デジタルを活用し観光客と生活者の両者に有益な道を。
京都を筆頭に各所でオーバーツーリズムの問題が発生しています。最も深刻なのは、観光客の急増により、限られた交通インフラを地元の人たちが使えなくなっているということです。
最近はインターネットを使った情報発信により、中心地から離れた町が「日本の原風景が見られる」と国内外から注目されるようになりました。京都府の北側の丹後地域もその一つ。京都市内から車で2~3時間かかるのですが、その分、静かで自然も昔ながらの生活も残っており、観光客にとっては魅力的です。ただ、人気の観光地のように駅前にタクシー乗り場もレンタカーの店舗もなく、ホテルまでのアクセスが良くないというところも多くあります。丹後半島にある伊根町は、昔ながらの舟屋が並ぶ伊根浦地区が重要伝統的建造物群保存地区に指定され、注目を集めています。しかし、車で行っても道が狭くて駐車が容易でなかったり、渋滞も激しい。環境負荷もかかるため、伊根町ではこの地区への車の流入を減らすために、休日のパーク&バスライドの実証実験を行っています。
WILLERというバス会社は京都丹後鉄道から運行委託され、独自運営をしながら、mobiというアプリで呼べば定額で乗り放題、相乗りで目的地に行けるライドシェアサービスを導入。電車で最寄り駅まで運んでそこから先の交通も一気通貫で運営する取り組みを京丹後市で行っています。しかし、mobiは、地域住民が買い物や保育園の送り迎えにも利用しており、観光客が押し寄せると交通インフラを取り合う状況に。台数を増やしたくても、過疎化で運転できる労働者がおらず、地元のタクシー会社も高齢化でドライバーが減っている状態なんですね。
解決策としては、観光客には高い運賃、生活者には安い運賃というダイナミックプライシングを導入し、人の流れをコントロールするアイデアが議論されています。
交通の不便な地域でも、発信力があれば、観光客が訪れることが証明されました。今こそデジタルを使い、人をうまく差配しながら、地域と観光客の両方にとってウィンウィンな道が開かれていくといいなと思います。
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。メインキャスターを務める報道情報番組『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)がスタート!
※『anan』2024年10月16日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)