右・石井(いしい)さん、左・新山(にいやま)さん。
――なぜ、今のタイミングで東京進出をしようと思ったのですか?
新山:『M‐1』も2年連続で最終決戦に行きましたし、来年は勢いがあるかもわからないですから。2022年から悩んでいたけど、昨年はまた違う爪痕を残せたのもあって今のうちにという感じです。
石井:東京に行きたい、という感覚はそんなになくて。かといって絶対に行かん! というわけでもなく。自分ら的にも周りとしても自然に、いい時期ちゃう? って。
新山:東京は家賃が高いですね…。働かないとあかんって思いました。
――順風満帆という感じですが、現在地をどう見ていますか。
新山:僕は、最初の想定に結構近いかもしれないです。結成10年くらいで『M‐1』で優勝したいと思っていたから、それに近いところで2位と3位を取れて、誤差の範囲かな、みたいな。一生、居酒屋で喋れる話もできたし、ある種成功していると思います。ただ、今はテレビもどうなるかわからんし、YouTubeがメジャーになったりと、いろいろ変わってきていて。以前は芸人さんが浮気の話をしていても否定されなくて、それでいけるんや! と思って芸人になったけど、今は違うし…。
石井:ふふふ(笑)。
新山:目標やゴールみたいなものが時どきの状況で相対的に変わるから、そもそもゴール地点ってどうなっていくんやろうって。
石井:僕は自分が今いる状況とかが、ゴールに着いてみないとわからへんという感覚が強くあるんです。先のことを考える力もなくて。ほんまにまだわからないですね。
――コンビ結成時のことを教えてください。
新山:余りもん同士の二人というか。同時期に前のコンビを解散し、他のみんなは誰かとコンビになっているからと、接点がないままコンビを組んだんです。
石井:同期やけど、マジで、ほんまに、舞台の袖とかで1回、会話をしたくらいでしたからね。もともと僕はボケやったけど、ツッコミをやりたくて前のコンビを解散して。そんな時にボケ希望のやつがいると聞き、トニーフランクという芸人が繋げてくれたんです。
――今年で結成10年になります。
新山:僕としては、ちょうど10年くらいですね。長いとか短いではなく、肌感覚ぴったりの感じです。
石井:そっか、10年やってるんや…。すごいっすね。僕は部活とか他の何かがこんなに長く続いたことがなくて。(新山さんは)ライブやネタのことを考えていて、僕はそれについてきてる感覚やったんで。もう10年か、が一番です。
新山:全然ちゃいますね(笑)。
――新山さんは、どんなふうにネタを作っているのでしょう。
新山:作業という感じでやっています。メモしておいた単語の中からテーマを決めて、設定を作って、4~5分のネタにする。淡々としてます。大阪にお笑いブロガーのおばちゃんがおるんですけど。いろんなライブを観ては、「さや香 免許返納」みたいに、ネタのタイトルだけをブログにいっぱい書いていて、その中から僕が引っかかったものをメモしていく。だから、おばちゃんがお笑いを見るのをやめたら僕らも終わりです(笑)。
――新山さんがネタ作りをしている間、石井さんはどんなふうに過ごしているのでしょうか。
石井:漫画の新刊待ち、みたいな感じですよね。先生にプレッシャーをかけることなく、とりあえず座って待っているというか。
――原稿を待つ編集者のような?
石井:そうですね。
新山:えー、読者でしょ(笑)。編集者っていうたらなんか…。
石井:だって、ただ読むだけではないし、ネタを見る側じゃないので。早めに欲しいけど、モチベーションは下げたくないですからね。
新山:じゃあ、編集者じゃなくて、せめて紙に印刷する人ですよね。
石井:(スルーして)だから何も言わずに待つ、という。
新山:ははははは。
さやか 石井(いしい)1988年5月28日生まれ、大阪府出身。新山(にいやま)1991年10月17日生まれ、大阪府出身。2014年結成。ネタでボケとツッコミが変わる。第49回NHK上方漫才コンテスト優勝。『M‐1グランプリ』2017年、2022年、2023年ファイナリスト。『さや香の違和館ヤバない?』(テレビ大阪、YouTube)が放送・配信中。
※『anan』2024年3月27日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) インタビュー、文・重信 綾
(by anan編集部)