2025年3月31日、惜しまれながらも解散したKAT-TUN。11月8日(土)に千葉・ZOZOマリンスタジアムでファイナルライブ「Break the KAT-TUN」を開催した。2001年の結成から約24年の軌跡を辿るセットリストで最高のステージを届けたドラマティックな瞬間をレポートします。


曇天に夜の帳がゆっくりと下りようとしていた17時──。海風がそよぐZOZOマリンスタジアムにはラストライブを見届けようと集まった3万人のファンの熱気であふれていた。ステージに設置された超巨大な海賊船のセットスクリーンには、スカルマークの帆が掲げられ、夕陽のようなオレンジ色のライトが灯されている。海賊船の乗組員は、もちろんKAT-TUNだ。亀梨和也さん、上田竜也さん、中丸雄一さんがゴンドラで華麗に登場すると、海賊船の帆がゴールドに輝きを放ち、「ハルカナ約束」のワンフレーズをアカペラで歌って幕開け。解散配信ライブを行った3月31日に「ファンと集まれる場所を改めて作る」と誓った、あの日の約束を果たした。

「騒がねーと、命はねぇぞ!」。デビュー当初のライブを彷彿させる雄叫びを合図に歌ったのは、KAT-TUN=海賊のイメージを定着させたジュニア時代からの大人気曲「GOLD」だ。“汚れたシャツが君の地図”と歌うこの曲で海賊船が大海原へいざ出航し、旅立つ。サングラスをずらして、「ア―ユー、レディ?」と亀梨さんが色っぽく舌なめずりすると、音玉特効が大爆発! 炎の特効が威勢よく燃えさかり、これぞKAT-TUNなライブの始まりに胸が高鳴る。

疾走感たっぷりな「SHE SAID…」ではムービングステージで会場のファンの元へ。「声出せる準備はできるのか? もっと!心に刻みながら盛大にいこうぜ」と上田さんが叫べば、中丸さんは「Hey! 今日は特別な日にして、KAT-TUN史上最高の思い出を作ります、よろしく!」。亀梨さんがサングラスを外して、「今夜は俺らと最高の歴史を作るぞ!」と宣言すると、大きな歓声が巻き起こった。

スクリーンに2006.3.22とKAT-TUNのデビュー日が映し出される。すると、彼らの歴史が動き出したデビュー曲「Real Face」のイントロが。悲鳴にも似た歓声が上がる会場。亀梨さんのピンク、上田さんの青、中丸さんの紫のメンバーカラーのスポットライトの他、赤西仁さんの赤色、田中聖さんの黄色、田口淳之介さんのオレンジのメンバーカラーのスポットライトがステージを色鮮やかに照らし、6人時代を彷彿させる演出が。当時の音源が流れ、亀梨さんに寄り添うように赤色の照明が照らされるなど、まるでメンバーがそこにいるよう。ジュニア時代からカリスマ的な人気を誇っていた彼らの代表曲となったデビュー曲は、いつの時代に聴いても色褪せないパワーが漲るロックチューン。“ギリギリでいつも生きていたいから”という心の叫びが彼らの生き様ともぴったりリンクし、切なく鮮烈な輝きを放つ。

中丸さんの「改めまして、僕たちがKAT-TUNです!」の声で始まったMCでは、「座ってもらって、体冷えないようにしてね。話を聞いていて、寒いなと思ったらちゃんと自家発電して」と震えるしぐさをする亀梨さん。上田さんが「みんな、ホッカイロ持ってるの?」と尋ねると「持ってる~!」の声が。中丸さんは「今、持ってるほうが多数派だったかもしれませんけど、なかには持ってない人もいます。結構、厳しい闘いになるかもしれませんけど、そういう時はハッスルしてもらって」と呼びかける。

ここで中丸さんが「じつは僕ら、解散してます」と改めて切り出すと、「マジすか? マジっすか?」を繰り返す亀梨さんと上田さん。「解散してるんですよ。ですけども、その声が届いたんです。一発皆さんと集まる機会、それはマストでやらしてくれって。それが今日実現したっていうことで…」と中丸さんが感慨深げな表情になると「配信のみんなも繋がってくれてるね」と亀梨さん。「ありがとう、皆さん。俺たちは元気だぜ」と上田さんもニッコリ。

2001年に結成、早24年以上の月日が経つKAT-TUN。上田さんは1998年6月22日入所、亀梨さんと中丸さんは1998年11月8日が入所日ということで、記念すべき入所日がラストライブの日に。「今日、俺と中丸くんに関しては会社に入ってたんです。27年前の今日」と亀梨さんが振り返ると、「えっ、27年? やばくない? 偶然にもそんな日なんですね」と驚く中丸さん。そんな二人のやりとりを羨ましそうに見ていた数か月先輩の上田さんは「心の距離を感じるよ(笑)」と冗談めかしたやりとりも。

