養分となり、再び美しい花を咲かせるように、それも今の自分を形作っている経験のひとつなんだよ。
生活リズムが不規則になっている時→「脳内ミルク」
必要な時に安心感や愛をもらえなかった自分に気づき、大切にすることができるフレーズ。変な時間に眠くなる時に唱えると口の中にミルクの味が広がり頭が冴え、眠る前に唱えると安心感に包まれてよく眠れる。
何もかもヤル気が出ない時→「罪は許された」
ヤル気が出ない怠惰な自分を責めてしまいたくなるかもしれないけれど、そんな罪はこの世に存在しないので、自分を罰する必要は一切なし。いざという時に飛び立てるように今は疲れた羽を休めてみてはどう?
自分を受け入れてもらえるか不安になった時→「色鉛筆で描く絵」
出会いの多い季節。自分という人間がちっぽけに思えることもあるけれど、色鉛筆を混ぜても色が変わらないように、みんな色々な線を描いている。あなたも自分が思っている以上にずっと個性的で魅力的だよ。
小さなことにクヨクヨ悩んでしまう時→「意味がない悩みは存在しない」
悩みがあると心の中が灰色の雲で覆われているよう。その雲から雨がポツリポツリと落ち、地上に降り注ぎ、いずれ地が固まる。思い悩んだ分だけ心が豊かになり、しっかりと歩いていけるようになるから大丈夫。
あえて意識の力を使って眠る
魔法の暗示フレーズが効かない時は、逆説の手法を利用して意識的に行うことで、無意識のスイッチを入れる方法を実践。
他人の言動にイライラした時→「頭の中の観察日記」
数字を用いて客観的な視点で相手の行動をモニタリング。
イライラの対象となる人物の行動を細かく観察して、小学生の観察日記のように記録する。ポイントは、「嫌い」などの主観的な感情は持ち込まず、「“なる早で!”と5回も言っていた」など、数字をうまく利用して客観的にモニターすること。情報を集めれば集めるほど、どうでもいいと思えるようになって、心地よく眠れるように。
気が休まらず、リラックスできない時→「気持ちがいいこと探しゲーム」
自分が気持ちいいと思えるシーンを頭の中で描き続ける。
多忙やスマホの見すぎなどで交感神経が優位になり眠れない時は、自分が気持ちいいと思えるシーンをたくさん想像してみよう。これを実践して嫌なことしか思い浮かばない人は、苦痛=気持ちいいことになっている可能性が。それでも深く理由を考えず、そんな自分を受け止めてあげることで副交感神経が優位になり、眠りやすくなるはず。
不安や悩みで頭がいっぱいの時→「ストレスが消える5回呼吸法」
言葉にできなかったストレスを息とともに吐き出してみる。
ストレスは言葉にすると発散できるが、なかなか言葉にできないことも。そこで息を吸い込み、「自分の今日一日の感情が、息とともに吐き出されていく」と唱えて息を吐くと、脳内に溜まっていたストレスが激減。これを5回繰り返すと、「言葉にできなかったストレスがちゃんと吐き出せた」という自己暗示にかかり、深い眠りの中へ。
言いたいことが言えず我慢している時→「幸せな夢をデザインする方法」
こんな素敵な夢が見たいとイメージを膨らませる。
我慢癖がついてしまっている人は夢の中だけでもワガママになってOK。眠る前に布団に入り、こんな素敵な夢が見たいと想像する。ピンとくるものが出てくるまで次々に思い浮かべ、自分が求めていたものが見つかると、すっと眠りにつける。これを実践すると就寝中に自己表現力が伸びる効果もあるので、我慢癖が直るかも!?
大嶋信頼さん 心理カウンセラー、作家、インサイト・カウンセリング代表取締役。ブリーフ・セラピーのFAP(不安からの解放プログラム)療法を開発し、トラウマのみならず幅広い症例のカウンセリングを行う。新著に『無意識さんの力でぐっすり眠れる本』(ダイヤモンド社)。
※『anan』2024年4月10日号より。イラスト・黒猫まな子 取材、文・鈴木恵美
(by anan編集部)