女優の色気を見抜き、引き出した五社監督。
艶めかしい官能や鬼気迫る修羅場を描き、日本映画界の鬼才とも呼ばれる五社英雄監督。友近さんは、彼の作品に登場する、匂い立つような色香を携えた、人間味溢れる女性たちの姿に、長年、心を奪われてきたという。
「五社さんの作品に出てくる登場人物は男女問わず画面から色香が溢れているんです。それぞれの女優さんが持つ色気を引き出す手腕も見事だし、きっと、恋愛体質である女性を見抜くのもすごくうまかったんでしょうね。やっぱり、たとえ表には出さずとも、情熱的であったり、人への尋常ではない執着を見せる人には、自然に色気が宿ると思いますから。『薄化粧』の内藤ちえを演じた藤真利子さんは、“これ、素ちゃう?”と思わせるような演技が印象に残っています。男性を翻弄する役ですが、ご本人もすごく人を惹きつける方だと思います」
登場人物たちの不幸な部分にも色気の要因があると分析。
「遊郭の女郎や“パンパン”など、壮絶な生き方をしている人物も多いですが、だからこそ目を離せなくなるんです。たとえば、『吉原炎上』の九重は、どっしりとした余裕の色気があり、“どういう生い立ちなんだろう”と気になりました。『肉体の門』で復讐に生きる澄子も、これからどうなるのかを見届けたいと思わせる魅力があります」
“五社監督になら”と服を脱ぎ大胆な演技を見せる女優も多かった。友近さんも、監督が生きていたら撮ってほしかったと笑いながらも悔やむ。
「もちろん、自分のスタイルが良くなってからの話。でも、やっぱり恥ずかしいです。五社さんが撮る女性の体は、どれもすごくきれいで、自分の体だとどう映るんだろうなと。あと、カメラの前であそこまで大胆に、激しくなれる感情を味わってみたいですね。五社監督の手にかかると、どんな自分になるんだろうと興味がわくというか…。そういう思いや信頼があったからこそ、名だたる女優さんたちも、大胆に脱いだのかもしれません」
『吉原炎上』の九重(二宮さよ子さん)
佇まいから醸し出される、怖いぐらいの色香。
女郎たちの生き様を初めて本格的に描いたとされる作品。九重は、主人公・久乃の世話係をすることになった人気No.1の花魁で、二人の絡み合うシーンも話題となった。「雰囲気、喋り方、目や口の動かし方などすべてが色気の塊。真似できるものじゃないです」
『肉体の門』の澄子(名取裕子さん)
登場する男性陣の色香にも注目!
アメリカ軍の占領下であった1947年の東京で、娼婦(通称パンパン)として生きる女性たちの結束や夢、復讐を描く。「モダンな洋服を身につけ、髪を下ろしているお澄は、とにかく華やかな色気をまとっています。あまりの美しさに、見とれずにはいられません」
『薄化粧』のちえ(藤 真利子さん)
感情が見えにくいからこそ、この女に翻弄される。
妻と息子を惨殺した坂根藤吉は、脱獄後に小料理屋を営む内藤ちえと出会い、親密な関係となるが…。「ちえのように派手じゃない人の色気っていいですよね。考えていることや次の行動が読めないからこそ心惹かれるし、男の人は翻弄されてしまうんだと思います」
ともちか 芸人。『ヒルナンデス!』(日本テレビ)、『友近・礼二の妄想トレイン』(BS日テレ)などにレギュラー出演中。花魁の恋を描いた映画『花宵道中』では女将を演じている。
※『anan』2020年11月25日号より。イラスト・green K 取材、文・重信 綾
(by anan編集部)