日光東照宮
絢爛豪華な社殿が立ち並び、極彩色の世界に酔いしれる。
栃木県の北西部に位置する日光。男体山をはじめ、広大な山々に囲まれた自然豊かなエリアで、766年に勝道(しょうどう)上人が訪れて以来、山岳信仰の聖地として栄えた。日光東照宮とともに国の史跡で、「二社一寺」と呼ばれている日光二荒山(ふたらさん)神社、日光山輪王寺(りんのうじ)は、その修行の場として建てられたもの。現在は、それらの「日光の社寺」が世界遺産に登録され、国内外から多くの観光客が訪れる日本屈指の人気スポットとして知られている。
日光随一のパワースポットが、荘厳で美麗な空間に圧倒される日光東照宮。昨年の大河ドラマで話題の徳川家康を神として祀る神社で、自然の地形を生かし起伏に富んだ境内に、国宝8棟、重要文化財34棟を含む55棟の建造物が立ち並ぶ。現在の社殿群のほとんどが、1636(寛永13)年に3代将軍家光により建て替えられたもの。全国各地から集められた名工により、建物には漆や極彩色が施され、当時の繁栄ぶりが偲ばれる。
なかでも圧倒的な存在感を放つのが陽明門。故事逸話や子供の遊び、聖人賢人など508体もの彫刻が施され、いつまで見ていても見飽きないことから「日暮の門」とも呼ばれる。実は陽明門をじっくり眺めると、1本だけ彫刻の模様が他と逆向きになっている柱がある。これは、建物は完成と同時に崩壊が始まると考え、わざと未完成の状態にすることで災いを避けるためといわれている。
境内のあちこちで彫刻作品が発見でき、その総数は実に5000点以上にのぼるとか。その中で特に有名なのが、神厩舎(しんきゅうしゃ)の見ざる聞かざる言わざるの「三猿」。人間の生涯を風刺した彫刻がとてもユニーク。また「眠り猫」も必見。真裏に2羽の雀の彫刻があり、猫が眠っていると雀が安心していられる、つまりそのくらい世が平和であることを願って彫られたといわれる。眠り猫が彫られた門をくぐり、森の中の石段を上っていくと、徳川家康の墓所がある奥社にたどり着く。境内の最も高い標高に位置し、東照宮随一の神聖な場所で、静けさの中に厳かな雰囲気が漂い、なんとも神秘的で、強いエネルギーをひしひしと感じる。
時間があれば、日光東照宮に隣接している日光二荒山神社、日光山輪王寺も巡りたい。この周辺は、樹齢約400年の杉並木に囲まれているため、凜とした空気が流れ、歩いているだけで心が洗われて、パワーがみなぎってくる。
高さ約11m、2層造りの陽明門。
彫刻はどれも繊細で色鮮やか。
三猿の彫刻は、人の欠点や過ちは、見ない・聞かない・言わないのがよいという意味が込められている。
平和のシンボルである眠り猫。
徳川家康が眠る宝塔。
日光東照宮と二荒山神社を繋ぐ、巨木と灯籠が立ち並ぶ上新道。
日光東照宮 日光市山内2301 TEL:0288・54・0560 拝観時間/9:00~16:00(11月~3月) 拝観料/大人1名¥1,300(日光東照宮単独券) アクセス/JR日光駅、東武日光駅から路線バスで「神橋」下車すぐ。
※『anan』2024年1月24日号より。写真・中村香奈子
(by anan編集部)