ゆるかわスケッチとエッセイの中に、新感覚のヨシタケ流哲学が見え隠れ。
「講演会などで、“常日頃から手帳に描いているスケッチを、手元カメラでスクリーンに映し出してもらい、そのイラストに対してコメントする”というようなことをよくやっていたんです。それをテーマごとにまとめてみたのがこの本です」
だが、イラストのほっこり加減とは裏腹に、コペルニクス的転回が起きそうな鋭い名アドバイスが並んでいる。やる気を出す方法として〈もう明日やるよ。すごくやるよ。っていう言葉を三回唱えてから寝る〉。仕事に対して〈できないことをそのままにするっていう覚悟の決め方(略)もあるんじゃないか〉等々、目からウロコ。
「いまの社会でメジャーな前向きな考え方やものの言い方にこそ、やる気を鼓舞される方もいると思うんです。ただ、7~8割の人がそう考えていても、2~3割の人はきっとそう思えなくて、世の中の隅っこで悶々としている。じゃあ、陽が当たらない意見側の僕みたいな人間は、どんな言葉ならほっとするのだろう。やる気が出るのだろう。そんな自分に対する言い訳や負け惜しみを集めた本でもあって(笑)。もしこれを読んで救われたとか共感したと思う誰かがいるのならそれはうれしいし、何よりそう描くことで、僕自身が救われたいんだと思いますね」
日常のスケッチを始めたのは大学時代。社会人1年目に、ノートを手のひらサイズのシステム手帳に変更して以来、こつこつ描き溜めたものがすでに約80冊ある。コピックというサインペンの0.3mmを愛用。できあがりの絵のサイズは数cm四方と、驚くほど小さい。
「“描いておかないと忘れてしまいそうなくらいどうでもいいこと”が、何を描くかの基準のひとつです。自分の気分を盛り上げるためだけに描いていたものが、他の人にも喜んでもらえるというのは不思議な感覚。人生何があるかわからないものだなあと、我ながら面白いです」
『思わず考えちゃう』 どうでもいいことの中にその人らしさは宿り、ときに哲学も生まれる。イラスト100点以上収録、描き下ろしのスケッチ解説エッセイ付き。新潮社 1000円
1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。絵本デビュー作『りんごかもしれない』で一躍注目を集め、話題に。MOE絵本屋さん大賞第1位をはじめ、受賞歴多数。
※『anan』2019年5月15日号より。写真・土佐麻理子(ヨシタケさん) 中島慶子(本) インタビュー、文・三浦天紗子
(by anan編集部)
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