SoundCloudのフリー配信からグラミー賞。
誰もが今、ネットにあふれるさまざまなプラットフォームを通じて、自己表現ができる時代。それが世界で注目されて、一躍スターになる、というケースはもはや稀ではない。たとえば今最も影響力のあるラッパーの一人、アメリカのチャンス・ザ・ラッパーも、個人の発信がブレイクのきっかけ。
「彼が利用していたのがSoundCloud。これは何かというと、アーティストが自分の曲をアップロードして、それをユーザーが無料で聴ける音声ファイル共有サービスです。’12年、チャンスは高校生の時にここで初めて作品を発表し、それが大きな話題に。その後も作品を出すごとに評価が高まり、’17年には、ストリーミング・サービスでの無料配信のみで音楽を発表しているアーティストとして、初のグラミー賞獲得という快挙を成し遂げました」(音楽ジャーナリスト・柴那典さん)
こうしたプラットフォームや、個人がSpotifyのような音楽ストリーミング・サービスに楽曲を配信するのを代行してくれる、「デジタル・ディストリビューター」の登場によって、これまでの“音楽を発売するならレーベルに所属するのが前提”というハードルを飛び越え、レーベルの力を借りず、自力で自分の音楽を世界へ広げることも可能になっている。
AWALを使って日本人がロンドンでレーベルデビュー。
「日本人覆面ユニット、AmPm(アムパム)は、まさにその代表格。デビュー曲がSpotifyで1700万回以上再生を記録。日本よりもアジア諸国で最初に人気に火がつきました。また、デビューアルバムを宇多田ヒカルがプロデュースしたことでも知られる小袋成彬は、イギリスのデジタル・ディストリビューター、AWALと契約をし、ロンドンを拠点にヨーロッパで自身のレーベルの新人をブレイクさせようとしている。一方で、日本でメジャーレーベルとの契約も維持しているという、革新的なタイプです」(柴さん)
ニコニコ動画から新しい才能が続々誕生。
そして、音楽+動画で世界とつながるパターンもある。
「ヒット曲『Lemon』のミュージックビデオがYouTubeで再生回数4億回を超えるなど、今や国民的アーティストとなった米津玄師は、ニコニコ動画でボーカロイドを通じて音楽を発表するプロデューサー、ボカロP出身。彼のようにネットで音楽を発表していた人たちの中から優れたシンガーソングライターやユニットが続々出てきていて、Eve、須田景凪、ヨルシカ、神山羊、ずっと真夜中でいいのに。などが挙げられます。彼らの特徴は、MVをアニメーションで制作していて、基本的に顔出しなし、ということ。なかでも次なるブレイクを予感させるのはEveで、今年1月に公開された『僕らまだアンダーグラウンド』のMVは、映画『君の名は。』などのプロデューサーとしてもおなじみの、川村元気がプロデュースしています」(柴さん)
VTuberキズナアイ、中国でブランドキャラクターに。
顔出しなしといえば、自分の代わりに2次元や3次元のキャラクターを登場させて表現活動を行うバーチャル・ユーチューバー、通称VTuberも、日本から海外へと人気が飛び火している。
「’16年から活動を始めているキズナアイは、その先駆け。それまで顔を出したくない人はお面をかぶるなどしていましたが、バーチャル・キャラクターに置き換えるという日本ならではの表現方法が海外でウケて、デビュー当初はYouTubeのチャンネル登録者の大半が海外のファンだったほど。先日は、中国で日本の下着メーカーのイメージキャラクターを務めることが発表されるなど、世界的に人気です」(博報堂DYメディアパートナーズ・森永真弓さん)
音楽活動だって、VTuberだって、個人の力で、かつどこから発信しても、世界とつながれるし、成功可能ということ。
comico発漫画がアニメ化。
「漫画でも、それは言えます。これまでは自分の漫画を出版社に売り込み、認められたら編集者についてもらって作品を世に出す、というステップでしたが、今はユーザーが漫画を公開できる漫画アプリも増えてきました。そこから人気漫画家が輩出されることも。たとえば世界累計3000万以上ダウンロードされているcomicoに公開していた漫画家・夜宵草は、公式にスカウトされて『ReLIFE』を発表。ヒット作となり、’16年にアニメ化までされています。拠点は東京ではなく、大分とのことです」(森永さん)
また、最近は、TikTokやLINE LIVE、SHOWROOMなどライブ&動画コミュニティアプリが群雄割拠。若年層を中心に、日常的に利用されている。
「今、モデル活動をしている北出大治郎という男の子がいるんですが、彼は、昨年までは福井の普通の高校生でした。TikTokに自分の動画をアップしたところ、イケメンということで話題に。それをきっかけに恋愛リアリティショーに出演し、人気が爆発。現在は、ネットテレビへの出演や、雑誌のモデルなどで活躍。インスタのフォロワー数は9万8000人超です」(インフルエンサープロデューサー・丸本貴司さん)
SNSで日本人モデルがバズリ韓国でファンミ!?
SNSで“ビジュアル”が果たす役割は大きく、見る人の目を引けば、言語は関係なくつながれるため、国境を超える一手に。
「ジェンダーレスなルックスで人気のモデル・こんどうようぢは、’17年頃から韓国でも注目されるように。それに気づいたきっかけは、彼のYouTubeに、ハングルの書き込みが増えたこと。SNSで理由を探ると、韓国のボーイズグループであるNCTのメンバー、テヨンに似ているとのこと。そこで、韓国のファッションイベントに参加してみたところ、現地のようぢファンが1000人以上集結。人気を受けて翌年もイベントに参加し、現在は本格的に韓国に進出するべく、韓国語を勉強しているそうです」(丸本さん)
柴 那典さん 音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経てフリーランスに。著書に『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)など。
森永真弓さん 博報堂DYメディアパートナーズ。コンテンツマーケット部部長。共著に『グルメサイトで★★★(ホシ3つ)の店は、本当に美味しいのか?』(小社刊)が。
丸本貴司さん インフルエンサープロデューサー。インフルエンサーの総合商社・ケテル代表取締役社長。また、アパレルWEGOのPR、スマホ世代のマネージメント会社LEXINGTONをプロデュース。
※『anan』2019年7月10日号より。イラスト・Shapre 取材、文・保手濱奈美
(by anan編集部)
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