角野隼斗さん

いま最も注目を集めているピアニスト、角野隼斗さん。比類なき感性と圧倒的な実力で、クラシックの枠を超えた活躍をみせる。国内外での公演に飛び回りながらニューアルバムのリリースも控える彼に、今作に込めた想い、そして音楽家としての展望を聞いてみた。


Profile

角野隼斗

すみの・はやと 1995年7月14日生まれ、千葉県出身。2021年、ショパン国際ピアノコンクールにてセミファイナリスト選出。クラシックのソリストとして活躍する傍ら、YouTubeでもCateen かてぃん名義で活動中。ニューアルバム『CHOPIN ORBIT』は、1月21日に3形態で発売。

チョコレート色のスーツを着こなし、一方ではくつろいだ様子でトイピアノを奏でる角野隼斗さん。今やピアニストとして国内外から注目を集める存在だけれど、佇まいは軽やかで朗らか。昨年のKアリーナ公演では、屋内で開催されたピアノリサイタルとして1万8546枚のチケット売り上げを記録し、ギネス世界記録に認定された。音色だけでなく、光や映像とともに全てを体感するようなコンサート。その演出も含めて観客を魅了した。

「Kアリーナのような大きな空間でコンサートをやるにあたって、音を鳴らすだけじゃなく、その空間をデザインしたいなと考えていました。なので今回、真鍋大度さんにお声かけして、彼が率いるチームと映像とのコラボレーションを実現しました。そうした舞台演出でコンサートを行うことは自分の中でもチャレンジングなことでしたので、多くの方に体感していただけて本当に嬉しいです」

日本武道館、カーネギーホール、そしてKアリーナと、大舞台を次々と成功させている現在。しかし多才な角野さんは、かつてピアニストになるか、それとも研究者になるかを迷った時期があった。

「音楽家になる決断をしたのは2020年で、2023年に日本からニューヨークに活動拠点を移しましたが、当時はそんなに仕事も決まっていない状態でした。昨年あたりから自分が数年前には想像もしてなかったようなステージに立たせてもらえて、これまでやってきたことが実になってきたと感じました」

クラシック音楽という伝統を大事にしながら、作曲や即興、そしてコンサートのみならずYouTubeといった活動の場で、新たな音楽体験を提示してくれる。角野さんは「今の時代を反映する音楽家でありたい」と語る。

「もちろん長い歴史を持つクラシック音楽の伝統を伝えたいし、先人たちが積み上げてきたものへの多大なるリスペクトがあります。それと同時に、今の時代に生きる自分だからこそ、できる音楽はないかと常に考えています」

東京大学大学院在学中に結成した6人組シティソウルバンド、Penthouseのピアニストとしても活動中。幅広いジャンルで音楽を届けることも、角野さんの強み。

「例えば、クラシックでは演奏曲を事前に公開することが通例ですが、バンドでセットリストをライブ前に公開するなんて稀ですよね。クラシックの公演で演奏するのは基本的に自分の曲ではないので、オーディエンスはそれを知らされていないと何を期待していいのかわからない。事前にプログラムを作るのは、来てくださる方の期待感のコントロールなんだなと気付いたり。幅広いジャンルで音楽活動をすることで、外側から新しい視点で見ることができるんです」

セカンドアルバム『CHOPINORBIT』は、ショパンの曲と、それにインスピレーションを受けた角野さんの新曲が交互に並べられたコンセプチュアルな作品。ショパンへのリスペクトとロマンに満ちている。

「もともと自分で作曲をするときも大好きなショパンの影響を感じていました。ショパンの技法・和声進行の美しさ、音楽に漂うエレガントさなど、いろんな部分に惹かれます。なので一度、ショパンの音楽に正面から向き合って自分の作曲とペアリングしたコンセプト・アルバムを作りたかったんです」

ショパンとは生まれた国も時代背景も違うけれど、幼い頃からシンパシーを感じてきたという。

「このアルバム制作では、21世紀に主に日本で育った自分が、ショパンの音楽が持つ美意識の芯にあるものを現代で表現するとしたら? を考えながら作っていました。僕は幼い頃からショパンが大好きで、音楽から感じ取れるパーソナリティに、自分に近いものを感じてきたんです。ショパンの音楽には、心の中にある熱いものを100%出し切ってないような曖昧さと、感情が複雑に絡み合っている感じがあり、共鳴します」

今作を引っ提げて、1月30日からは全国ツアーも。国内外を飛び回る角野さんが、以前、ベルリンで出合ったチョコレートの話をしてくれた。

「ベルリンのホテルに滞在していた際に、お腹がすいて、部屋に用意されていたチョコレートを食べてみたら、美味しすぎてびっくりしました。甘いものはそんなに頻繁に食べないのですが、たまに食べると美味しいですね。焼きたてのブラウニーにアイスを添えたものや、シフォンケーキも大好きです。あ、そんなに食べないとか言いながら、結構好きかも(笑)」

これからも、ときに甘いチョコレートに癒されながら、世界中に伝統と革新が交差する音楽を届けてくれるはず。

Sumino’s History

【2011】

開成高校在学時に、ニコニコ動画、YouTubeチャンネルにて、「Cateen かてぃん」名義で、ポップスやゲーム音楽のカバー動画をアップし始める。

【2018】

東京大学大学院在学時、ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリを受賞したことをきっかけに、本格的にピアニストの道を志す。

【2019】

6人組のシティソウルバンド「Penthouse」のメンバーとしても活動をスタート。

【2021】

世界三大ピアノコンクールの一つ、「ショパン国際ピアノコンクール」に出場。セミファイナリストに選出され、世界的に注目を浴びる。

【2023】

ニューヨークを拠点に活動を展開。

【2024】

29歳の誕生日に「角野隼斗 ピアノ・リサイタル at 日本武道館」を開催。同会場での単独ピアニスト公演として史上最多となる1万3000人の観客を動員。

【2025】

・9月、「Cateen かてぃん」名義でのYouTubeチャンネル登録者数が、150万人を突破。

・11月18日、ニューヨークにある音楽の殿堂「カーネギーホール」にて、「Keyboard Virtuosos II-Recital」を開催する。

・11月29日、Kアリーナ横浜で「角野隼斗 ピアノリサイタル“Klassik Arena”supported by ロート製薬」を開催。販売された1万8546枚のチケットは、全席完売。「屋内のソロピアノリサイタルで販売されたチケットの最多枚数」としてギネス世界記録に認定された。

写真・三吉杏奈(TRON) スタイリスト・金野春奈 ヘア&メイク・川口陽子 取材、文・上野三樹 撮影協力・AWABEES UTUWA

anan 2479号(2026年1月14日発売)より
Check!

No.2479掲載

チョコレートLOVE 2026

2026年01月14日発売

毎年恒例の「チョコレート」特集。メゾンの新作や最新トレンドリサーチから、ショコラトリー併設のバーやホテルのアフタヌーンティーなどおでかけして味わうショップ情報まで、50軒以上の気になるチョコレート情報を集めました。

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