阪元監督も交えて鼎談!
二人が演じる『ベビわる』バディ、ちさと×まひろの魅力。
写真右・髙石あかりさん、左・伊澤彩織さん
――お二人は阪元監督が以前に制作した『ある用務員』でもバディを演じています。
髙石:その撮影時に“二人のスピンオフを作りたいね”という話が出ていて。それから数か月後に『ベイビーわるきゅーれ』のお話をいただいて、本当にできるんだ! と驚きました。主演は大きいものでしたけど、伊澤さんは物腰がすごく柔らかくて、人当たりも優しくて、初めて会った時にすごく空気感が合うなと感じていたからこそ、素直に一緒にやりたいなと思いました。
伊澤:私は、それまでアクションスタッフとしての仕事がメインだったので、主演に対して、すぐに「やりたいです」と言えなくて。当時は自分に自信がなく、作品に出演することを悩んでいた時期でもあったんです。でも、結果的に『ベイビーわるきゅーれ』がなかったら、どんな人生になっていたかわからないと思うくらいに、見られなかった景色を見せてもらっています。映画2作目の公開初日、舞台挨拶の時に3人で見た上映後の拍手の嵐は忘れられません。
――髙石さん演じるちさとは社交的で、ややおおざっぱ。一方、伊澤さん演じるまひろは、社会に馴染めない性格ながら、抜群の身体能力を持つ人物です。そんな二人のバディの魅力とは何だと思いますか?
髙石:お互いにないものを持っていて補い合っているというか。たとえば、まひろは社会不適合者と言われていて…、なんだっけ…。(考えてから)パスします。
伊澤:(笑)。まひろにはないものを、ちさとは持っていて。だからこそ1作目の時は卑屈になったりもするけれど、“それでもいい”と受け止めてくれる。そして、2作目では当たり前のように二人がセットでいる。しかも、バディ対バディの戦いが描かれることもあり、余計に二人が一つになるんです。そして、3作目『ナイスデイズ』では、“自分はひとりじゃない”ということがわかるというか。まひろがちさとにだけ見せる表情があるんですけど。それは、髙石あかりという、私が何をしても許してくれる存在にだからこそ見せられるもので。……。(考えて)一回、どうぞ。
髙石:(笑)。ちさととまひろの前に髙石あかりと伊澤彩織がいて。その関係性がキャラクターにも影響していると思います。だから、私たちがここまで心を通わせていなければ違うバディになっていただろうし、私たちが二人を近づけたのかなと。そんな役への自信みたいなものも魅力として映っている気がします。…ギリギリだったな。交代交代でようやく答えられたな(笑)。
伊澤:本当だね(笑)。
阪元:脚本を書く時、二人に関しては、だんだん妄想ではなく本当にいる人たちを書く、という感じでしたね。ずっと、“このセリフはどっちが言うんだろう”と悩みながら脚本を書いていましたけど、3作を経た後のドラマ撮影では、「これはちさとが言った方が面白いな」とか、見えるようにもなりました。長かったですね。
――今日の撮影中もポージングなど息がぴったりでした。作品を重ねたことで、よりテンポが合う感覚はありましたか?
