尼子騒兵衛「いつ観ても、変わらない乱太郎たちにホッとできる」 劇場版アニメの楽しみ方

エンタメ
2024.12.22

原作漫画『落第忍者乱太郎』の生みの親、漫画家の尼子騒兵衛さん。誰よりも乱太郎たちを考えてきた尼子さんに、劇場版アニメ『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』の楽しみ方を聞きました。

【原作】尼子騒兵衛「いつ観ても、変わらない乱太郎たちにホッとできる」

TVアニメ『忍たま乱太郎』は1993年から放送が始まり、30年以上続く人気作。大人から子どもまで、年齢性別問わず幅広い世代から人気の国民的キャラクターに育った乱太郎たちについて、原作者の尼子騒兵衛さんは次のように語る。

「原作を描き始めたのが1986年。広告会社に勤めながら漫画を描いていたので大変でしたが、いつか乱太郎たちが私に親孝行してくれるだろうと思いながらサラリーマンと漫画家の両立を続けていました。アニメ化が決まった時には当時の上司たちに“どうせ1クールで終わるだろう”と言われていたのですが、結局30年以上も続いてあらビックリという気持ちです(笑)。以前は“親子で観ています”と声をかけていただくことが多かったのですが、最近は“孫と観ています”と言われることも。嬉しいです」

そんななか、13年ぶりに劇場版アニメの新作が作られることに。製作決定を聞いた時、率直にどう思ったのだろう。

「前々からまたやりたいねという話はしていましたが、なかなか実現できず。そうしたらある日突然、松竹さんから“『小説 落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師』を劇場版でやりますよ”と連絡をいただきました。さらに“子どもだけでなく、大人が観ても見応えのあるものを作りたいんです”と言われて、これは本気だなと感じ、ぜひお願いしますと答えました。原作・脚本の阪口(和久)さんは、忍術や時代考証についてガチな方。私もアスタントの子と“一度、かっこよく忍者している姿を描きたいね”という話はするんです。だって、忍者ってかっこいいじゃないですか。でも元々がギャグ作家なので、自分では描けない。そこを阪口さんが書いてくださいました。ただ、阪口さんは真面目すぎるところがあるんですね(笑)。劇場版にするにあたって、藤森(雅也)監督がいい感じにギャグの要素をブレンドしてくださって。さらに面白くなっていると思います。脚本を読んだ時に、これはいけると感じました」

劇場版で一番楽しみなシーンは?

「まずはもちろん、アクションシーンですよね。オリジナルキャラクターがどんなふうに動くかも楽しみ。それから、原作より山田利吉の出番が増えていて、山田先生との親子関係が見えるところも楽しみです。あと、ほんの一瞬ですが、原作にもTVアニメにも出てきていないシーンがあって。あれは、観た方は絶対泣くんじゃないかと思います。そういうところも入れてくださっているのが、藤森監督のすごいところなんですよね」

子ども向けTVアニメとして始まった『忍たま乱太郎』だが、今では大人からも厚い支持が。幅広い世代から人気の作品に育った理由を次のように考える。

「30年間ずーっと続いている作品なので、ちょっと離れた期間があっても、久しぶりに見たら変わらない乱太郎たちの姿にホッとできるのでは。私も変わらないことを大事にしたくて、原作でも、流行を追わないよう意識していました」

大事にしているポリシーはほかにも。

「まず、惚れた腫れたは扱わない。あとは礼儀を大切にする。乱太郎たちは、目上の人に対しては絶対に敬語を話すんです。きり丸も普段の一人称は『俺』ですが、先生や目上の人と会話する時は『僕』と言う。ちょっとやりすぎでは? というくらい、礼儀を大切にしています。アニメのシナリオ監修も、そういう部分を特に気をつけてチェックするようにしています。と言っても、最近はアニメスタッフさんもわかってくださっているので、私から修正指示を入れることはほとんどないんですけどね」

今回の劇場版で、新たにファンになる人もきっと多いはず。今後の『忍たま』シリーズはどうなっていくのだろう?

「2019年に私が病気をして、連載を続けることができなくなって。でも文章は書けるので、今はアニメで私がプロットを書く回を作っています。表には出していないキャラクターたちの設定はまだまだあるので、今後もそういった形でご紹介していけたらと思っています」

PROFILE プロフィール

尼子騒兵衛

あまこ・そうべえ 漫画家。1986年から2019年まで朝日小学生新聞にて漫画『落第忍者乱太郎』を連載。’20年から3年間、朝日小学生新聞にて、乱太郎たちが古典の面白さを文章とイラストで伝えていく物語を掲載。

INFORMATION インフォメーション

忍たま乱太郎

尼子騒兵衛のギャグ漫画『落第忍者乱太郎』を原作とし、NHK Eテレで放送中のTVアニメ『忍たま乱太郎』。舞台は戦国時代。猪名寺乱太郎は友だちの摂津のきり丸、福富しんべヱたちと共に、忍者のたまご=“忍たま”として、一流の忍者を目指し忍術学園で勉強中。しかし、試験も授業もうまくいかずドジばかりで…というストーリー。1993年の放送開始以来、幅広い世代から親しまれ、2011年と’13年には実写映画化、’10年から現在まで2.5 次元ミュージカルも上演されるなど、多方面に展開。今回の『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』は、13年ぶり3度目のアニメ映画。ファンの間で人気の小説を原作とした今までにないシリアスな物語だ。

乱太郎たちの担任・土井先生がある日消息を絶ってしまった。捜索を続ける忍術学園の生徒たちの前に、土井先生に瓜二つなドクタケ忍者隊の冷徹な軍師・天鬼(てんき)が現れる――。12月20日(金)から全国公開。

『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』公式サイト

取材、文・井上明日香 Ⓒ尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会

anan 2427号(2024年12月18日発売)より

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