被害の受けやすさを知っていれば適切に行動できる。
地震など自然災害が発生しても、自宅は安全なのだろうか? それを知っておくことも大切に。
「必ず確認してほしいのが、自宅の災害リスク。災害が起きた時に自宅のあるエリアが、どんな被害を受けやすいのか把握しておかないと、適切な行動は取れません。例えば、土砂災害のリスクがあるとわかっていれば、自宅にとどまらず、避難所に行くといった判断もできます。災害リスクは、国土交通省や自治体が公表している『ハザードマップ』で確認を」(永田さん)
自宅周辺エリアが、昔はどんな土地だったのかを調べるのも、災害リスクを知る手掛かりに。
「今はきれいに整備されているかもしれませんが、かつては沼地で地盤が弱いということも。土地の成り立ちは、国土地理院のホームページ内『ベクトルタイル「地形分類(自然地形)」』で確認できます。また、“水”に関する漢字が入っている地名は、湿地帯など氾濫平野だった場合があります」
地震に関連する災害リスク
・液状化現象
・津波
・土砂災害
液状化現象とは、地震の発生により地盤が液体状になる現象のこと。沼や湿地帯を埋め立てた土地で起こりやすく、家が傾くなどの被害を受けやすい。土砂災害には、「土石流」「地すべり」「がけ崩れ」があり、地震や大雨の時に注意が必要。
災害リスクはハザードマップで確認
ハザードマップとは、自然災害による被害想定エリアや避難場所、避難経路などを表示した地図のこと。国土交通省が運用するハザードマップポータルサイトでは、自宅の住所を打ち込めば災害リスクが確認できる。各自治体のホームページでもPDFなどで公開している。
ハザードマップポータルサイト「重ねるハザードマップ」
洪水、土砂災害、高潮、津波のリスク情報のほか、道路防災情報や土地の特徴と成り立ちなどが地図や写真で表示。避難行動のポイントも確認可。
出典・ハザードマップポータルサイト
自分の家がいつ建てられた建物かチェック。
自宅の安全性を判断するには、災害による建物の倒壊や損傷の危険がないかを知ることも不可欠に。
「一つの目安は、1981年6月以降に建てられているかどうか。この時に『新耐震基準法』が施行されて、震度6強~7程度の地震でも建物が倒壊または崩壊しないことが規定されています。ただし、新耐震基準法だから安心とは限りません。経年劣化により、危険が生じている場合があるのです」
引っ越しの際は、建物のリスクを避けた部屋選びをしたいもの。
「ポイントは、新耐震基準法以降に建てられた建物を選んだうえで、決める前に仲介業者や大家さんに、耐震構造であるかどうかを確認してみること。新耐震基準法以前の建物なら、筋交いなど耐震性を高める補強がしてあることを確認。補強がないなら1階の部屋を選ぶのはやめたほうがいい。さらに、屋根が重い、建物の形が細長い、窓が多いといった条件が重なるほど、危険性は高まります」
部屋を選ぶ時は、こんな物件に要注意!
・建物に対して屋根が重い
構造的にバランスが良くないため、揺れると不安定に。日本家屋に多い瓦屋根で古い木造住宅には注意が必要。
・建物の形が細長い長方形
正方形なら安定感があるが、細長い建物は長い面に負担がかかる揺れにより、そちら側に倒れるリスクあり。
・窓が多い/大きい
窓が多かったり、大きかったりする建物は、それだけ壁が少ないということ。ガラスは壁より強度が落ちる。
・1981年5月以前に建てられた物件
旧耐震基準法の物件は要注意。震度6~7程度の地震に関して基準が定められていないので強度が劣る。
永田宏和さん 2006年、NPO法人プラス・アーツ設立。書籍『防災イツモマニュアル』(ポプラ社)監修。’20年に出版された本書を大幅に加筆修正した新書が発売中。
※『anan』2024年9月18日号より。イラスト・福田玲子 取材、文・保手濱奈美
(by anan編集部)