
燻し銀の歌手が多い演歌・歌謡曲界で、新しい魅力を放ち、注目されている新浜レオンさん。仕事熱心でとっても真面目。でもお休みの話をするときの砕けっぷりもまた魅力的です。
キラキラの衣装に身を包み、情熱的にシャウト! アイドルのようなルックスと熱い歌声で、演歌・歌謡曲ファン以外にも魅力が浸透している、新浜レオンさん。

―― 昨年ananに登場してくださった際、紅白歌合戦への出場を熱望されていましたが、昨年出場されましたね。
はい、ありがとうございます! 6年間休みなく頑張ってきた甲斐がありました。
―― 夢が1つ叶ったわけですが、それを経て、何か変わったな、と思うことはありますか?
う~ん…。強いて言うなら、観客の鳩の数が増えました(笑)。
―― 鳩…ですか?!
6年前、大学を卒業してすぐ、上野の御徒町駅前にある「パンダ広場」で初めて「新浜レオン」としてイベントをやったんですが、人間のお客様はゼロ、3羽の鳩のみ、という経験があるんです。
―― なるほど。
だからこそ、「その御徒町の景色は僕にとって原点なんです」という話をしていたら、なんと上野の観光大使のお話をいただきまして。先日同じ場所で就任式とイベントをやらせていただいたところ、今回はお客さんもたくさん来ていただけた上に、鳩も7羽に増えました(笑)。よかったです。
―― 新浜さんはどういう経緯で、演歌や歌謡曲のような音楽を歌おうと思われたんですか?
父親が演歌歌手なので、もともとそういった音楽が身近にある環境で育ったというのはあります。でも中高は野球をやっていて、真剣に甲子園を目指し、夢はプロ野球選手。歌を歌うなんて全く考えない青春時代でした。でも残念ながら、野球では夢は叶わなかったんです。その後大学に入り、ミスターコンテストに出場したときに昔の歌謡曲を歌ったら、それがとても楽しくて。そこから歌手という新しい夢ができて、父の付き人をしながら、いろんなレコード会社さんにデモテープを送っていたんです。その中で、今のレーベルに声をかけてもらい、2019年にデビューできました。
―― どちらかというと演歌や歌謡曲は、年齢を重ねた世代が聴く音楽、というイメージは無きにしもあらずですが…。
おっしゃるとおり。僕も学生時代は、誰一人、こういう音楽を聴く友達はいませんでしたから、歌謡曲=昭和、歌謡曲=古い、と思われているということはもちろんわかっていました。さらにデビューしてからも、いろんな局面で「うちは演歌や歌謡曲はちょっと」みたいなことも言われて、そのたびに悔しさを感じてきた。でも、僕はすごく好きなんですよ。
―― そこまで新浜さんを夢中にさせる、演歌や歌謡曲の魅力とはなんでしょうか?
歌の前のイントロ、間奏、そして曲の終わりのアウトロ。演歌や歌謡曲のそういった構成が、とんでもなく好きなんです。イントロが聞こえてくると、そこに歌詞がなくても何か情景が浮かんでくるじゃないですか。それから、崩さずにまっすぐ歌う歌唱法も僕にとってはとても魅力的。また、歌詞の中に今の若い世代にとってはレトロさを感じる言葉が使われているところも、逆に面白いと思います。僕らは先輩方の歌を歌わせていただくことも多く、あるとき歌詞に出てきた〈伝言板〉という言葉が、わからなかったんですよ。それで検索をしたら、昔、駅などに設置されていた黒板で、そこに伝言を書き込んでいた、ということを知って、“なるほどなぁ”と思ったり。クリームソーダにレトロなかわいさを見出す、みたいな感覚に近いのかもしれません。
コナンのエンディング曲で子どものファンが増加!
―― 昨年は紅白に出場し、今年はあの人気アニメ『名探偵コナン』のテレビシリーズのエンディング曲も担当しています。これも嬉しい展開だったのでは?
