どうして、その穴を掘り続けたの? そう聞きたくなるような専門店はいつだって興味深い。今年の7月に西大島に登場した『陽記』はなんと、腸粉と中華粥の専門店。腸粉といえば中国料理の中でもわりとマイナーな広東式点心。お皿の上にぺろんと横たわる乳白色の物体は、米粉の蒸し春巻きのよう。そんな隠れキャラを主役に据えたのは一体なぜ?
「妻が広州出身で。“故郷の味を日本でも食べたい”というので、家で作り始めたのがきっかけでした」と、店主の竹内亮さん。なんて微笑ましいエピソードなの。元々飲食の仕事をしていた竹内さんは腸粉作りに奮闘、帰省の度に本場広州の腸粉を食べ歩くほどのめり込んでいった。
「現地では朝ごはんで気軽に食べられる屋台料理なんです。でも、日本ではなかなか出合えないから」。もっと気軽に腸粉を食べられる場所を、という思いが専門店のオープンにつながった。いざ店を開いてみると予想を超えた好反応、ご近所さんだけでなく東京中の腸粉ファンが集う場所に。人気の秘密は本場の味。ちゅるんともちもちの食感を追求した皮は、食べるというより吸引する感覚で何皿も食べられてしまう(恐ろしい)。タレの味付けも重要で、中国醤油にピーナッツオイルを混ぜた独特の甘さがやみつきになる。広東式のさらりとしたお粥に合わせれば尚おいしく、ヘルシーで風通しのいい食事が約束されている。
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