凛然(りんぜん)~自らの価値観を貫き、凛と生きる姿は憧れの的。
精神的な魅力も色気のあり方の一つとして考えられている今の時代において、知性もまた色気を醸し出す要素。
「自分の考えを持ち、周りも尊重しながらそれを言葉にできる賢さや想像力、そして発言と行動に矛盾がなく一貫性がある人柄…そんな知性を備えた人は性別を問わず好ましい存在です。成熟した魅力を持つ人として、年下の人から憧れられることも多いでしょう」(臨床心理士・塚越友子さん)
その成熟の境地に少しでも近づくためにできることは?
「それで言ったら、自分を貫くこと。勉強でも仕事でも何かに真剣に向き合うことは己の未熟さを実感することですが、それを受け入れてやり通すことで芯の強さが備わり、成熟に近づく。簡単に同調しないことも大事ですね。ランチで周りがパスタを頼んでも、自分の好きなものを選ぶ…なんてこともその一つ。情報があふれ、自分らしさを見失いがちな今だからこそ、凛とした姿に人は色気を見出すのかもしれません」
お話を伺った方 塚越友子さん
臨床心理士、公認心理師、博士(臨床心理学)。東京中央カウンセリング主宰。心身の調子を壊した過去や、元銀座No.1ホステスという経歴、そして最新の知見を踏まえた安心感のあるカウンセリングに定評あり。
工藤遥「似合うものが見えてきた今、背筋を伸ばして堂々といられる」
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気品さえ漂う微笑み、存在感あふれる立ち姿。その佇まいから知的な色香を放つ工藤遥さん。そう本人に伝えると「あはは…黙っていれば、そう見えるかも?」と快活に笑う、そのギャップもまた魅力。
「今日の撮影テーマを聞いて、まっさきに思い浮かんだのが『ドクターX』シリーズの米倉涼子さんと内田有紀さんです! その大人の余裕と知性に憧れます。色気って決して露出とか性的なことでなく、人生経験を重ねて酸いも甘いもかみ分けた方に備わっているものだと思っているので」
10代前半からステージに立ってきた工藤さん。25歳を迎え、ここまで自分が経験を重ねてきたことを実感できる場面が増えてきたという。
「表面的なことですが、私ずっとパーソナルカラーをイエベだと思ってきたんですけど、最近はブルベに合うといわれる黒髪も似合うようになったなと思ってきて。今日の青みリップも鏡を見たら似合っていて、『いけるじゃん!』ってうれしくなりました。苦手意識のあったスタイルがしっくりくるようになったのは、色んな髪型や服装を経験して自分をわかってきたからかなって。だからこそ自然と背筋も伸びて、堂々としていられる。そう、姿勢も凛とした色気には欠かせない要素ですよね。今日の撮影中も背筋を伸ばすことを意識して臨みました」
アイドルから俳優にシフトチェンジして約6年。特撮からシリアスな作品まで出演する守備範囲の広さと、それにともなう表現力の豊かさもまた工藤さんの持ち味。そのなかで一番色気を感じた役は…?
「2022年、WOWOWのドラマ『ダブル』で演じた、アイドルで俳優としても活躍する女の子、今切愛姫(いまぎれ・あき)です。彼女の設定は私と重なる部分も多いけど、それでも難しい役でした。硬い鎧に包まれているけど内面は脆い…。その儚い内面性に色気を感じて、それをどう表現するか考え、仕草を工夫しました。例えば、相手の目を一回見てから行動に移すとか、会話と動きのテンポをゆっくりにしてみるとか。まだ私は意識的にやらないと、できないんですけどね(笑)」
役を通じて色気を研究して、感じたことは「色気を身につけるための近道はない」ということ。
「結局は時間をかけて経験するしかないと思います。恋愛も仕事も、すべてにおいて経験することが自分の内面を作る。もっと言うと、色気はある程度傷を負った末に辿りつく境地だとも思います。傷つくことを避けて生きていけば、わがままさや傲慢さが勝ってしまうかも。傷つくことや失敗することをネガティブにとらえず、自立した大人になりたいな」
そんな目指す大人像を具体的に言うと「どんなお店でも素敵に“おひとりさま”できる人」なのだそう。
「一人でもパーソナルスペースを保っていられるのは、確固たる自分あればこそ。となると“自分を持っている”って知的な色気の根源かもしれません。個人的にはそろそろ長く愛せる逸品を身につけたい気持ちも高まってます。実際はネットショッピングでセール品ばかり見るほうですけど(笑)」
最近は友人の結婚などで、本格的に大人になりつつあることを実感する日々。
「周りの変化を受けて私もなりたい大人としての姿を想像してみると…それは自分に合うものを選ぶ眼と、それを長く愛せる心を持っている人かなって。上質なものを愛用し続けることは、経験にも自信にも、色気にも繋がるはずだから。『ドクターX』のお二人もきっとそうですよ!」
PROFILE プロフィール
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工藤遥
くどう・はるか 1999年10月27日生まれ、埼玉県出身。2011年、モーニング娘。に10期生として加入。2017年に卒業した後は俳優として活躍の幅を広げている。ドラマ『いきなり婚』(日本テレビ系)出演中。
写真・永野恭平(TRON) スタイリスト・金田健志 ヘア&メイク・伏屋陽子(ESPER) 取材、文・大澤千穂
anan 2435号(2025年2月19日発売)より