MY STANDARD GOURMET

平野紗季子の“MY STANDARD GOURMET”『豆腐屋料理店 四方八方(ヨモヤモ)』の魚介の白湯葉スンドゥブと汲み上げ豆腐。

フード
2025.01.29

フードエッセイスト・平野紗季子さんの「MY STANDARD GOURMET」。今回は『豆腐屋料理店 四方八方(ヨモヤモ)』の魚介の白湯葉スンドゥブと汲み上げ豆腐です。

左・季節ごとに豆が変わる自家製汲み上げ豆腐600円。この日は北海道の音更大袖振。
右・魚介の白湯葉スンドゥブ1600円(単品)。イカやアサリの魚介出汁と生姜が効いた、体が温まる辛味のないスープが特徴。

魚屋さんの奥の定食屋さんとか、食材屋さんの奥の食堂とか。「○○の奥に店がある」スタイルに惹かれる。食体験が立体的で、つい信頼を寄せてしまうのだろう。

人形町の甘酒横丁に、オレンジのひさしが掛かった豆腐屋さんが出来た。その奥には豆腐料理の店がある。街からどんどん失われていくあの、もくもくと白い湯気を朝から出している豆腐屋さんが、新しく街に生まれるとは、なんて嬉しいニュースだろう。店の名前は『豆腐屋料理店 四方八方』。工房が併設されているからこそ食べられる「汲み上げ豆腐」は、ほわとろの半熟食感。ほの温かく、香りや甘さがこれ以上ないくらい引き出された純白のそれは、清らかに包み込むようなおいしさを持つ。癒される。豆腐を軸にして生まれる食の世界の角のなさ、包容力。ランチで熱々の「魚介の白湯葉スンドゥブ」で体を温めるのもよいし、夜に「豆腐ポッサム」や「よだれ湯葉鶏」などアジア圏の豆腐文化を柔軟に取り入れた料理を楽しむのもいい。シェフを務めるのは、和歌山県で伝統的な地釜炊きの豆腐を作りながら料理人として研鑽を積まれてきた小澤聖さん。「豆腐って四角い大豆のスープだと思うんです。料理としての奥深さ、そこに根差した伝統を、今に繋いでいきたい」。人形町の小さな豆腐屋料理店から、新しい豆腐の物語が始まっていく。

PROFILE プロフィール

平野紗季子

ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)、『ショートケーキは背中から』(新潮社)など。

INFORMATION インフォメーション

豆腐屋料理店 四方八方

東京都中央区日本橋人形町2‐21‐11 TEL:03・6704・7991 11:00~15:00 、17:00~22:30 日曜休

写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子

anan2431号(2025年1月22日発売)より

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