自分の命守るため、困ったら、臆することなく利用を。
生活保護は、受給条件を満たす誰もが受け取る権利を持っています。憲法によって、国は「国民の健康で文化的な最低限度の暮らしを保障しなければならない」と定められているからです。
まず条件は、収入が厚生労働省の定める最低生活費よりも低いこと。金額は地域や同居家族の人数によって変わりますが、東京都内で一人暮らしなら、世帯全体の収入が月13万円、年156万円以下の場合には受給が可能になります。一般に家や車、預貯金や土地などの資産を持っている人は受けられませんし(例外あり)、世に言う「生活保護があれば働かなくても暮らせる」というのは歪んだ意見です。潤沢なお金を手当てしているわけではありませんし、贅沢は認められません。食費、光熱費、服、家具家電の購入費などの生活扶助、家賃を払うための住宅扶助ほか、医療扶助、介護扶助など、使用目的が制限されています。
受給条件には、親や親族などから支援を受けられない人というのがあります。たとえば、子供の貧困対策で、子供がNPOから何かサポートを受けた場合、最低生活費が満たされ受給条件から外れたとみなされ、学費が払えず子供が大学を辞めざるを得なくなるというケースも出てきています。ですから、生活保護と子供の教育は切り離して考えるなど、課題はあるんですね。
病気や怪我をして働けなくなった場合でも受給は可能です。ワーキングプアで、働いていても収入が最低生活費に満たない人は、全額ではなく足りない差額分を支給してもらえます。
不正受給のニュースが広がり、生活保護には悪いイメージがついてしまいました。でも、不正受給は全体の0.4%程度。悪意なく、条件から外れていたのに気づかなかったケースも含まれます。誰しもが、いつ何が起きるかわかりません。突然、鬱になり働けなくなり、頼る先もなく暮らせなくなることもあるでしょう。「自分の頑張りが足りないんじゃないか」「自尊心が傷付けられる」などと思わずに、一時的にでも助けてもらい、生活を立て直せばいいのです。本当に追い詰められる前に、ぜひ住んでいる自治体の福祉事務所に相談してほしいと思います。
堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。
※『anan』2021年12月29日‐2022年1月5日合併号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)