髙石:撮影はもちろん、普段も不意にやった動きが一緒になったりとか。伊澤さんが感じていることや、お芝居で次にこうするかな、みたいなことは、わかるようになったのかなと。予想外のことをされて、「あれれ!?」みたいなこともありますけどね(笑)。3作目『ナイスデイズ』の終盤のとあるシーンもそうでしたけど。
阪元:あれは、びっくりしたね。演出した身としては重いシーンになると思っていたら、逆だったというか。でも、結果的にすごくよかったなと思っています。
伊澤:あかりちゃんは、私が何かしても、ちゃんと受け入れてノってくれるので。おかげで最高のシーンになりました。
阪元:「何してんの?」みたいに言う人もいそうだもんね。クリストファー・ノーラン監督なら怒ってるかもしれない(笑)。
――『ベビわる』の魅力の一つがアクションです。『ナイスデイズ』は、連携プレーが満載でパワーアップした印象がありました。
阪元:もともと『ベビわる』では、伊澤さんの高い身体性を生かしたアクションを、やれるだけやりたいと考えていました。たとえば、ジャッキー(・チェン)はガードレールを飛び越えるだけで身体性のすごさが伝わってくるところが面白いんですけど、伊澤さんも、“なんだ、今の動き”みたいなことを、さりげない日常のシーンでもやってくれるんです。そして今作では、ずっとアクション監督をやってくださっている園村(健介)さんが、すごくバディを意識した動きを作り上げてくれて。
伊澤:たとえば、ちさとが敵をいなしている隙に、私がその人から武器を奪ってパスをするところは、それぞれの状況を把握していなければできないことで。よりバディ感が強くなったと感じます。
髙石:バディであることを利用されて敵にいなされるシーンも面白かったですね。
伊澤:序盤に、私が盾にされてちさとが銃を撃てなくなるようなシーンがあるんですけど。それは、段取りの時に池松(壮亮)さんがアドリブでやった動きを見て、園村さんが「それ、いいね」となり、付け足されたものです。
阪元:「撃てない」という状況を、池松さんが作ってくださったんですよね。
――最後に、見どころを教えてください。
髙石:ちさととまひろの日常とアクションのギャップが『ベビわる』の魅力だと思いますが、今回、そこが前作を超えたものになっているし、これがニューヨーク・アジアン映画祭でアクション賞を受賞した作品か…! と思っていただけたら(笑)。あと、この作品は女性からの人気もすごいんですけど、理由の一つに、伊澤さんのかわいらしさとカッコよさのギャップもあると思っていて。ぜひ、惚れに行ってほしいです。
伊澤:まひろは20歳という設定ですが、私はいま30歳で、体やメンタルの揺らぎや心身の変化に敏感になっていて。そんな、多分、誰にでもある自分に自信がなくなる瞬間みたいなものを支えてくれた作品でもあったんです。だから、最近うまくいかないな、とか思っているような日に観てもらえたら嬉しいなって思います。
阪元:アクション映画は男性のもの、みたいな固定観念が作られてしまっていたと思うんですけど、『ベビわる』はそうじゃない気持ちで作れたらと考えていました。
伊澤:女性二人のアクション映画って、なかなかないですもんね。
阪元:だから、アクションを見せる女性バディが日本から出て、ニューヨークで評価をされたことは嬉しいし、デカいことだと思っています。自分としては勉強して、なるべく時代錯誤じゃないものを作っているつもりなので。女性の方でもノイズなく楽しめる作品だと思うので、観てほしいです。
『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』 プロの殺し屋ガールズコンビ、ちさととまひろのユル~い日常と、ガチなアクションバトルを描く映画シリーズ『ベイビーわるきゅーれ』。待望の3作目となる『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』が9月27日に全国公開(ロケ地となった宮崎は9月20日に先行公開)される。任務を終わらせて観光&バカンス気分を満喫しようと企む二人の前に、“史上最強の殺し屋”冬村かえで(池松壮亮)が立ちはだかり、死闘を繰り広げることに。また、秋には連続ドラマ『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』(テレ東系)も放送予定。監督、脚本は阪元裕吾。
たかいし・あかり 2002年12月19日生まれ、宮崎県出身。映画『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』が公開中。声の出演をする『きみの色』が8月30日、『スマホを落としただけなのに ~最終章~ファイナル ハッキング ゲーム』が11月1日公開される。
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いざわ・さおり 1994年2月16日生まれ、埼玉県出身。スタントパフォーマーとして『るろうに剣心 最終章』『ジョン・ウィック:コンセクエンス』などに参加。ゲーム『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』ではアクションコーディネーターを務めるなど活躍の幅を広げる。
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さかもと・ゆうご 1996年1月18日生まれ、京都府出身。代表作に大学在学中に手がけた『べー。』をはじめ、『最強殺し屋伝説国岡』『ある用務員』『黄龍の村』『グリーンバレット』など。『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』で、おおさかシネマフェスティバル新人監督賞を受賞。
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※『anan』2024年8月28日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・金田健志 ヘア&メイク・住本 彩 取材、文・重信 綾
(by anan編集部)