岩田剛典さんが、演技の新境地に挑戦。試行錯誤して挑んだ映画『金髪』で、“イタい”教師を演じた岩田さんがいま改めて考える、俳優という仕事の醍醐味とは?


おじさんと自称すれば楽。だからこそ、いつまでもピチピチでいようと思っています(笑)

映画『金髪』で、おじさんになりきれない中学校教師を演じた岩田剛典さん。

「脚本を読んで、自分が演じる市川という役に見せ場がいっぱいあったので、胸が高鳴りましたね。役者としても、どのシーンも“腕試し”されているような気持ちでした。やりごたえのある役を、どう料理していこうかなという感覚にもなりました」

市川という役は、今までの岩田さんが演じてきた中でも特に、身近でどこにでもいそうな役柄だ。

「どこにでもいそうな人にならないといけないと思ったので、なるべくお芝居をしていると思わせないような役作りを意識しました。間のとり方とか、耳で聞いたときの音にも気を遣いましたね。生活の中での話し口調を目指しました。セリフ量も多かったので、表向きはひょうひょうとした顔をしてやっていましたけど、実は、お芝居の合間には、携帯でセリフのチェックをしていたんです。監督からは、なるべく句読点なく喋ってほしいというのが、唯一の演出のオーダーで、それが笑いの肝にもなっていると思います」

岩田剛典さん

岩田さんがお芝居において、今につながる感覚を掴んだのは、2019年のドラマ『シャーロック』の頃だという。

「『シャーロック』は、いろいろなことに気付かされた作品です。芝居のテンポの詰め方とか、セリフのスピードを意識したりするようになりました。実は、普段の喋り方って、けっこう思ってるより早口なんですよ。それを、演技しているときに、何も考えないで、ナチュラルなスピードで喋れるようにするにはどうするかってことに気付いたのもこの頃です。それって、最初は意識しないと難しいんですけど、演出家からの指導もあって、その頃から芝居が変わってきたんです」

等身大の役を演じるのには、共演者との呼吸も大きかったようだ。

「市川の友人役の田村健太郎さんとのシーンは気持ちよかったですね。僕がイメージして準備していた芝居と、田村さんの芝居が合致していたので、パズルのピースがピタッとハマった感じがありました。だから、段取りもほとんどしないで、1回テストをして、すぐに本番でした。田村さんとのシーンは、2日か3日くらいで撮りました。二人のシーンは、けっこうなセリフ量で、緊張感を持ってやっていましたし、一回、カメラを回し始めると、最後まで続けてカットまで演技をするので、舞台で演技をしているような感覚でした」

普段はアーティストとしても活動している岩田さんに、あまりにも普通すぎる市川との共通点や、共感できる部分はあるのだろうか。

「同世代で集まったら、あんな感じになるし、共感することも多かったんですよ。自分のことを言われてるのかなと思うようなセリフもありましたし、こうならないように気を付けようと思いました。この前、後輩と喋っていたときに、僕が“リア充”という言葉を発したことがあったんです。そしたら後輩から、『そんな言葉、今どき誰も使ってないですよ!』って言われて、めちゃめちゃ恥ずかしかったです(笑)。それと、自分の知らないことや興味のないことを聞かれたときに、まとまってないのに話し始めて、着地が綺麗にいかないことがあるんですけど、そこも市川に似てますね。そういう情けないところは、誰にでもあるのかなって思いました」

市川は、教師として中学生とも向き合うが、岩田さん自身は、どのような中学生だったのだろう。

「中学までは、本当に色気づいていなかったんです。でも、高校生になった途端、校則もゆるくなって、制服を着崩したりできるようになったし、髪も、どんな色にしてもよくなりました。だから、そんなに校則を窮屈に思うようなことはなかったんですよね」

公開中の最新主演映画『金髪』トレーラー

岩田さんというと、ストイックでアーティスティックなイメージもある。前回は自分のことを“馬車馬セクシー”とも例えていたが……。

「そうはいっても、誘惑に負けて、いろんなことを継続できない面もあります。筋トレひとつとっても、疲れたことを理由に、1回休むと、1週間忘れてしまうし、そうなるとできなくなります。でも、半年後にやっぱりやり始めるということを、何度も繰り返していたりしますよ」

市川のように、自分を“おじさん”と自称したりすることもあるのだろうか。

「絶対言わないな(笑)。もしかしたら10年後は言ってるかもしれないけど。現時点では、言ったら楽だから言わないです。それを言い出したら、全部において怠けてしまうから。今のところはピチピチのつもりでやっていきます。それに、アーティストという職業においては、自分の年で“おじさんなんで”って言って、なんでもそれを免罪符にしてると、チャンスを逃してしまうと思うんです。でもわかんない、来年には言ってるかもしれないけど(笑)」

俳優とアーティスト、どちらの分野でも走り続けてきた岩田さんだが、その違いをどう捉えているのだろうか。

「アーティストとしてステージに立つときは、自分は特別なんだって思い込まないと、できない部分はあるんです。現実と理想の間にいて、葛藤することもあります。でも、僕は大学卒業のタイミングでこの世界に入ったので、市川みたいな普通の感覚も持ってます。

それに、仕事という面ではストイックな部分もあるけれど、プライベートではそこまでストイックじゃないです。ストイックさは、もちろんまだあるところにはあるんですけど、体づくりの面では、休んでしまうこともあります。かっこ悪いところって誰にでもあるし、かっこ悪いところを隠し続けると疲れるし、ときにはそういうところを見せてもいいかなというマインドもできてきました。ただ俳優の仕事は、また別なんですよね。

俳優は、台本を読んで、セリフを反芻して体に吸い込ませることが必要なので、特殊な仕事なんです。それはほかの表現にはないことですね。そしてそれが俳優という職業をリスペクトするところです。どんな規模の作品でも同じだけ大変さがありますし、頭を使います。でも、それが醍醐味なんですよね」

Profile

岩田剛典

いわた・たかのり 1989年3月6日生まれ、愛知県出身。三代目 J SOUL BROTHERSのパフォーマーとして活動する一方でソロアーティスト、俳優としても活躍。最新主演映画『金髪』が公開中。

ジャケット¥272,800 デニムジャケット¥158,400 パンツ¥132,000 ピアス¥40,700  リング¥51,700 スニーカー¥95,700(以上MM6 Maison Margiela/マルジェラ ジャパンクライアントサービス TEL. 0120-934-779 maisonmargiela.com) その他はスタイリスト私物

写真・矢吹健巳(W) スタイリスト・渡辺康裕 ヘア&メイク・下川真矢 取材、文・西森路代

anan 2472号(2025年11月19日発売)より
Check!

No.2472掲載

みんなで考える、フェムケア2025

2025年11月19日発売

anan恒例フェムケア特集の最新版。女性のカラダを考えるムーブメントは引き続き活況。生理やPMSといった婦人科系の基礎知識から、最新のフェムテック、進化したアイテム、制度上の変更点などにわたるまで、押さえておきたい情報を一冊に集約。話題のトピックスを、藤井サチさんや村重杏奈さん、haru.さんと共に考えるコーナーも。表紙はTravis Japanがスタイリッシュに飾ります。

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