御徒町のガード下にぽつりと現れる異国。読めない看板、紹興酒の甕たち、活気のある厨房からは中国語が聞こえてくる。まるで中国の大衆酒場をそのまま移植してしまったような佇まいの『老酒舗』は、聞けばなるほど、神田・『味坊』をはじめ中国の奥深きリアルな食文化を日本に紹介してきた梁宝璋氏によるお店。今年2月のオープン以来多くの酒好きを魅了してきたが、新たなるチャレンジは朝食のスタート。北京の定番朝食を7時から10時まで楽しむことができる。
自家製豆乳に揚げパンのセットは、カフェオレとクロワッサン的な黄金コンビネーションで、揚げパンをちぎり豆乳に浸して頬張れば、じゅんわりと油と豆の優しい香りが口いっぱいに広がる。あれこれ頼みたくなる小皿料理もいちいちあなどれず、包みたて茹でたての水餃子は豚肉と共に発酵白菜のうっとりするような香りが広がり、思わず、オォ……と声が漏れる。朝にうってつけの飲み物は老酒舗オリジナルの羊梅湯。昆布だしか高湯(鶏でとった最高品質のスープ)を選んで割った焼酎に、スパイスと梅干しを浮かべた一杯はほとんど温泉の役割で、飲むたび寿命が延びてしまいそう。食後はすっかり心がほどけ、満員電車の憂鬱も眠たい気ダルさも、もはや自分のものじゃない。全てを癒して元気をくれる、中国の朝の幸福な空気がここに広がっている。
写真:早餐セット(揚げパンと豆乳と日替わり漬物)¥400に、発酵白菜豚肉水餃子¥240や自家製腸詰¥100、羊梅湯¥580など、小皿料理をずらりと頼んでテーブルを埋め尽くしたい。
ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードライター。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。
「老酒舗」東京都台東区上野5-10-12 TEL:03・6284・2694 7:00~23:00(朝食は月~金の7:00~10:00のみ提供、10:00~11:00 は営業切り替えのため閉店) 無休
※『anan』2018年9月19日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子
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