世の中の違和感を描いた見る人の心に届く物語。
――『エルピス‐希望、あるいは災い‐』は、テレビ局が舞台。スキャンダルによってエースの座から転落したアナウンサー・浅川恵那(長澤)と、新人ディレクターの岸本拓朗(眞栄田)、そして報道局エース記者・斎藤正一(鈴木)が冤罪事件を追うという社会派エンターテインメント作品ですが、渡辺あやさんが手がける脚本とは、どう向き合われたのですか。
長澤まさみ:私が脚本をいただいたのはずいぶん前で、物語が変わっていくところも見ていたんですけど、最終稿を読み、私に当て書いてくださっていることもあって、浅川恵那という人に共感できるところが多かったです。彼女の人生が上手くいきそうでいかない、ちょっと陰のある雰囲気と、私の自信のなさみたいな部分に通じるものがあったり。台本を読みながら感じた“こういうふうに演じてほしい”という想いを大切にしながら演じたいなと。
鈴木亮平:脚本が本当に面白くて、深みもあって。渡辺あやさんが伝えたいことを読みとり、見てくださる方に的確なテーマを伝えつつ、さらに面白いことができればと思っています。
眞栄田郷敦:人間くさくて多面性のあるキャラクターばかりで、感情移入がしやすく、読めば読むほど新しい発見がある脚本。一度、渡辺さんとお話をする機会があったのですが、脚本のさらに奥にもいろいろと考えていることがあるのだとわかりました。
――冤罪事件を追う中で、登場人物たちは苦悩や葛藤を抱えながら、社会における“自分の価値”や正義について見つめ、考えます。
鈴木:anan読者の方も、会社という組織の中で自分はどういう立ち位置なのか、何ができるのか、なぜ仕組みを変えられないのかなどと考えることってあると思うんです。今作では、正義がまかり通らないことに関して“まかり通さない”側の立場も描きつつ、“でもやっぱり曲げちゃいけないものってあるよね”ということが伝わってくるはず。恵那と拓朗が一緒になって立ち向かう姿に、勇気をもらえると思います。
長澤:今はコロナ禍で家にいる時間が増え、テレビを見る機会も増えたことで、世の中の動きや誰かの発言に違和感を覚えることもあると思うんです。そうした違和感や矛盾というものが正直に描かれているので、共感してもらえるのかなと思いますし、楽しんで見ていただけたら嬉しいです。
眞栄田:僕が演じる拓朗は、そうした社会の問題などがわかっていない人物ということもあり、台本を読み、演じながら、彼と一緒に知っていく感覚がありました。冤罪を覆すのはこんなに難しいんだとか、政治のこととか。
――プロデューサーの佐野亜裕美さん、演出の大根仁さんとの現場はいかがでしょうか。
長澤:安心できますね。大根さんとは11年ぶりに仕事をしますが、物語の理解度が一番深いんです。
鈴木:素晴らしいですよね。
長澤:私が勉強していったもの以上を求められることが多いから、現場でバタバタすることも多いけど、悩みながら演じられる方がいいなと思っていて。こうだと思ってお芝居を固めてしまうと、“それ以上の何か”が画面に映らないような気がするので、その場で感じたこと、その時に生まれたものに柔軟でいたいんです。
眞栄田:ちょっと悩んでいることも的確にアドバイスをしてくださって。拓朗を演じるにあたり、全ての引き出しを開け、持っているものを全てぶつける気持ちでやっていますが、それを受け止めてくれる。素直に演じられる環境です。
鈴木:中途半端に作られた作品ではないので、安心してぶつかっていける。テレビの業界を知り尽くした人たちが描くテレビ業界の話というところも、非常に面白いなと思います。
――今作も含め、俳優として感動する瞬間を教えてください。
眞栄田:毎日、感動しています。
長澤:ピュア~!
鈴木:Pure Boy!
長澤:かわいいのぅ。
眞栄田:(照れながら)毎日、得ること、学ぶことが詰まっている現場で。こんなふうに感動できる仕事を続けていきたいですね。
鈴木:感動する瞬間がいっぱいあるこの仕事が好きでやっているけど、見てくださるお客さんに届いた時も、その一つ。今作も、「すごいね」とか、「あのドラマ好きだった」と言われる、ちゃんと届く作品になると思っています。
長澤:それこそ、今作の台本を読んだ時に、作品の世界に入り込むということの素晴らしさを感じることができ、そんなあやさんの作品と出合えたことが、自分にとって宝物のようだと思いました。そう、今年は、私にとってご褒美のような年なんです。色々な作品を撮影してきましたが、どれもが自分が前向きに取り組みたい作品であったり、共演してみたい俳優さんがいる。この作品も、何年も前から楽しみにしていたので、嬉しさに舞い上がらないよう、冷静にと思いながら取り組みました(笑)。そんなふうに、自分自身も夢を見させてもらっているエンターテインメントという世界は、すごく魅力的なものだなと実感しています。
『エルピス‐希望、あるいは災い‐』 落ち目のアナウンサー・浅川恵那(長澤まさみ)の元に、若きディレクター・岸本拓朗(眞栄田郷敦)から、犯人の死刑が確定した連続殺人事件の真相究明を持ちかけられる。死刑囚に冤罪疑惑があると知った恵那は…。エルピスとは、古代ギリシャ神話に登場する“パンドラの箱”に唯一残されていたものを指しており“希望”とも災いの“予兆・予見”ともされている。フジテレビ系にて10月24日スタート。毎週月曜22:00~(初回15分拡大)
ながさわ・まさみ(写真中央) 1987年6月3日生まれ、静岡県出身。主人公の妻を演じる映画『百花』が現在全国公開中。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』のナレーションを務めている。映画『ロストケア』が2023年に公開予定。
シャツ¥41,140 パンツ¥48,400(共にチノ/モールド TEL:03・6805・1449) ブーツ¥130,900(トッズ/トッズ・ジャパン TEL:0120・102・578) ネックレスはスタイリスト私物
まえだ・ごうどん(写真左) 2000年1月9日生まれ、アメリカ合衆国ロサンゼルス出身。’19年に映画『小さな恋のうた』でデビュー。映画『カラダ探し』が全国公開中。映画『東京リベンジャーズ2』が’23年に公開される。
アウター¥319,000 パンツ¥159,500 ブーツ¥165,000(以上フェラガモ/フェラガモ・ジャパン TEL:0120・202・170) その他はスタイリスト私物
すずき・りょうへい(写真右) 1983年3月29日生まれ、兵庫県出身。主演ドラマ『TOKYO MER~走る緊急救命室~』の劇場版、主演映画『エゴイスト』が共に2023年に公開予定。本誌にて「シネマで英会話」を連載中。
ジャケット¥99,000(ユニフォーム エクスペリメント/ソフ TEL:03・5775・2290) パンツ¥60,500(カルーゾ × ランド オブ トゥモロー/ランド オブ トゥモロー 丸の内 TEL:03・3217・2855) その他はスタイリスト私物
※『anan』2022年10月26日号より。写真・玉村敬太 スタイリスト・MIYUKI UESUGI(SENSE OF HUMOUR/長澤さん) MASAYA(ADDICT CASE/眞栄田さん) 臼井 崇(THYMON Inc./鈴木さん) ヘア&メイク・スズキミナコ(長澤さん) MISU(SANJU/眞栄田さん) Kaco(ADDICT CASE/鈴木さん) 取材、文・重信 綾(座談会) 望月リサ(番組情報) 撮影協力・スタジオ バスティーユ TITLES
(by anan編集部)