杉箱の蓋を外した瞬間に、引き込まれた。花咲く寒天は水晶みたいに煌めいて、薄墨色した羊羹のボーダーが、可愛らしさにいい具合に大人の落ち着きも漂わせてくる。ふわっと溢れる野花の香りに、花畑に顔をうずめている気分になった。
世にも可憐なお菓子を作ったのは和食の料理人、割烹『粲 sun』の盛山貴行さん。「コロナ禍でも料理人として笑顔を届けたくて」と、花の宝石箱みたいな「hanaemi」を生み出したという。いつだったか「咲」と「笑」の文字のルーツは同じと知って、なんだか幸せな気分になったのを思い出した。使う花はミシュランシェフたちがこぞって使う、食べられる花屋『EDIBLE GARDEN』から化学農薬不使用の、ビオラ、撫子、マリーゴールドなど6種。口にすれば寒天のプリプリの奥からシャキッと瑞々しい、野菜と果物の間のような味わいが飛び出してくる。食用花はもう見た目だけではない、しっかりおいしいのだ。羊羹は水羊羹にも近い、軽い口当たり。クニュプチ感がクセになるいちじくとバナナの果実味にバニラがそっと寄り添う。華やかな印象の中で、いろんな食感と味わいが現れて、後味にも優しい花香が続いて。蓋を開けてから、驚いたり陶酔したり、気がつけばずっと笑顔だった。
仄かな花のアロマと果実の甘い香りを閉じ込めた、花咲く和菓子「hanaemi」12×12cm¥4,500(前日までに要予約)。花とお菓子を一緒に贈る感じも、秋田杉箱入りなのも、大切な人への(もちろん自分へも)ギフトに最高。
粲 sun 東京都港区六本木4‐10‐3 第V大栄ビル7F TEL:03・6447・1943 17:30~23:30(テイクアウトは12:00~21:00LO) 日曜休 hanaemiの予約は電話またはWeb(https://pocket-concierge.jp/ja/restaurants/244914)から。
チコ スイーツライター。大人気のガイド本『東京の本当においしいスイーツ探し』(ギャップ・ジャパン)シリーズ監修。
※『anan』2021年1月20日号より。写真・清水奈緒 スタイリスト・中根美和子 取材、文・chico
(by anan編集部)