撮影初日。止まっていた時間が動きだした気がした。
どんなに気持ちを押しとどめようとしても、互いに強く惹かれ合ってしまうふたり――。既婚者同士の恋なんてインモラルだと理性ではわかっていても、平凡な日常をおくる主婦・紗和と、朴訥とした生物教師・北野の不器用でピュアな恋にときめいてしまった人は少なくない。今回の映画『昼顔』は、法によって強制的に別れさせられたドラマの最終回から3年を経たふたりの物語。二人を演じた上戸さんと斎藤さんが、3年前の連ドラ放送時の熱を、そして今回の映画について感じたことを語ります。
上戸:映画がクランクインする3日ほど前に、成功祈願のお祓いで工君に会っていたんだけど、長髪でヒゲが伸びていて…正直、あまりにイメージが違うから、本当に北野先生に戻れるのかなって心配していたの。でも、撮影当日、目の前に北野先生がいて驚きました。
斎藤:確か、第一声に「芋っぽい」とか、言われた気がする。
上戸:「もっさぁ~」って(笑)。
斎藤:ひと言で的確に表現していただいて…(笑)。
上戸:あの数日で北野先生になれるなんてすごいって思いました。リハーサルで最初に北野先生の声を聞いた瞬間、胸が締め付けられて、涙が溢れてきて…。でも、終始紗和が泣きっぱなしになってしまう作品になるのは私としても嫌だったから、必死で意識を逸らして涙を我慢してました。
斎藤:撮影初日が、紗和と北野の再会シーンだったんです。プライベートでは会っていたけど、紗和と北野としては、あれが本当にリアルな再会で、僕も嬉しさと困惑とか、対極にあるいろんな感情が同居して何とも言えない気持ちになりました。それ以外にも、彩ちゃんの佇まいが深みを増していて、ハッとする瞬間が何度もあったんです。もちろん、紗和としていろんなものを背負っているからこその表情だとは思うんですけど、演技を超えたというか、プライベートでの経験が加わってより凄みを増したというか…。もう、単純に映画ファンとして、あの素晴らしい表現を世界中に見せびらかしたい。ドラマを知らなくても、言葉がわからなくても、絶対に心の機微は伝わると思うから。
上戸:(照れて)あっ…ありがとうございます。現場に入ったら、すごく自然に北野先生と紗和になれたんだよね。止まっていた時計が、また動きだしたっていう感じで、不思議な感覚があったなぁ。
斎藤:僕は、ドラマの終わり方がすごく好きだったんです。もう会えないからこそ、相手の存在が大きくなってしまう…そういう罪の受け方というのが。だから映画になるなら、紗和と北野が再会するのにそれなりの意味がないと嫌だなって思っていたんです。
上戸:うん。今回、プロットの段階からいろいろ話をうかがっていたけれど、結果的に一番いい形でふたりの3年後が描かれることになったんじゃないでしょうか。
斎藤:うん。僕は映画で贖罪になったような気がしています。
上戸:井上先生の書いてくださったセリフの言い回しに、ふたりの3年間の繊細な心情が表れているんですよね。北野先生が乃里子に対して言う「どうも」とか。
斎藤:僕は、北野が紗和に「好き」っていう言葉を頑なに言わないところにすごく共感しました。
上戸:言ってよ、2文字くらい。
斎藤:言わないのが北野のせめてもの抵抗で、だから紗和も「先生」って呼び続けていると思うし…。
上戸:確かにそうだね。
【人気記事】
※黄色はストレス、では白、赤、青は? 手の色でわかる心の不調
※この手があった!便秘、下腹、体重の変化が!anan総研(PR)