
anan2447号 湊かなえ『王国』第1回
多くの読者が新刊を待ち望む、今、ミステリー界をけん引する作家・湊かなえさん。ananで新連載を開始(2447号~)するにあたり、特別にインタビューのお時間をいただきました。現れたご本人はとても柔らかい雰囲気で、にこやかな素敵な方! 温かな表情で、いよいよ始まるとてつもない!? 物語についてお話くださいました!
私の小説の読者の方って、ちょうど『告白』が出た頃に私と同年代であった30代、40代の方たちが、ずっと読んでくれているという印象があるんですね。そうしたメインの読者の方が私と一緒に年齢を重ねて50代になったこともあって、介護をテーマにした『C線上のアリア』を書きました。連載媒体が、朝日新聞の朝刊だったので、割と高齢の方も新しく読んでくださいましたが、今度は『anan』ということで、また、これまでとは違う読者の方との出会いの場になりそうだと嬉しく感じています。小説誌ではないので、本に興味がない人にも読んでもらえるといいなとも。

笑顔をたやさず、読者や作品について語る湊さん。
私が中学校の時に、『anan』と『non-no』の人気が大爆発していて、特に『anan』は、おしゃれな女の子が買っている憧れの雑誌でした。そこから今に至るまで、休刊になる雑誌もある中で、ずっと継続していて、常にその時代の新しいものが載っているところがすごいなと思います。いつの時代も10代など若い子たちがお洒落雑誌デビューをする媒体、大人の入り口のようなイメージがあります。
そして、『anan』にはアイドルの方もいっぱい載っていますよね。その方たちを目当てに買った人が今作を読んだ時に、自分の好きなアイドルを思い浮かべながら読める話にしたら、楽しんでもらえるのではないかと思ったんです。そういう作品をあまり書いたことがなかったので、また新しい挑戦ですね。
登場人物の姿を想像するのが小説の魅力。自分の推しメンで想像してみてほしい
── 「王国」の大きなテーマの一つが「海」。湊さんにとってはどんな存在なのでしょうか。
やっぱり、カッコいい男の子といえば、海ですから(笑)。反町隆史さんや竹野内豊さんが出ていたドラマ『ビーチボーイズ』もありましたけれど、男同士の友情や仲間とか、そういうものが生まれる場所は、海なのかなと思いました。あと、自分がずっと、島で生まれて暮らしていたり、大学生の時に西表島でスキューバーダイビングのライセンスを取って、海外協力隊としてトンガに行っている時に潜った経験もあって、自分が過去に海で楽しんだ記憶も入れようと思いました。
明かされていく素顔によって、脳内登場人物の姿は変わっていくかも。オーディション番組のように楽しんで!
── 今作は、登場する9人の視点で、1人1章ずつ順番にバトンリレーをするように描かれていくそうですね。
ある人の章でパパッと出てきた人が、次の章から重要な役割で関わってくる、といったようなこともおきます。K-POPアイドルのオーディション番組を一時期見ていましたが、第一印象や見た目で誰かのことを好きだと思っても、パフォーマンスや日常生活での姿を見るうちに、“この子、いい子だな”と感じて他の人を好きになったりすることがあって。今作も、毎週、ちょっとずつ読むうちに推しが変化したりと、オーディション番組を見る楽しさに通じるところもあるのかなと思っています。おそらく、第1章では翔くんが人気だと思いますが、人物の視点が変わると順位も変動するのではないかなと。
きっと、読者のみなさんにもそれぞれ推しがいると思いますが、「このキャラは〇〇くんぽい」といったように9人が誰かと想像してみたり、脳内で自分にとってのゴールデンメンバーを作ってもらえたら。章が進むごとにメンバーチェンジをしても楽しいと思います。

今からでも追いつける! 連載小説『王国』の第1回を特別公開
profile

湊かなえ
みなと・かなえ 1973年、広島県生まれ。デビュー作の『告白』は2009年本屋大賞を受賞。「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。『贖罪』はエドガー賞候補となる。最新刊は『C線上のアリア』。