【監督】藤森雅也「劇場版だからこその映像や展開を楽しんでもらえたら」
第1期から約20年、キャラクターデザインを担当し、2011年の劇場版の監督を務めた藤森雅也さんが、今作も監督として『忍たま』たちを動かす。
「実は、原作小説を最初に読んだ時の印象は『これを映画にするのは難しいんじゃないか』ということでした。ファン向けの小説としてはすごく面白かったのですが、尺的にも短いし、一年は組があまり活躍しない内容だったからです。何か事件が起きた時に皆で助けに入るのが一年は組だと思うんです。原作にはそこが描かれていなかったので、映画は、一年は組をひとつの軸にしたいとお願いしました。シナリオ作りだけで半年くらいかかりましたね。あとは、自分も『忍たま』から離れてしばらく時間が経っていたので、キャラクターの関係性とか設定を復習するのにも時間がかかりました」
ほかにも、TVシリーズに初期から携わっている藤森さんだからこそのこだわりも随所に光る。
「TVアニメは1話10分という短い尺なので、コント的な感じで作ってもいいんですよ。ある意味、舞台でお笑いをやっているような作り方なんですよね。背景も書き割りっぽい描き方をしていますし。一方で映画は時間や空間をきっちり構築しないといけない。今回、忍術学園の全景って誰も見たことがないねという話になり、今回の劇場版用として作ったりもしています。そういうところにも注目してもらえたら嬉しいです。反対に、シリアスな映画だからといって、キャラクター観が変わるようなことはしないようにしています」
幅広い世代のファンが劇場版の公開を楽しみにしている。
「子ども向けの作品を作る時は汚い言葉を極力使わないようにしようと意識しています。逆に、難しい言葉を易しく言い換えるなどの子ども騙しもしない。今回の劇場版では、一年は組はいつも通りかわいらしいですが、土井先生をはじめ大人組の表情や行動が丁寧に大人っぽく作られています。TVシリーズとはまた違った彼らの側面が見られると思うので、楽しんでいただけたら嬉しいです」
【脚本】阪口和久「天鬼は土井先生と正反対のキャラクターにしようと」
原作小説の著者であり、劇場版の脚本も担当している阪口和久さん。そもそも、今回の物語はどういうきっかけで生まれたのだろう?
「僕は『忍たま乱太郎』のTVシリーズと、ミュージカルのシナリオも書かせてもらっていたんですが、ある日、勢いに任せて尼子(騒兵衛)さんに『忍たまの小説を書きたいです』と言ったのがきっかけです。昔からずっと小説を書いてみたいという気持ちもあったんです。尼子さんからは『ジメジメした話ではなく笑えるものを書いてください』と言われていたのですが、ご期待に沿えず、シリアスな展開になりました(苦笑)。でも、終盤は書きながら涙を流すくらい入り込むことができて。評価は人それぞれありますけども、自分としては書ききった感じがしました」
物語のテーマやあらすじ、天鬼(てんき)の設定はどのようにして作っていったのか。
「どんな物語にするかは全く決まっておらず、四苦八苦しながら考えました。土井先生か山田先生が行方不明になるのがいいかな。でも山田先生だと強すぎて、あっさり話が終わっちゃいそうだな。土井先生をメインにすれば、きり丸との関係も盛り込めるかな…などと考えて。天鬼のキャラ設定については、とにかく土井先生と正反対にしようと思いました」
小説から映画の脚本にする際に、改変した点も多々あるよう。
「映画化にあたり、藤森監督から『一年は組をもっと活躍させたい』と言われました。そもそも出演者が限られているミュージカルの流れで書いていましたし、僕の腕ではキャラを増やしすぎるとうまくまとめることができなくて、小説には一年生が乱太郎、きり丸、しんべヱの3人以外はほぼ出てこないんです。ですが、映画として楽しんでいただくためには、一年は組の出番をもっと増やして、全体的に明るい要素も増やしたほうがいいだろうと言われ、内容も一部改変しました。アフレコで映像を拝見した時に、まさに監督の意見は正しかったんだと思いました。映画として素晴らしいものになったと思っています」
PROFILE プロフィール
藤森雅也
ふじもり・まさや アニメーター、アニメ演出家、監督。『忍たま乱太郎』では第1期からキャラクターデザインを担当。今作では13年ぶりに劇場版『忍たま』の監督を務める。
阪口和久
さかぐち・かずひさ 1994年から『忍たま乱太郎』のTVシリーズの脚本を担当。またミュージカル『忍たま乱太郎』の舞台脚本もこれまでに7作担当している。
INFORMATION インフォメーション
忍たま乱太郎
尼子騒兵衛のギャグ漫画『落第忍者乱太郎』を原作とし、NHK Eテレで放送中のTVアニメ『忍たま乱太郎』。舞台は戦国時代。猪名寺乱太郎は友だちの摂津のきり丸、福富しんべヱたちと共に、忍者のたまご=“忍たま”として、一流の忍者を目指し忍術学園で勉強中。しかし、試験も授業もうまくいかずドジばかりで…というストーリー。1993年の放送開始以来、幅広い世代から親しまれ、2011年と’13年には実写映画化、’10年から現在まで2.5 次元ミュージカルも上演されるなど、多方面に展開。今回の『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』は、13年ぶり3度目のアニメ映画。ファンの間で人気の小説を原作とした今までにないシリアスな物語だ。
乱太郎たちの担任・土井先生がある日消息を絶ってしまった。捜索を続ける忍術学園の生徒たちの前に、土井先生に瓜二つなドクタケ忍者隊の冷徹な軍師・天鬼(てんき)が現れる――。12月20日(金)から全国公開。