史上初のできごと。非核化と拉致問題解決を望みます。
トランプ大統領は3月、北朝鮮が韓国を通じて申し入れた直接対話に、応じると即答。金正恩朝鮮労働党委員長とトランプ大統領の首脳会談が6月上旬までに開かれることになり、世界を驚かせました。実現すれば、現職のアメリカ大統領と北朝鮮の最高指導者の会談は史上初となります。
北朝鮮はここ数年、核実験と弾道ミサイルの発射を繰り返し行い、アメリカは経済制裁の圧力を強め、いつでも応戦態勢にあることをアピール。両国間の緊張状態が続いていたため、首脳会談の受け入れは、突然手のひらを返したように見えますが、北朝鮮は20年以上、米国大統領との直接会談を求めていました。国際社会に北朝鮮の金体制を認めさせたいという理由からです。しかし、いまや核を保有するとみられる、非人道的な独裁国家を認めるわけにはいかないと、これまでの大統領はそれを拒否していました。けれども、トランプ氏は大統領選のころから直接対話の可能性をほのめかしており、今回それが実現されようとしています。
もちろん、これには1月に北朝鮮と韓国の閣僚級の会談が行われ、平昌五輪で南北合同チームが参加するなど、韓国の尽力による南北融和ムードも下支えしています。
北朝鮮にとって、最大の貿易国は中国です。アメリカとの直接対話の前に、中国との関係を良好に保ちたい金委員長は、急きょ非公式に中国を訪問。習近平主席と会談し、「米韓が北朝鮮に対して平和的な措置をとれば、朝鮮半島の非核化問題も解決できるだろう」とコメントしました。
先日、安倍首相は、中国外相と北朝鮮の「非核化」と拉致問題の解決に向けて協力体制をとることを確認。続いて渡米し、トランプ大統領と会談。米朝首脳会談では拉致問題を議題にあげるという、大統領の約束をとりつけました。この数か月、北朝鮮とアメリカ、中国、韓国の4国間で交渉が急展開し、圧力路線一辺倒だった日本は、若干蚊帳の外にあった印象でしたが、拉致問題を交渉のテーブルにのせる確約がとれたことは、喜ばしいできごとです。実現するか否かも含めて、米朝首脳会談の行方に、世界中が注目しています。
堀潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。新刊『堀潤の伝える人になろう講座』(朝日新聞出版)が好評発売中。
※『anan』2018年5月16日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)
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