バラの花びらが舞い降りたケーキは儚げな淡色。「色も香りももっと、いかにもバラっぽくできるけど、もうしません」と『Taisuke Endo』遠藤泰介シェフは言う。
華やかなお菓子で銀座の夜を彩った『パティスリー カメリア』を離れ、フランス・アルザスへ渡ったのは2年前のこと。『ピエール・エルメ』時代の師、マチューシェフの『パティスリーカム』で働く日々を通して肩の荷が下り、飾り立てるよりナチュラルなお菓子を志すようになったという。だから合成添加物に頼らず、素材の味や美しさを最大限に活かしていく。
たとえばマリー・アントワネットをイメージして、彼女が愛したバラに“ナッツの女王”ピスタチオ、壮絶な人生の酸いも苦いも映すピンクグレープフルーツを合わせたケーキ。バラの蒸留水に花を凝縮したローズエキスを合わせることで、腕いっぱいの花束を抱えているみたいに、バラそのものの香りがわっとわきたつ。口に運ぶと、幻のようにふわりとバラのガナッシュモンテ(エアリーなガナッシュ)が溶け、可憐な香りに包まれたところに、クリームとクランブルのローストピスタチオがコクを深めて。さらにピンクグレープフルーツジュレのフレッシュさがバラのみずみずしさを、苦味がボタニカル感を際立たせる。優雅でいて清々しくて、派手でなくとも鮮烈な一口だ。
右・バラの自然な香り溢れる「マリー・アントワネット」820円。トップの「ボレロ」という名のバラの花びらはレモングラスを思わせる爽やかさも秘める。
左・マカロンも食材のナチュラルな色合い。「ココナッツヴァニーユ」、自家製プラリネが香ばしい「プラリネ ノワゼット オンシャン」、ケーキ同様にバラとピスタチオ、グレープフルーツを合わせた「マリー・アントワネット」など、季節替わりのフレーバー5個入り1900円~。
チコ スイーツライター。大人気のガイド本『東京の本当においしいスイーツ探し』(ギャップ・ジャパン)シリーズ監修。
Taisuke Endo 東京都目黒区鷹番2‐4‐7 鷹番マンション1F TEL:03・4400・6756 10:30~19:00(18:30LO) 月曜休、火曜不定休※ 6/28~30プレオープン、7/4グランドオープン
※『anan』2024年6月26号より。写真・清水奈緒 スタイリスト・野崎未菜美 取材、文・chico
(by anan編集部)