「前に『五つ星をつけてよ』という短編集で、中学2年生の女の子の話を書いた時、参考に『nicola』を買ったんです。読者の悩み相談のページを読み、内容の重さにびっくりして。思春期の子にとって自分の好きなものに関わっている大人の意見が響くのかな、と思いました」
お悩み相談のページを担当する禄と、中学生の郁美の学校生活が活き活きと描かれる本作。
「郁美に関しては、これまで中学生を書く時は、スクールカーストの一番下の子の話にすることが多かったので、普通に明るい子をはじめて書いたので楽しかったです」
一方、禄は、かつて相談を投稿してきた読者に親身になったあまり、その子に依存されてしまい悩む。
「責任取れないからと放り出すのも相手を傷つける。悩みを持つ思春期の子を相手にするのは大変」
禄自身、中学生の頃に親友の女の子と仲違いし傷つけた過去がある。
「自分を振り返ると、傷つけられたことより人を傷つけたことのほうが残っている気がします。よく、他人とは離れられるけれど、自分とは離れられないと言いますよね。傷つけた相手とは距離を置くことができるけれど、傷つけた自分はずっと自分の中にいるんですよね」
傷つけたり傷つけられたり、助けたり助けられたり、人の立場は時と場合で変わるもの。タイトルには、そんな意味も含まれている。
「この連載のお話をいただいた時、芸能人の不倫バッシングがすごかったんです。なぜ自分は何も悪くないという立場から人を叩く人が多いのかと思って。正論以外のものがはじかれてしまう窮屈さも感じました。人と人との繋がりには、もっと揺らぎがあるはず」
そして後半は、意外な事実が明らかになり驚かされる。
「構成については一番考えました。ページをめくる手が止まらないものにしたくて。伏線もいっぱい張ってあるので、一度読んだ後、もう一回読んでもらっても楽しんでもらえるかなと思います」
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