知らないだけで、多様な職業がある。創業という選択も。
求人があり、働きたい人もいるのに、各々の希望が合わずに失業者が増えている「雇用のミスマッチ」が起きています。厚生労働省所管の独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の調査によると、日本にある職業の数は1万8000種類以上だそうです。そのうちどれくらいの職業が知られているでしょうか。ほかにも新しい職業が次々に生まれています。例えば、最近では効率よく情報を得るために、生成AIへの質問を代行する「プロンプト作成支援」のような仕事もありますし、コスプレイヤーも一つの職業になっています。これまで職業と思われていなかったようなものが多数生まれており、そこにアクセスできないことは雇用のミスマッチの要因にもなっています。
多くの職業が知られていない背景には教育機会や体験機会の格差があります。世界の多様性に触れられる人は、この仕事がダメでも別の道があると職業選択の自由を発揮できますが、触れる機会がない上、探す余力もないと、目の前の範囲で仕事を選ばなければいけなくなるという構造的な問題が生じます。今こそ、国家事業として幼少期からキャリア教育や仕事の創造を促進するような支援が必要だと思います。
大阪府にある「キッズプラザ大阪」は、自然科学や文化、コンピューターなど様々な分野を遊びながら学べる子供のための博物館です。愛知県には航空機に関わる職業体験ができる「あいち航空ミュージアム」があります。こういう施設が圧倒的に足りないのが現状ですね。今の政策では、大人に対しては、地域の大学を活用した学び直しの機会提供をしています。ただ、生業を維持しながら、リスキリングをする余力がないという声も上がっています。リスキリングのための休業補償プログラムを手厚くするなど、人への投資をしないと将来的には、企業も雇用者も共倒れになりかねません。
もし、自分の働きたい職場がないと思ったら、自分で働きやすい環境を作る、創業してみるという方法もあります。東京には東京都中小企業振興公社が運営している「TOKYO創業ステーション」があります。まずは専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。
※『anan』2024年2月14日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)