うわあ~、ついに出会ってしまった……! って扉を開いた瞬間に一目惚れの感覚になる店ってありますよね。内装も音楽も料理も全てがどタイプ。去年の11月に神楽坂にオープンしたイタリアン『Qkurt』はまさにそんな店で、抑えめな照明の空間に、モルタルと木で仕上げた低めのカウンターがしゅっと佇み、テーブル上をキャンドルライトがぼんやり照らし、生花の影が揺れている。店を形作るひとつひとつに心がある。そのことが伝わるからか、席に座るだけでリラックス気分に包まれる。厨房にはシェフの角田直也さんとパティシエで奥様の菜美子さん。この風景をご夫婦で描いているのかと思うと尚更眩しい。お任せコースを頼めば、素材を活かしつつも角田さんの感性と手間が滲む美しい料理が現れる。春が香るホワイトアスパラガスの一品はグリルでぐっとジューシーさを引き出し、奥ゆかしい旨味の猪のコンソメに浮かべる。しかもそれが花柄のクラシックなお皿に載せられているのだからもう、ノックアウトでしかない。
角田さんは都立大学の人気イタリアン『カンティーナ カーリカ・リ』の料理長を経て独立。「賑やかな店も好きですが、ここではゆっくりと時間を過ごしてほしいんです」。街場のトラットリアと高級リストランテの間をいく、温かみと洗練が同居した特別な場所。こんな店で過ごす時間を求めていたんだ。
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お任せ7品コース¥5,500から。左・青森産やりいか、カラスミ、イカスミを練り込んだスパゲッティ、右・ロワール産のホワイトアスパラガスのグリル、ポレンタ、猪のコンソメ。グラスワインは北イタリアの自然派「ロッソ ディ ヴァルテッリーナ2015 アールペペ」¥1,000。菜美子さんの作る自家製パンも絶品。20:00以降はアラカルトもあり。
Qkurt 東京都新宿区下宮比町3-12 明成ビル1F TEL:03・6877・3942 18:00~23:00(22:30LO) 日曜、不定休
ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードライター。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。
※『anan』2020年3月4日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子
(by anan編集部)