「27年前の今日にオーディション受けて、27年後の今日に最後のステージに立つわけで」(亀梨さん)と11月8日が特別な日だったことが判明し、「ありがたいですね。漫画でもなんでもそうじゃないですか。最後まできちっと最終回まで終わるっていうのが結構大事なことじゃないですか。やっぱり」(中丸さん)とラストライブで完結できることを喜ぶ。

寒い季節の野外ライブになり、ファンの体調を心配していた亀梨さんが「やっぱりKAT-TUNは、厳しめの航海ですから。ただ、本当に雨が降らず、良かったよね」と中丸さんのほうを見ると「誰が雨男やねん!!」。さらに亀梨さんが「良かったじゃん、中丸くん。最後の最後に雨男を卒業できて(笑)」というと、「誰が雨男だ、バカタレって言おうと思ってたんですけど。…良かったですね~、晴れてね」と言ってバカというワードを言わないほうがいいかと気にする中丸さん。「バカだって言っちゃいけないの? もう色々ね、気にしすぎてつまんない男になんなよ(笑)」と亀梨さんがいじれば、「お前、知ってるぞ。もう遅刻しなくなったんだってな?(笑)」と上田さんも中丸さんに愛たっぷりのいじりを。全力で「バーカッ!!」と叫ぶ中丸さんはまるで小学生男児のようで会場に笑いが巻き起こった。

気を取り直した中丸さんが、これまでいろんな場所でライブをしてきたけれど、KAT-TUNで野外は初めてということに触れる。「2011年の5周年の時ね、本当は初の野外やる予定だったんですけどね。最後に念願の野外です! しかも海沿いだし、海賊船だし、良かった」(亀梨さん)とバッチリのシチュエーションを喜ぶ。「多分、お客さんの脳内の2割ぐらいは海風が寒いなって…」と中丸さんがこの時期の野外の寒さに触れてから、「…これさ、解散したグループのMCって何話したらいいの?」と戸惑い出す。公演当日何を食べたかという話では、中丸さんは本番前にカレーライス、上田さんは昼間に卵かけご飯、亀梨さんは「俺、ゼリーチューチューした」とのこと。上田さんが本番前めずらしく緊張して食べられなかったことに触れると「プロフェッショナルだもんな」と言う中丸さん。そのやや嚙み合ってないような発言を聞いた亀梨さんは「上田、中丸のこと、よろしく頼むぞ。ホントに心配になっちゃうよ。面倒みろよ(笑)」と上田さんにお願い。「え、嫌だよ~(笑)」(上田さん)と仲睦まじい、わちゃわちゃなやりとりが続く。

亀梨さんから高校時代にメンバーと行ったグアムでの思い出話が飛び出すと、「KAT-TUNってやっぱ青春だったよね」としみじみ。「いや、本当に青春そのものでしたね。未だに中高生時代のまま、同級生でやってるみたいな感覚がどこかにあります」と中丸さん。そんな学生時代のヤンチャな仲間みたいな存在のメンバーだが、解散しても同じエンタメ業界にいるからこれが終わりじゃないと話していた。

この日、すべてのシングル曲を含む全51曲を披露したKAT-TUN。デビュー前に歌っていた「ノーマター・マター」ではファンとのコール&レスポンスで盛り上がるなど、懐かしい曲も盛りだくさん。雪の結晶のようなシャボンが上空を漂った「White X’mas」など、楽曲に合わせた世界観が繰り広げられた。24年間歩んできたKAT-TUNの楽曲には、私たちの青春の思い出の記憶が交錯していることに気づかされる。

終盤の挨拶では、トップバッターの上田さんがいつもと変わらない明るい口調で話し出した。「始まる前は、この日が来なければいいなという気持ちと、早くKAT-TUNとしてステージに立ちたいなという気持ちの両方ありました。今までのKAT-TUNの歴史を振り返るライブだったんですけど、ちょっと当時を再現して。3人で受け継いで歌ってきたんだという気持ちで歌わせていただきました。2〜3年前かな、『After Life』という舞台がありまして、 “自分が死んだ時、どの思い出を持っていきますか?”っていう舞台なので、取材でよく聞かれたんですよ。僕が死んだら何を持っていくかという質問に“KAT-TUNのライブ”って答えていたんですけども、その場面がおそらくこの後のシーンなるんじゃないかなと確信しております。最高の景色になるんじゃないかな。KAT-TUNの上田竜也としてはこれが最後のコメントになってしまいますが…」と話していた途中、涙声になり、「10代から本当に素敵な人生を歩ませてもらって。24年間応援してくれた方、本当にありがとうございました。この瞬間を一緒に見届けてくれて、ありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いします。以上、KAT-TUNの上田竜也でした」と締めくくった。

