『【推しの子】』第2期がスタート! 制作陣が明かす、アニメならではのこだわり

エンタメ
2024.07.30
昨年、放送のたびにトレンド入りし、2023年を代表するアニメとなった『【推しの子】』。今月から放送がスタートした待望の第2期では、2.5次元舞台での熱い群像劇が繰り広げられる。アクアやルビーに負けないくらいの情熱を持ったアニメ制作陣のインタビューを通じて、新たなステージへと進むTVアニメ『【推しの子】』の勢いと魅力を追いかけました!

スタッフが語る『【推しの子】』第2期。

推しの子
推しの子

第1期から本作の監督を務める平牧大輔さんとキャラクターデザインの平山寛菜さんに、『【推しの子】』第2期のアニメならではのこだわりと楽しみ方を聞きました。

監督・平牧大輔さん

監督を務める平牧大輔さんは、日本中を席巻するほどの人気を得た第1期の反響に驚きながらも、元々のコンセプトは変えずに制作を進めていると語る。

「想定以上に視聴者の幅が広かったので、より退屈しないような映像作りを目指しています。一方で、『【推しの子】』のことは当初から連続ドラマだと捉えていました。便宜上、第1期、第2期と分かれていますが、第2期は第十二話からはじまりますし、“漫画では1コマで描かれているところを際立たせる”という基本的な演出の方針は変えていません」

『【推しの子】』では、赤坂アカさん、横槍メンゴさんの原作チームと密にやり取りが行われている。そのことで、第1期からアニメ作りのセオリーに縛られない制作ができたという。それは第十二話以降にも引き継がれている。

「自分の感覚――アニメ畑の人間がセオリーで考える構成と、原作チームの要望には、はっきりとした違いがありました。例えば、第1期第六話のラストは、黒川あかねをアクアが助けるところで終わります。アニメのセオリー通りに作るなら、アクアが助けるところは次回の冒頭まで引っ張ります。でも原作のおふたりは、アクアが救うところまで見せて、視聴者を安心させた上で次に進めたいと。それが現代的な見せ方だと思いましたし、うまくいきました」

物語の序盤は、2.5次元舞台「東京ブレイド」の原作者・鮫島アビ子が、舞台の脚本に全面書き直しを要求するところから混沌としていく。キーパーソンとなるアビ子の登場シーンも、アニメならではの仕掛けが施されたとのこと。

「アビ子を第十二話のラストに出したのも、現代的な見せ方を考えてのことです。スピード感として、物語のどんでん返しを中盤まで引っ張るのではなく、冒頭で“これからどうなるのか?”という山場まで見せてしまう。初登場シーンでのアビ子が、脚本を『ぜんぶ』変えたいと言うのですが、実は第十二話では怖い言い方に、第十三話では普通の言い方に変えています。そこは声色を細かく調整して“引き”を作りました」

原作チームや、脚本家の田中仁さんを含めて、アニメというメディアに沿って演出やエピソードをフレキシブルに変えていったという平牧監督。なかでも、「東京ブレイド」の物語は、原作以上に掘り下げられているようで…?

「『東京ブレイド』の内容は原作にはあまり描かれていないので、物語の流れは整理しました。また、アニメなので動きも演出も派手にしていますし、キャラにはウィッグやカラコンをつけて舞台らしいビジュアルに。ただ、そこをメインにすると、ただ舞台をやるだけで終わってしまう(笑)。あくまで、アクアやキャラクターたちの心の動きと彼らの世界で現実に起こっていることが本筋なので、(舞台上の)セリフにキャラクターの心情を重ねるようにしています」

「東京ブレイド」の幕が開くのはこれから。その見どころとは。

「原作者のアビ子と、脚本家のGOAをメインとした原作vs現場の対決、その決着を見守っていただければと。『【推しの子】』の謎に迫るという意味では、劇団ララライの代表・金田一の動向にも注目してほしいですね」

ひらまき・だいすけ アニメ監督、演出家。主な監督作にTVアニメ『私に天使が舞い降りた!』『恋する小惑星』『SELECTION PROJECT』など。

キャラクターデザイン・平山寛菜さん

原作『【推しの子】』のキャラクターをアニメ用にリファインし、さらに総作画監督としてキャラの表情や動きを監修する立場に就いている平山寛菜さん。その仕事と、『【推しの子】』におけるデザインのコンセプトとは?

「本作におけるキャラクターデザインとは、アニメとして動かす上で線量のバランスを変えたりしながら、アニメーターの方々が描きやすいように設定を起こす仕事です。アニメの作法的には、いろんな人が描きやすいように線を減らすのが一般的ですが、私はオタクなので(笑)、なるべく原作通りの絵で動いてほしい。なので、今回は線量も維持しつつ、さらに目の上に明るい色を追加して、まつ毛が際立つようにもしています。第1期をやり終えてその方向性がフィットしたと思えたので、きちんと作画にコストをかけてよかったなと思っています。現場の人には申し訳ない気持ちもありますが」

第2期では、アクアたちが2.5次元舞台「東京ブレイド」で活躍する。つまり、舞台用のデザインが新たに必要ということ…。

「新しいアニメを一から作る感じでしたね(笑)。第1期から登場するキャラを、別のキャラに描き替える必要があったので。本作では助監督の猫富ちゃおさんが色を決めているのですが、そこで髪色など全体のカラースタイルが原作とガラッと変わったのはありがたかったです。『東京ブレイド』のアクアは髪色が水色になったので、自然と差別化できました」

アニメ用のキャラデザインは、平山さんの監修の下、何名かで手分けして行われている。平山さん自身も、アクアやかな、第2期から登場する鮫島アビ子などを手掛けた。そのデザインは、原作の作画を担う横槍メンゴさんと話し合いながら進められたとのこと。

「アクアは髪の毛が伸びたので、ふわふわに見えるように、シルエット的に2段、3段と線がある形で描いています。有馬かなも設定自体は変わっていませんが、原作だとちょっと髪が短くなったというか、毛先がより内側に入っているので、アニメでも寄せました。新しく登場するアビ子は、原作の中で癖っ毛がめちゃくちゃ強いときと弱いときの振れ幅があるんです。その中間にしてほしいとのことだったので、アニメのデザインはそのように。あと、原作を見て気づいたのが、彼女は漫画に一点集中の子なので、身なりをそんなに気にしていない。なので、髪をボサボサ気味にしたり、眉毛を気持ち太くしたりしています。メンゴ先生のSNSを見ると、メイクやファッションの投稿が多く、こだわりを感じるので、そこはアニメにも随時反映していますね」

2.5次元舞台「東京ブレイド」では、舞台上で白熱のバトルが繰り広げられる。そこに当てられたキャストの迫真の演技も、映像に反映されているとのことで、それは大きな見どころになりそう。

「とにかく、アニメの演出が素晴らしくて、原作の魅力をさらにビジュアルや音、動きで盛っていると思います。総合芸術というか――例えば、(有馬かな演じる)ツルギ役の潘めぐみさんの演技もそうで。その声の迫力を聞いて、表情をもっとイケイケにしたり。大変ですけど、そういう作業が結果に繋がる作品だと思います」

ひらやま・かんな アニメーター、キャラクターデザイナー。主な参加作に、TVアニメ『彼女、お借りします』『SELECTION PROJECT』など。

【推しの子】 TVシリーズ第2期は毎週水曜23時~TOKYO MXほか全国35局にて放送中。各動画配信サービスでも配信中。
©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会

※『anan』2024年7月31日号より。取材、文・森 樹

(by anan編集部)

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