スイーツライターのchicoさんがおすすめスイーツを紹介する「お菓子な宝物」。今回は『ondine(オンディーヌ)』の「ノクターン」などです。


手前から時計回りに、「ノクターン」(980円)は腕を磨いた札幌『パティスリーシイヤ』のお菓子を再構築。カリカリのパイの器に宮崎の和栗のクリームがほっこりとろける「和栗のモンブラン」1200円。6種のベリーコンポートを包んだチーズケーキ「ジムノペディ」(920円)の名は、白いものしか食べなかった作曲家・サティの曲から。いちじくと紅茶にシナモンと赤ワインが深みを醸す「アルハンブラ」950円。サクほろ砕けるパイ生地からアパレイユがとろりと溢れる「フラン」(2300円、予約推奨)は、通常の約3倍量の天然マダガスカルバニラ入り。

なびくような無造作フォルムの純白チーズケーキ「ジムノペディ」に、いちじくと紅茶が優雅に香る「アルハンブラ」……と聞いてピンときた人はきっと音楽好き。『オンディーヌ』のお菓子はクラシック曲にちなむ名前が目立つ。

「『オンディーヌ』とはラヴェルのピアノ曲『水の精』から。流れるような音色の美しさや繊細な表現が自分たちの姿勢に重なりました。日々当たり前にあり、囚われずに流れる水のように、フランス菓子の伝統も自由な発想も大切にしたい」。そう話す宮地弘毅さんが『アルノー・ラエール』エグゼクティブシェフを務めていた時、クラシック音楽界で活躍する劉優華さん(映画『蜜蜂と遠雷』の音楽も監修!)がパティシエールを志して入社。そしてこの夏、二人でお菓子と音楽が共鳴するパティスリーを始めた。お菓子の名にも、もちろん由来が。夜想曲「ノクターン」は静かに物思いに耽けるイメージだけど、宮地さんが想う夜は友人との食事シーン。だからアニスや薬草香る南仏の食前酒、パスティスを使って。さらに五香粉(アニス、クローブ、山椒、陳皮、シナモン)やカルダモンと個性強めの香りが、さり気なくスッと調和し、気高いのにどこか妖艶。瑞々しいパイナップルソテー、それからキャラメルやショコラと滑らかにとろけていく。想像もつかない組み合わせが唖然とするほど味わい深い。音楽に身を委ねているような、心揺さぶるお菓子の時間を!

Profile

チコ

スイーツライター。大人気のガイド本『東京の本当においしいスイーツ探し』(ギャップ・ジャパン)シリーズ監修。

Information

ondine

東京都港区東麻布1-22-2 TEL. 03-6230-9465 10:00~18:00(イートイン17:30LO) 火~木曜休

写真・清水奈緒 スタイリスト・官野亜海 取材、文・chico

anan 2467号(2025年10月15日発売)より

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