続いては中丸さん。「日々思っていたことなんですけれども、今日確信に変わったなと思うことがありまして。ホントに人に恵まれたなと思いますね。スタッフの皆さんもそうですし、お世話になってる関係者の皆さんもそうですし、レコード会社もそうだし、何よりもね、一緒にやってきたメンバー、支えてくれるファンの皆さん。皆さんの温かさの中で、この四半世紀、楽しく過ごせたなと強く思いました。言葉にして伝えるにはちょっと限界があるんですけれども、本当に心の底からね……」とお礼を言おうとした途端、「うっ」と嗚咽をもらして涙を流す中丸さん。我慢していた感情があふれ出してきたのか、言葉を続けられず、ステージに座り込むと、「 おじいちゃん座らないでよ(笑)」と、優しい声でフォローを入れる上田さん。「表に立つものとしてのひとつの美学があったんです。皆さんに悲しい思いをさせるっていうのは、避けなければならないと。そういう信念を持ってKAT-TUNもやってきたんですけれども、さすがに解散は…。感情がぐちゃぐちゃになって申し訳ないですけど、最後こうやって花道のようなものを設けさせてもらったのは、ありがたいこと。楽しいなという気持ちと楽しい時間が終わってしまうのは悲しい気持ちがちょっと混ざっています。でも、今後も6人ともエンタメの世界にはいるし。未来のことはよく分からないですけど、どこかで交われたらと思います。希望を持たせるとか1ミリもないんですけれども、ただ、個人的な感想としてはね、そんなことがあれば面白いなと。というわけで、すいません、ツラツラと…。皆さん、四半世、本当にKAT-TUNを支えていただき、ありがとうございました」と頬に涙を流しながら今の気持ちを語ってくれた。

最後は亀梨さん。「皆さん、本日は本当にどうもありがとうございました。楽しかったですか。えー、終わります!」と、おどけると、「やだ~」と声を揃えるファン。「10代の時に結成して。とにかく自分の青春だったし、最初から最後までKAT-TUNが大切だったし、KAT-TUNというグループの道を進むことが自分にとってプライドであり、美学であり、誇りでした。たくさんライブを重ねて、やる度に想像もできないくらいの景色を見させてもらって。これからはこれまで歩いてきたものをしっかりとみんなと一緒に心の宝にしたい。キランと何かきらめく存在でこのグループがあってくれたら嬉しいなと思います」

ここで「ああ~………」とため息のような残念そうな切ない声を出してから、「フッ、終わりだ。とにかくこの形が最高の未来のために……未来へ進んだ時に、メンバーともみんなとも最高の形(の終わり方)だったと思うんで、それぞれが次の一歩を踏み出さなければいけないと思っています。また想像もできないような景色をそれぞれが作って、共有して、また青春ができたらいいなと思ってますので、その時には……大いに騒ぎましょうね」と目をキラキラと潤ませながら呼びかけると盛大な拍手に包まれた。

最後、会場とメンバーがひとつになって「We are KAT-TUN」の叫び声を上げると、盛大に次々と夜空に打ち上がる花火。「Thank you. KAT-TUN!!」──。24年にわたる長い航海の旅路がここで終止符を打たれたと思ったその時、「Real Face#2」のイントロがドラマティックに流れ、炎が眩しく燃えさかる。彼らが最後の曲に選んだのは、すべてはここから始まったデビュー曲だった。しんみり涙のエンディングと思いきや、シャンパンボトルを持った3人がヤンチャな笑顔でシャンパンの掛け合いを。シャンパンを祝杯のように豪快に飲み干す姿は、まるで宝物の戦果をたくさん手に入れた海賊のようで見ているだけで思わず笑顔になってしまう。最後までKAT-TUNらしさたっぷりな終わり方だ。スクリーンのエンドロールに流れたのは、メンバー6人のクレジット。四半世紀、KAT-TUNとして生き、数々の伝説を生み出した彼らを称えるような盛大で華やかで美しい花火の光景。そして、燃えさかる柱のセットなど最後の最後まで目に焼き付くような驚かされる怒涛の演出。そこにいる誰もがKAT-TUNと同じ時代を生きられた喜びを噛みしめられるような解散ライブだった。

取材、文・福田恵子

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