再演ですが初参加の方々もいて、違うお芝居になるかもしれません。
「基本的にヨーロッパ企画って、みんなでエチュード(即興劇)をやって、そこで生まれたものをベースに作・演出の上田(誠)さんが作品に仕上げていくやり方をしていて、当時は作ることにとにかく必死でした。ただ、京都で生まれ育って、子供の頃からテレビで吉本新喜劇を見ていた私にはなじみある世界観で、“ごっこ遊び”みたいで楽しかったですし、お客さんがたくさん笑ってくださり、コメディをやる楽しさを実感した作品でもあります」
買い物用ドローンで東京から串カツを買いに来る常連客がいたり、AI搭載の炊飯器が将棋の相手をしたりと愉快な未来が描かれる。
「テクノロジーを題材にしながら、実際は炊飯器は自分たちが開けたり閉めたりしているし、ロボットはラジコンだし。でもそれが演劇的面白さで見どころでもある気がします」
初演時は客演として参加していた藤谷さんだが、その後劇団員となり、今回再び同じ役を演じる。
「前回は、私と劇団員のみなさんとの距離感が、ちょうど串カツ屋の常連のオッチャンたちとマナツちゃんとの距離感に近かったんです。でも今は劇団員ですから、そこの距離感も微妙に変わる気がしていて、いい方に作用するよう作っていかないとと思っています。私のお父さん役の板尾(創路)さんをはじめ初参加の方々がいたり、役が変わった方もいて、もしかしたら初演とは違うお芝居になるかもしれないですし」
取材中、劇団愛や劇団員愛を熱く語りすぎて「ちょっと気持ち悪いですよね(笑)」と苦笑いする場面も。
「初めて小劇場で観た演劇がヨーロッパ企画だったので、自分にとって演劇の原風景がこの劇団なんですよね。単純に上田さんの作る世界観が好きだし、それを説明せずともわかって演じられる劇団員のみなさんは本当に面白い。本公演のたびに劇団員になってよかったと思うし、他の作品に携わらせてもらうと終わって解散するのが寂しい。劇団という帰ってこられる場所があるのが自分には合っているんだと思います」
ヨーロッパ企画第43回公演『来てけつかるべき新世界』 2016年に初演し、岸田國士戯曲賞を受賞した作品を8年ぶりに再演。マナツ(藤谷理子)が串カツ屋を営み暮らす大阪・新世界の片隅に、ドローンにロボット、AI…テクノロジーの波が押し寄せる! コッテコテの大阪人情物語とSFがまさかの邂逅。9月19日~10月6日 東京・本多劇場 作・演出/上田誠 音楽/キセル 出演/石田剛太、酒井善史、角田貴志、諏訪雅、土佐和成、中川晴樹、永野宗典、藤谷理子、金丸慎太郎、町田マリー、岡田義徳、板尾創路 [平日]7500円 [土・日・祝日]8000円 [U25シート]2500円(前売りのみ) サンライズプロモーション東京 TEL:0570・00・3337 京都、大阪、名古屋などその他12都市で上演。
ふじたに・りこ 1995年8月6日生まれ、京都府出身。2016年(『来てけつかるべき新世界』初演)よりヨーロッパ企画に客演し、’21年に劇団員に。昨年、映画『リバー、流れないでよ』で映像作品初主演。
ブラウス¥36,000 パンツ¥46,000(共にミントデザインズ TEL:03・6450・5622)
※『anan』2024年8月28日号より。写真・土佐麻理子 インタビュー、文・望月リサ
(by anan編集部)