「カンパニー一丸となって総合芸術で見せていくものに」
「普段の生活では想像できないようなお話なので、この世の中にこんな発想をする方がいるんだって驚きました。自分が縮むこともですし、エピソードがすべて奇想天外です」
ステイシー以外の12人の被害者たちも、年老いた母親が98人に分裂したり、足に彫ったタトゥーのライオンに四六時中追いかけ回されたり、奇妙な出来事に悩まされる。ステイシーは最終的に61mmまで縮むそうだけど、それらを舞台でどう表現するのかも気になるところ。
「演出のG2さんの頭の中には、そこはすでに明確にできていて、これから現場で作り上げていくところです。G2さんがおっしゃっているのは、映像で表現するのは簡単だけれど、舞台だからこそできる見せ方や舞台ならではのお客様との一体感で立ち上がっていく世界を大事にしたいということ。振付と音楽とセットと照明と…カンパニー一丸となって総合芸術で見せていくものになってくると思います。私たち俳優としては、そのシーンに行き着くまでに、いかにお客様を物語の中に入り込ませることができるかも問われてくるのかなと思っています」
元の状態に回復する方法は、自ら見つけていかなければならない。
「事件に遭った人たちに起きる被害の内容がそれぞれに異なるんですが、それがなぜなのか、何を意図しているのか、よくわからないんですよね。解決の方法もひとりひとり違っていて、自分でそれを探さなきゃいけない。なかには成功する人もいれば、残念ながら回復しないままというパターンもあって、それを深読みしていく面白さもあります。でも物語の中心には、作中では“僕”として登場する夫とステイシーの夫婦の物語があって、ほっこりしたり、何か考えさせられたりする奥深い作品だと思います」
夫を演じるのは谷原章介さん。
「G2さんの意図として、ステイシーと夫との関係性をきちんと作っていきたいというのがあるようです。決定的に何かうまくいかないところがあるわけではないけれど、どこかすれ違ってしまっていてギクシャクしている。今の時点では、一歩間違えると仲のいいジャレ合いみたいにも見えてしまうから、そこはちょっと工夫してほしいと言われていますので、微妙なニュアンスを大事にしながら演じていきたいです」
花總さんというと、『エリザベート』や『マリー・アントワネット』などのタイトルロールを数多く演じてきたミュージカル界の至宝的存在。今作にも歌唱シーンはあるそうだが、近年は等身大の女性を演じる現代劇や、テンポのいい会話で展開されるドタバタコメディなど、さまざまなストレートプレイ作品に挑戦し、新たな魅力を開花させている。
「これまでミュージカルでは時代ものというか…歴史上の人物を演じることが多かったんですよね。そういう意味で言うと、ストレートプレイではこれまであまりやってこなかったような役柄にチャレンジさせていただくことが多いですよね。いつまでも同じ役をやり続けられるわけではないし、歌のないお芝居の奥深さをもっと知りたいとも思うんです。今できるときに新しいことにチャレンジしていかないと自分が臆病になっていっちゃいそうな気がするので、どんどん新しいことに挑戦して引き出しを増やしていきたいです」
『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』 銀行強盗に遭ってから、自分が少しずつ縮み始めていることに気づいたステイシー(花總)。8日後に自分は消えてしまうかもしれない、という状況に陥ったことをきっかけに、すれ違っていた夫(谷原)との関係も変化してゆき――。4月1日(月)~14日(日) 日本青年館ホール 原作/アンドリュー・カウフマン 脚本・演出/G2 出演/花總まり、谷原章介、平埜生成、入山法子、栗原英雄ほか S席1万1800円 A席9800円 U-25当日引換券5000円 公演事務局 TEL:0570・002・029(平日10:30~18:30) 大阪、名古屋公演あり。https://thetinywife.com/
はなふさ・まり 1973年2月28日生まれ、東京都出身。宝塚歌劇団在団中、トップ娘役として日本初演となったミュージカル『エリザベート』でタイトルロールを演じるなど、高い歌唱力と演技力で注目される。退団後も『レディ・ベス』『マリー・アントワネット』など数々の大作で主演を務めている。
ブラウス¥74,800 スカート¥57,200(共にジェイドット 自由が丘八雲店 TEL:080・3930・5171)
※『anan』2024年4月3日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・戸野塚かおる ヘア&メイク・野田智子 インタビュー、文・望月リサ
(by anan編集部)