“沼っている10代”の素顔に迫る番組 プロデューサーが“沼る楽しさ”を語る

エンタメ
2025.02.25

番組キャラクター“ぬっしー”。沼の妖精で、沼底にあるダイナーのマスター。

大人顔負けの沼っぷりを見せる10代の素顔に迫るこの番組。チーフプロデューサーのお二人に、番組作りや沼る楽しさについて伺いました!

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2018年に番組開始。なぜ“沼”をテーマに?

2018年の放送開始以来、たくさんの個性的なハマったさんを取材&レポートしているこの番組。それぞれの10代が見せる〈沼〉への愛情や哲学に、見ている大人の胸も思わず熱くなる…。そもそもなぜ“沼”をテーマに番組を作ろうと思ったのか、そして沼っている人たちってどんな感じ? そんな疑問を、番組のプロデューサーの小暮真梨さんと石川 慶さんにぶつけてみました。

――NHKのEテレは教育番組を放送するチャンネルだと思いますが、そこで“沼”がテーマの番組が放送されているということに、正直ちょっと驚きました。

小暮真梨さん(以下、小暮):10代の人がなにかに夢中になっている、その情熱の強さを掘り下げる、みたいな番組を立ち上げようとしたときに、若い世代のトレンドに敏感なディレクターが「沼にハマるって言葉を使いませんか」と提案をしたそうで、それで番組タイトルに採用された、という背景があります。

――今でこそ沼が好きの意味を持つことは一般的ですが、10年前は、“会社の偉い人たち世代”にとっては、沼=汚いもの、という印象があったのでは…?

小暮:提案をしたのは若いディレクターで、議論を重ねつつも、結構すんなり決まったと聞きました。

石川 慶さん(以下、石川):たぶん上の世代もポジティブな言葉として捉えてくれたんじゃないですかね。というか、以前は沼に対しては先入観があったのですが(笑)、この番組で沼にハマる子どもたちを見るうちに、沼は、もしかしたら見た目はどろっとしているかもしれないけれど、ハマってみると実は底はきれいに澄んでいて、それこそ楽しさがたくさんある世界なんだ、ということを実感しています。彼らは沼から生える美しい睡蓮の花みたいなものなんじゃないでしょうか。

沼が深まると、日常生活が沼になる?!

――番組作りを通して、なにか発見はありますか?

小暮:まずは、“好きの力”というのはすごい、ということを、いつもひしひしと感じています。そして好きの熱量が強い…つまり沼にハマっている深度が深い人ほど、好きなことと関係ない日常生活も沼化しているんです。

――日常生活が、沼化?!

小暮:例えば、以前登場してくれた忍者沼にハマっている子は、自分の家に帰るときに、一度通り過ぎて、周囲に人がいないか確認してからそっと家に入るとか…。

石川:自分は現代の忍者だと思って行動しているんですよ。あと、サンバ沼の子が、ブラジルの豆料理をよく食べているとか。

小暮:子ども番組の『おかあさんといっしょ』沼にハマっている高校生は、番組で歌われるたくさんの歌をほとんど覚えていて、例えば雲を見ると「あ、雲の歌あったな!」と思い出し、すぐに歌っちゃうらしいんです。つまり、日常生活のすべてが“おかあさんといっしょ沼”になってしまったという。個人的には“日常生活にこんな影響が”というところこそが、沼への愛だと思うので、積極的に番組で紹介したいと思っています。

沼は世界を広げ、自信をつけてくれる。

――沼にハマる良さ、楽しさとはなんだと思いますか?

石川:10代という多感な時期ということもあるかもしれませんが、彼らを見ていると、好きなことに関してとにかく知りたい、詳しい人から話を聞きたい、別の角度からもっと知りたい…となって、どんどん世界が広がっていっている印象があります。感動を重ねて好奇心を満たすことも喜びでしょうし、その“世界が広がる”ということ自体もとても楽しそう。

小暮:好きなものがあるっていうのは、自信につながるんだな、と思いますね。彼らを見ていると、「これが好きだから、自分は大丈夫だ」という自信を感じますし、その佇まいはとてもかっこいい。10代でそれを見つけているということが、さらにかっこいいです。

石川:全員がすごく明るいというわけではないし、喋りが苦手だったり、おとなしい子もいます。でも全員、内側にすごく輝きを持っていて生き生きしているんですよ。

小暮:正直、大人の私からすると、羨ましいなと思うことがたくさんあります(笑)。ananの読者世代の方も、この番組を見て、10代のハマったさんからエネルギーをもらってくれたら嬉しいですし、もしかしたら自分の中にもそういう想いが眠っているのかも…と、気づいてもらえたら、制作陣としてはさらに嬉しいかもしれません。

石川:好きなものを掘り下げ世界を広げる力は、人生のいろんな場面に応用できると思いますからね。

番組に登場した“ハマったさん”たち

父のようなピッツァ職人を目指す小学生の修業の旅。(2025年1月放送)

鍵盤ハーモニカにハマった中学生が憧れの師匠とセッション!(2024年6月放送)

チーズにハマった19歳がチーズ作りに奮闘。(2024年11月放送)

裏方も愛する高校2年生と、力士を目指す小学6年生が登場の回。(2025年2月放送)

PROFILE プロフィール

小暮真梨さん

チーフプロデューサー。小さい頃からあまりなにかにハマるという経験がないそうで、「今も沼はありません。持ってみたい!!」。

石川 慶さん

チーフプロデューサー。自身は登山とアニメが好きだそうですが、「正直趣味の範囲で、沼と言えるほどではないですね(苦笑)」。

INFORMATION インフォメーション

『沼にハマってきいてみた』

NHK Eテレにて、毎週土曜20:00~放送中。NHKプラスで見逃し配信も実施中。

取材、文・河野友紀 ⒸNHK

anan 2435号(2025年2月19日発売)より

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No.2435掲載2025年02月19日発売

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