モダンタコスにフルーツサンドにクラシックビストロにニューウェーブな豚骨ラーメン! 今年の7月に広尾駅前に誕生した新スポット「EAT PLAY WORKS」の1~2階のレストランホールには目移りするほど魅惑的なレストランが続々出店し、食のアベンジャーズの様相を呈している。ゆえに、こちらで一皿あちらで一皿、とはしごは不可避&それこそが醍醐味ではあるものの、私はあらゆる欲望を振り切って2階の奥へと突き進む。なぜならそこにパスタハウス『Taratata』のミートボールスパゲティがあるからだ!
太麺の右サイドにごろりと転がるミートボールは、孤高の精肉店『サカエヤ』から仕入れた熟成肉のスネやスジ肉をミンチにした極上品。それが肉の旨味の溶け込んだトマトソースに絡まるのだから無敵。凡百のミートボールパスタをごぼう抜きする無慈悲なおいしさだ。ブッラータチーズの絡むオイルベースの左サイドと和えれば味変も楽しめる。この素材力と完成度を1800円で堪能できるのは、広尾の名イタリアン『メログラーノ』の姉妹店だからこそ。「メログラーノでは使用しづらい部位もミンチにすればおいしく食べられます。食材を余すことなく循環させれば、良い食材を高くない値段で出すことができますから」とシェフの後藤祐司さん。カジュアル、だけど本質的であること。後藤さんの示す価値観はとても眩しい。
熟成牛入りミートボールのトマトソースとブッラータチーズのスパゲティ¥1,800に、ヴェルモットパッションソーダ¥900のカクテルを合わせて。後藤さんのお父さんはかつて広尾でパスタ屋を営んでいたそう。後藤さんがパスタハウスを開いたのも必然か。
Taratata 東京都渋谷区広尾5-4-16 THE RESTAURANT 2F TEL:080・6793・5397 ランチ11:30~14:30(日・祝日は~15:00)、ディナー17:00~23:00(日・祝日は~22:00) 無休
ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。
※『anan』2020年9月2日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子
(by anan編集部)