
上條一輝『ポルターガイストの囚人』
以前から、加味條名義でWebメディア〈オモコロ〉で楽しい記事を執筆してきた上條一輝さん。
超常現象に挑む2人組の試練。話題のホラーシリーズ第2弾。
「もともとホラーや怪談も好きで、一度〈オモコロ〉で『おかんぎょさま』というホラー系の記事を書いたところ、それが広く読まれた手応えがありまして。そのタイミングで創元ホラー長編賞が新設されたと知り、小説を書くことにしたんです」
応募作『深淵のテレパス』は見事受賞して昨年刊行されるや話題に。『このホラーがすごい! 2025年版』と「ベストホラー2024」の国内部門で第1位に輝いた。同作に続くシリーズ第2弾が、新作『ポルターガイストの囚人』。動画〈あしや超常現象調査〉を配信する芦屋晴子と越野草太の活躍が描かれる。
「第1作と同じく、超心理学をテーマにしようと思って。超心理学は大きく分けてテレパシーなどのESPと、手を触れずに物を動かす、いわゆるサイコキネシスのPKに分かれますが、第1作でESPを扱ったので、今回はPKを取り上げました」
俳優の東城は、とある事情で実家の古い一軒家で暮らし始める。すると誰もいないはずの2階で物音がしたり、明かりが急に消えたり、姿見が動いたり…。弱った彼が調査を依頼したのが、晴子たちだ。
晴子と越野のスタンスは独特で、超常現象を全肯定も全否定もせず、物理的かつ合理的な方法で現象の収束を試みる。この二人の言動がなんともユーモラスで楽しい。
「1作目の時から、怖いだけではなく楽しい読み物にしようと思っていました。ただ、そうすると怖さが損なわれるので難しいんですよね」
いやいや、十分怖い展開が待っている。独自の対策法で現象が収まったと思った矢先、東城が失踪。さらに、晴子と越野の周囲で奇妙な現象が起き始める。物語は越野の視点と、姿を消した東城の視点を交えて進む。はたして彼らが遭遇しているのは、オカルトなのか、ヒトコワ(「人が怖い」の意)なのか。
「ミステリー的なプロットでもあるので、最終的に晴子たちが謎を解き明かさなきゃいけない。リアリティラインから大きく逸脱しないように気をつけましたが、終盤は勇気をもって踏み越えたところがあります」
と言うように唖然とする展開が待っている。一度ページを開いたら、結末を見届けるまで一気読み必至だ。
上條一輝さん
Profile

かみじょう・かずき 1992年生まれ。会社員の傍ら、Webメディア〈オモコロ〉にて加味條名義でライターとして活動。昨年『深淵のテレパス』で創元ホラー長編賞を受賞し、小説家デビュー。
『ポルターガイストの囚人』
Information
映画宣伝会社勤務の傍ら〈あしや超常現象調査〉を配信する晴子と越野。ポルターガイストに悩む依頼人が失踪した真相とは? 東京創元社 1870円
anan2455号(2025年7月16日発売)より
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MAGAZINE マガジン

No.2455掲載
夏の推し旅 2025
2025年07月16日発売
海、美食、動物、かき氷、アートなど「大好き」なもの=“推し”を追い求める癒しの旅を案内する特集。夏といえばの沖縄は、那覇&本島西海岸のエリア別解説のほか、久米島、西表島という2つの離島もフィーチャー。他に「大人の夏休み」として、埼玉・長瀞の涼を求めて日帰り旅、栃木・那須で自然に触れる“大人の林間学校”、岡山で今が旬のフルーツとアートを楽しむ旅、北海道・トマムで雄大な自然を満喫する旅など、この夏おすすめの旅先をご紹介します。 ※ anan2455号POPver.(通常版)と、MODEver.(特装版)は表紙・掲載グラビア(Mrs. GREEN APPLE)・バックカバー・価格が異なり、その他の内容は同一です。