「MANGA」を通して再発見できる、世界の人々を魅了する東京。
「パリでは日本のマンガ・アニメ・ゲーム・特撮への関心が非常に高く、それは19世紀のフランスで日本の浮世絵などがジャポニスム旋風を巻き起こしたことに連なります」
教えてくれたのはゲストキュレーターの明治大学准教授・森川嘉一郎さん。出品コンテンツは90タイトル以上、マンガ原画やアニメ、ゲームの制作資料など500点以上という圧巻のボリュームだ。
日本のマンガ・アニメ・ゲーム・特撮作品は、現実の都市の景観がリアルに描写されているものも多い。作品とキャラクターが、駅や電車、コンビニエンスストアなど実空間とシンクロすることで、作品と都市の双方にファンが生まれる。本展では、そんな事例をインスタレーションとして再現する試みを実施。1/1000の縮尺で再現された幅約17m、長さ約22mの巨大都市の模型を会場の中心に設置し、それを取り巻くように様々な作品のシーンを展示する。
「基本的に作品よりも場面を重視した展示です。時代を超えた東京をそれぞれの時代の少年目線、女性目線で鮮やかに切り取り、会場の巨大模型と照らし合わせることで位置関係を明らかに。フィクション作品をパノラマのように見渡す体験を提供しています」
普段暮らしている街がドラマの舞台になると嬉しくなったり、普段の街が違って見える。そんな発見が、本展にはあちこちに溢れている。
1 もはや日本アニメの定番? 永遠のテーマ“破壊と復興”。
日本のフィクション作品において、天災や未知なる生物の襲来などで東京が破壊されるシーンはもはや定番。それは東京が実際に何度も壊滅的な打撃を受け、そのたびに奇跡的な復興を遂げてきた歴史があるから。「破壊と復興の反復」セクションでは、単なるランドマークにとどまらず、未来への対策まで映し出された作品を紹介。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』では、街中を疾走する初号機の背景に富士山が。細部までリアリティを追求した表現。©カラー
2 生活の場である東京の変遷をたどる「東京の日常」シーン。
破壊と復興という非日常の合間には人々の暮らしがあった。ここでは江戸時代からの近代化と敗戦、戦後の高度経済成長からバブル、現在まで、作品に描かれてきた人々のライフスタイル、価値観の変化を、絵巻のように並べて紹介。生活の場としての東京の変遷をたどる、まるで時間旅行のような華やかなセクションに。
歴史 『サクラ大戦』など、江戸時代末期から現代へと、近代化の幕開けを描いた作品で歴史に興味を持つ人も。©SEGA
3 実際に登場したキャラクターに注目。「キャラクターvs都市」
ここでは、現実の東京の都市空間に様々なフィクションのキャラクターが現れるようになっている現実に注目。街に現れるキャラクターのラッピングカーや電車、お台場に現れた実物大のガンダム立像、さらにはアニメの舞台となった現場を訪れる聖地巡礼など、現実とフィクションが混在する新たな都市風景の事例を紹介する。
お台場の「実物大ユニコーンガンダム立像」はもはやエリアの顔。子供だけでなく幅広い世代のファンからも支持される。撮影協力:ダイバーシティ東京 プラザ ©創通・サンライズ
「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」 国立新美術館 企画展示室1E 東京都港区六本木7-22-2 開催中~11月3日(火)10時~18時(入場は閉館の30分前まで) 火曜(9/22、11/3は開館)、9/23休 日時指定観覧券当日1600円ほか *事前予約制。オンラインにて日時指定観覧券または日時指定券(無料)の予約が必要。詳しくはhttps://manga-toshi-tokyo.jp/ticket/にて。TEL:03・5777・8600(ハローダイヤル)
※『anan』2020年8月26日号より。文・山田貴美子
(by anan編集部)