はい。個人的に“演歌・歌謡界初”ということを成し遂げたいと日々思っているので、めちゃくちゃ嬉しかったですね。実は3年前に『名探偵コナン』のスピンオフ作品のオープニング主題歌を担当して以来、土曜の夕方に放送されているアニメの主題歌をやらせていただきたい…とずっと願っていたので、そういう意味でも嬉しくて。以前からイベントやコンサートにお子さんが来てくれることはあったんですが、それは例えばお母様がファンで、お子さんを連れてきた、という形だったんです。でも最近は、「コナンを見て子どもがファンになり、私は付き添いで来ました」みたいなパターンが増えました(笑)。
―― さらに大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』への出演も決まり、ステップを駆け上がっている印象です。
昨年リリースした「全てあげよう」という曲がヒットし、紅白出場につながったことが大きいと思います。その曲は、木梨憲武さんのラジオ『土曜朝6時 木梨の会。』に出演させていただいたことがきっかけで生まれたわけですが、実は木梨さんのラジオへは日曜劇場『下剋上球児』の番宣で出演し、そのドラマにお声かけいただいたのは、僕が中高で野球をやっていたからだったんです。また、父の影響で西城秀樹さんに憧れていたので、よくBSの音楽番組などで秀樹さんの曲を歌っていた僕を、木梨さんが見てくださっていたそうなんです。それで木梨さんが「レオンくんに秀樹みたいな曲、書いてあげてよ」と所ジョージさんにお願いをしてくださって、あの曲が生まれました。父が演歌歌手だったこと、西城秀樹さんを好きになったこと、そして野球に夢中になったこと。いろいろ遠回りをしてきた気もしますが、いま思うと、何も無駄ではなかったと思います。
―― その上で、6年間休みなくやってきたという努力もあったわけですしね。
いろんな夢がある中でやっぱり紅白はすごく大きな存在で。出場が叶うまで、友達と遊んだり、ごはんを食べたりするのは一切やめていたんです。そのくらいの気持ちじゃないと、紅白にはたどり着けない。演歌や歌謡曲を歌っている人にとっては、本当に狭き門なんですよ。だから僕、6年間、中高の同級生や大学の友達とは一切会っていなかったんです。それでやっと先日、野球部時代にバッテリーを組んでいた友人と会ってごはんを食べることができました。
―― 一緒に夢を追いかけていた仲間との再会、感極まりそう…。
友人は重田倫明(ともあき)といって、大学を経て福岡ソフトバンクホークスに入団し、プロ野球選手になる夢を叶えたんです。で、僕が歌手になってからは、「いつかレオンの曲を入場曲にしたい」と言ってくれていたんですが、残念ながら一昨年引退をして、今は球団の広報で働いているんですね。それで今年の6月に、僕がみずほPayPayドーム福岡のホークス対巨人戦の始球式に呼んでいただいたので、「当日いるよね?」と連絡したら、「仕事で行けないけど、夜は会えるかも」って言うんですよ。“この大一番になんで来れないの…”と愕然としている中、始球式前にブルペンに行ったら、重田がいて…。彼とは10年ぶりで、さらに僕が友人という存在に会うのは6年ぶり。もう最高の再会でした。
―― やっぱり野球とは切っても切れない縁があるんですね。
そうですね。デビュー10周年を迎えるときには、僕が現役最後の試合をし、そして勝てなかった千葉マリンスタジアム(現ZOZOマリンスタジアム)と、たどり着けなかった甲子園でコンサートがやりたいんです。受けた球をホームからセカンドに送球して、それを合図にドカーンとライブが始まる…とか、なんか野球に絡めた演出をしてみたい。あと4年でその夢が叶えられたらいいですよね。
1週間の休みがあったら、前日から飲みまくりたい
―― お話を伺っていると、お忙しい上に、本当に仕事に一意専心の印象です。プライベートの新浜さんはどんな方なんでしょう?
プライベートな僕ですか…? えーと、明るい人です(笑)。
―― おうちにいるときは何を?
実は最近は週に1日か2日しか家にいないような生活なので、洗濯、風呂、寝る、しかしてない…。地方の仕事も多いので。
―― じゃあ、今日家に帰れるとしたら、何をしたいですか?
寝たいです。すいません、回答として全然面白くないですよね(笑)。ホントすいません。
―― ではこちらもありきたりの質問で恐縮ですが(笑)、1週間お休みがとれたらどうされますか?
えー、すごいな、どうしよう、何しようかな! まずは、明日から休みという日、仕事が終わったら、これでもかというほど暴飲暴食します。まずはビールでたこわさやチャンジャなどのつまみから始めて、3杯くらい飲んだらハイボールでししゃも…ホッケの開きとかもいいですね。そこから日本酒いって。普段はビールも日本酒も控えているので、ここぞとばかりに飲みます。それで、一回お店を替えて、中華屋へ。
―― はしごですね(笑)。
はしごです(笑)。で、餃子とチャーハンをつまみにして、最後は瓶ビールでラーメン。あ、普段飲まないからどこかでワインも飲みたいなぁ…って、これ、まだ休みの前日なんですよね。うわー、このあと1週間休みがあるんだ、最高じゃないですか。
―― 前夜祭ですでに大はしゃぎ。
ですよね。翌日、というか休みの1日目はたぶん夜まで寝て、1日が終わりますよね(笑)。あとは家族とごはんも食べたいし、北海道に釣りにも行きたい。LAに野球を観に行くのもいいなぁ。でもダメだ、そんなに楽しんじゃったら復帰できなそうな気がするので、もうちょっと休みなしで頑張りたいと思います(笑)。
Profile

新浜レオン
にいはま・れおん 1996年5月11日生まれ、千葉県出身。中学・高校では野球に打ち込みプロ野球選手を夢見たが、甲子園出場が叶わず、歌手を目指すことに。2019年5月1日『離さない 離さない』でデビュー。2023年に日曜劇場『下剋上球児』に出演し、2024年には念願の『NHK紅白歌合戦』への出場も経験。令和の演歌・歌謡界のホープ。
4月にリリースし、オリコン週間演歌・歌謡シングルランキング1位に輝いたシングル『Fun! Fun! Fun! / 炎のkiss』(B ZONE)の、ジャケットやカップリング曲を新たにした“追撃盤”が発売中。「Fun! Fun! Fun!」は人気TVアニメ『名探偵コナン』のエンディングテーマとしても大ヒット。カップリングに収録された昭和の名曲カバーにも注目です。
anan 2462号(2025年9月10日発売)より