アメリカに留学していた頃、モールに行ったらピザか中華、お腹がすけばピザか中華のデリバリー、という感じでとにかくピザと中華を食べまくっていた。アメリカンチャイニーズは本場の中国料理とは違う独自の進化を遂げていて、何を食べてもギラギラと味が濃く油っぽく、いつも何かに飢えているユースの胃袋に突き刺さる美味しさだった。
昨年末、下北沢に登場した『Oscar』は、アメリカンチャイニーズの深き理解者である『PIZZA SLICE』のオーナー・猿丸浩基さんが代表を務めるダイナーだ。猿丸さんがピザ修業でアメリカに住んでいた時めちゃくちゃお世話になったのがアメリカンチャイニーズで、いつか日本でもやりたいと何年も構想を温めてきたという。店内のデザインから、チャオメン(焼きそば)のいい意味でもっさりした食感まで、自身の思い入れと愛情が店の細部に宿っているのを感じる。しかし元来のアメリカンチャイニーズとの決定的な違いがある。それは、オールヴィーガンであること。甘辛塩(じょ)っぱいの大定番・ジェネラル・ツォーズ“チキン”も、永遠のアイドル・“ビーフ”&ブロッコリーもメイドインヴィーガン。まさかと思うほどの肉々しさは、代替肉などの技術力の高さはもちろん、レシピ開発の試行錯誤の賜物だ。ヴィーガンといえばヘルシー。そんなイメージを打ち破る、ヴィーガンなのにジャンクでハイテンションな新しいダイナーの形がここにある。
ランチプラッター(¥1,200)は、サイド1種またはハーフ&ハーフ、メイン2種、ソフトドリンク1杯を選ぶ。写真はサイドがハーフ&ハーフで、手前から左回りに、チャオメン、“ビーフ”&ブロッコリー、フライドライス、ジェネラル・ツォーズ“チキン”。実はカクテルも充実な『Oscar』。ピンクレモネードマルゲリータ(¥700)でカラフルに乾杯。現在、17:00~19:00にアルコール全品¥500となるハッピーアワーを実施中(終了未定)。
Oscar American Chinese 東京都世田谷区代田2‐36‐15 BONUS TRACK内 TEL:03・6823・7496 12:00~23:00(22:00LO) 不定休 詳細はインスタグラム(@oscaramericanchinese)で。
ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)など。
※『anan』2023年3月15日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子
(by anan編集部)