
ビジネスツールが多様化し、人によって、企業によって、案件によって、メインで使用するツールが異なる今の時代…。コミュニケーションツールの正しい使い分けって?
やり取りの注意点はツールごとに変わる。
社内の人や取引先など、仕事で関わる相手と正しい距離感で、円滑にコミュニケーションをとるにはどうすれば? とくに報連相の方法は、対面、電話、メールと従来のツールに加えて、近年はオンライン通話、チャットなども利用されるようになったことで、どんな時に何を使うと相手とよりよい距離感でいられるのか、迷う場面もあるはず。
「今の時代、会社単位はもとより、社内でもチームや個人によって使い慣れている連絡ツールが違う、ということがよくあります。『メールの返信がなかなか来ないと思ったら、メールを全然使っていない人だった』といった事態も起こりがちです。そんな行き違いを防ぐ意味でも、最近は自分の基準ではなく、相手の使いやすいツールや、やりやすい方法に合わせることがビジネスシーンでの基本マナーになっていると感じます」(IT系起業家・けんすうさん)
これにはコミュニケーションコンサルタントの宮本ゆみ子さんも同意見。ただ、相手の好みはどうすればわかるのだろう。
「やり取りを始めて比較的早い段階で、相手に聞いてみることをおすすめします。合わせる相手は、上司や先輩、取引先など自分より立場が上の人。同僚や後輩なら、話し合って決めるのがいいです」(宮本さん)
基本的な報連相の方法はこのように設定。しかし、例えば「メール」と決めたら、どんな場面でもメールでOKというわけではない。
「きちんと基本を踏まえたうえで、相手によって柔軟にアレンジしていくことが、今の時代は大切になると思います」(宮本さん)
コミュニケーションツールの正しい使い分けって?
1、【対面・オンライン】話の細かなニュアンスや感情を伝えたい時に有効。
対面は表情や身ぶりといった言葉以外の手段で、伝えたいことを表現できるのがポイント。「細かいニュアンスまで汲み取ってもらいたい相談事や、誠意を表したい謝罪の場面などに有効です。容易に会えない距離の相手や、移動時間の削減のため、最近はオンラインで代替するケースも増えています」(宮本さん)
2、【電話】基本的には緊急時のみ使うツールと心得よう。
電話は、発信者の都合で相手の時間を奪いかねないツール。「とくに携帯電話の場合は、急に電話がかかってくると失礼だと思う人もいるようです。とはいえ、お互いの意思や理解度を確認しながら用件を進められ、即時性もあるツールなので、差し迫った状況での予定変更など、緊急の連絡に向いています」(宮本さん)
3、【テキスト】記録を残したい案件や意見交換など幅広く網羅。
今のビジネスシーンの主要なコミュニケーションツールとなっているのがテキストツール。「エビデンスを残す必要のある案件は、テキストが必須。チャットツールの発展により、気軽な意見交換にも便利。メール、Slack、LINEなどさまざまありますが、どれを使うかは相手に合わせるのが基本です」(けんすうさん)
Profile
宮本ゆみ子さん
コミュニケーションコンサルタント。元FM石川アナウンサー。企業や大学・専門学校などでマナーの講師を務める。著書に『最新ビジネスマナーと今さら聞けない仕事の超基本』(朝日新聞出版)など多数。
けんすうさん
「けんすう」こと古川健介さん。IT系起業家。IT企業「アル」代表取締役。学生時代からネット企業や事業を立ち上げる。著書に『物語思考「やりたいこと」が見つからなくて悩む人のキャリア設計術』(幻冬舎)。
anan2447号(2025年5月21日発売)より